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 近年、ボストン美術館の名品の来日が相次ぎ、大きくの日本人を魅了している。名品揃いの同館の浮世絵コレクションのお里帰りも実現した。
 これらに多大に尽力された小林忠先生が長く館長を勤められた千葉市美術館で表記展覧会が開催された。小林先生が近世日本絵画を先行されるきっかけとなり、自分自身も近年傾倒している鈴木春信の在外作品は、何としても見たかった。
先述の状況で非常に難しくなったが、最終日の本日は台風がぬけて午後には天候が回復するので、休日出勤の代休もとれたので行くつもりでいた。
 しかし、昨今の疲労のためか低気圧のせいが、朝方から得体のしれない眩暈が続いている。屋外は晴れているが激しい風がついている。交通機関も乱れが続いている。
 これらにより、既述のすみだ北斎美術館の企画展とあわせて、断腸の思いで見学を断念した。

by nene_rui-morana | 2017-10-23 12:39 | 幻の展覧会等 | Comments(0)

 標記展覧会は自分にとっては多くのものを思わせ、また思い出させるものだった。

 感想をまとめるまでに一年近くの時間が経過してしまったが、この間に他所で、標記展覧会に関連した経験もした。

 今回はそのようなことを少しまとめてみようと思う。



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by nene_rui-morana | 2016-05-16 12:44 | エピローグ | Comments(0)

7階へと移動した。


5章 禅画(江戸のカウンターカルチャー)

 標記ジャンルには近年とみに魅せられているので、この章の展示は特に自分には嬉しい内容だった。

 正面に展示されている【半身達磨】は一目で我が白隠慧鶴作と分かる。【蓮池観音図】も、白隠の魅力が存分に堪能できる観音と蓮が描かれた自分好みの作品だった。

 仙厓義梵作品も個人的には好きで、ユーモラスな【鍾馗図】【蛙図】は楽しく鑑賞した。【白衣観音図】には何度か見た出光美術館所蔵作品とは違った雰囲気があった。



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by nene_rui-morana | 2016-05-08 21:00 | 展覧会・美術展(日本編) | Comments(0)

f0148563_20380139.jpg[副 題]

 「マネジメントの父」が愛した日本の美


[見学日]

 2015年6月26日(金)


[会 場]

 千葉市美術館


 恥ずかしながらピーター・ドラッカーの名を知ったのは、数年前に「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」が話題となった時だった。この本は、かなり待ったが地元の図書館でリクエストをして読んだ。

 そのドラッカーが、日本美術の愛好家であり、その貴重なコレクションが来日しているのを知ったのは、会期終了間際に放映された特集テレビ番組だった。会場の千葉市美術館はやや遠いが、これを逃したら次回見られる保証もないので、祝祭日のない6月で調整は難航したが、急遽予定を入れた。

 京成電鉄はかつて海外旅行に行く際に数えきれないほど利用した。車窓からの景色を眺めながら、過ぎ去った日々を懐古した。



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by nene_rui-morana | 2016-05-07 20:45 | 展覧会・美術展(日本編) | Comments(0)

[見学日] 平成24年7月7日(土)

[会 場] 千葉市美術館 


 表記展覧会の前期を見て大いに感銘を受け、展示替えがある後期も心待ちにしていた。当日はニューオータニ美術館で同じく英泉や国貞らの浮世絵を見た後、ホテル内のレストランで昼食をとり、地下鉄・JR線・バスを乗り継いで会場へと向かった。
 今回も華やかな英泉ワールドに陶酔した。


 【横笛吹く若衆】は衣装の描き方も繊細、美人に比べれば作品数は少ないモチーフだが、それだけに見応えがあった。
 【青楼七軒人 海老屋内 大井】に描かれている重ね草履は、吉原で室内履きとして用いられていたという。同じシリーズの【扇屋内 花扇】も展示、≪扇屋内花扇≫というと喜多川歌麿描く美人画が連想されるが、年代を考えると何代か後の同じ源氏名の遊女だろう。
 【浮世絵四十八手】シリーズ以降に描かれている英泉美人は、女が見ても目の保養になる。襖を開けかけた花魁を描いた【廓中八契 玉屋内 白川】は、豪華な衣装にも圧倒される。【新吉原年中行事 十二
月 歳暮 としわすれ 大文字屋内 一元】に描かれている≪大文字屋≫は、酒井抱一作の初代主人のユニークな似顔絵が記憶に新しい。
 【浮絵歌舞伎大芝居之図】【江戸両座芝居町顔見世之図】は、多くの提灯からも現場の活気が伝わり、私好みの作品だった。

 【江戸の松名木尽 押上 妙見の松】が描かれているのは、タイトルが示すとおり、東京スカイツリーに程近い場所に今も残る柳島妙見、葛飾北斎が深く信仰していたことでも知られている。
 【物日のあそび 木場成田屋 金毘羅大権現】は、タイトルを見てすぐ、木場に豪邸を構えて幕府の咎めを受けた七代目・市川団十郎が思い出された。描かれているのは深川芸者、多くの幟も印象深い。
 【江戸金龍山浅草寺観世音雷神門之図】は前期と同様、念入りに鑑賞した。

 【田川屋前の芸者】は本日特に心に残った作品、墨竹模様の粋な着物と蝙蝠柄の帯が印象的、摺の良い掛絵物で保存状態も良好な逸品だった。この作品では下駄の鼻緒にも注目させられた。過去には歌麿や国貞の作品で衣装や各種アイテムに開眼したが、鼻緒に目がいったのは今回が初めてだった。
 
 【勧進大相撲土俵入りの図】はやはり私が好きな絵暦、右に「大男掛目正真三十八貫五百六百十一匁」とクイズのように書かれている。あらためて、当時の一流絵師の多彩な仕事に驚嘆させられた。

 貴重な肉筆画も展示、三人の美人に三首の狂歌が添えられた【女三題】は特に心に残った。

 【契情道中双[女隶]】シリーズでは、【嶌田 見立てよしはら五十三つゐ 尾張屋内 長尾】の衣装の柄に目がいった。薔薇に似ているが、牡丹だろうか。同じシリーズの【尾張屋内 満袖】の扇の表現なども心憎く、最高位の遊女の教養の高さが伝わってくる。


 7Fの展示室でも、華やかな遊女の姿に酔いしれた。

 双六も、最近とみに惹かれているジャンル、【新版 江戸花呉服屋大双六】はタイトルのとおり振り出しは大福帳や反物で、上がりは大黒と布袋に金銀財宝、大丸・白木屋・越後屋などお馴染みの大店の他に現在私が生活している地にあった店も描かれていた。【東都名所振分隻六】は当時の江戸の人気スポットが描かれている。

 ラスト近くに展示されていた【考古集覧 革[究]図考】は古染革の図像集、ユニークで現代的な作品だった。


 諸般がたてこみ、会期終了前日にようやく実現した後期の見学、多くの美人や役者・名所等に囲まれ、文字通り英泉が生きた時代にタイムスリップしたような気持ちになった。私好みの作品も多く、興奮と感動の時間旅行を満喫できたと思う。
 過去の展覧会で英泉という浮世絵師は気にかかっていたが、代表作が一堂に会した今回の特別展で、自分の中に不動の地位を築いた。様々なジャンルで素晴らしい作品を残しているが、英泉作品の醍醐味を最も堪能できるのはやはり美人画、特にトレードマークに等しい美艶仙女香が共に描かれた作品は最も心に残る。
 本展覧会の実現は、自分にとっては大変有意義な内容で、嬉しい企画だった。今後の展覧会で再び英泉作品に出会えることを、心待ちにしている。

 本特別展の図録を購入する予定はなかったが、作品の多彩さに圧倒され、大好きだが関連図書が少ない国貞作品との共通点も見出せすことができ、現在の自分が最も魅力を感じる19世紀という時代が伝わってくるので、購入することにした。今後はこの図録でこの時代と浮世絵についてしっかり勉強し、次回展覧会に臨みたい。
by nene_rui-morana | 2012-08-12 20:58 | 旧展覧会・美術展(日本編) | Comments(0)

モダンガール 万華鏡

[副 題] 近代日本の絵画・版画から

 千葉市美術館で溪斎英泉の特別展を見学した際、同時に開催されていた表記所蔵作品展も見た。
 タイトルのとおり、内容は明治から昭和初期に制作された絵画や版画が90点余り、当時の世相が伝わってくるのと同時に、江戸時代の浮世絵の面影を伝えるという点からも、興味深く見た。
 展示作者も、竹久夢二、月岡芳年、藤島武二、伊東深水など、お馴染みの面々から、自分は初めて聞く画家まで、非常にバラエティーに富んでいた。

 大ファンでなくとも、夢二の作品には目がいってしまう。夢二の作品は時代の象徴であり、夢二の生涯もまた時代を反映していると感じることがある。

 横浜浮世絵を通じて明治期の浮世絵にも関心を持つようになったので、豊原国周や月岡芳年の作品には特に注目した。愛する国貞作品との共通点も見出せる一方、当然ながら違った個性も感じられる。
 月岡芳年は、その作品や歌川国芳の弟子であることから、長い間江戸の浮世絵師のような風貌を勝手に連想していたが、実はざんぎり頭の写真も残されいることを最近知って少々恥ずかしい思いをした。小林清親と並んで江戸の息吹きを明治に伝えた近代芸術家だった事実を、本日再認識した。

 展示の中には、【明星】や【婦人グラフ】など雑誌類もあり、これらからも時代が感じられた。来世紀に入ったら、女優さんが表紙を飾っている現代の週刊誌や月刊誌を特集した企画展が開催されるのだろうか。

 当館の浮世絵コレクションは定評があるが、近代絵画の分野でも大変いい仕事をされていることが実感できる展示だった。
 今後特別展で再訪した時に、これらもあわせて鑑賞できることを期待している。
by nene_rui-morana | 2012-07-28 13:24 | 旧展覧会・美術展(日本編) | Comments(0)

六.摺物の世界
 8階最後の小室には、注文作品である摺物を展示、オーダーメイドだけに絵具や紙も上質なものが使われている。溪斎の摺物は、小振りなものが多いが全て細やかで丁寧に仕上げられている。どの作品からも好印象を受けたが、今日に続く名物を描いた【向島名物:「桜もち」と今戸人形】には特に注目した。目下、東京スカイツリーの御膝元として全国的に注目を集めている地域は、江戸時代も人気スポットだったことが伝わってきた。
またこの部屋の展示ケースには【當時現在廣益諸家人名録】と題する小冊子が陳列されていて、「(画)溪斎 下谷池之端 池田善二郎」の記載が見られた。他にも深川に池田孤村(酒井抱一の弟子)の名が見られ、当時を伝える大変貴重な史料である。

 
七.契情道中双[女隶]
 7階に下りてこの階の展示室に入ると、両壁にずらりと並んだ表記シリーズの遊女絵に迎えられ、そのスケールに圧倒された。国貞作品同様、画中に描かれた各種調度・文章が書かれた扇や読物などにも魅せられる。
 

八.藍摺の世界
 このコーナーには見る機会の少ない藍摺作品を展示、溪斎の藍摺は人気があったという。それを裏付けるように、展示作品からはモノクロームの中にも色彩が感じられた。
 錦絵の【姿海老屋楼上之図】に並んで展示されている藍摺の【仮宅の遊女】は、前者の人物はそのままで背景を居室から隅田川に変えたものだった。
 ケースの中には藍摺の読本を展示、このジャンルを見る機会が少ないので大変嬉しく感じた。


九.活躍の広がり
 タイトルのとおり、英泉の多岐に渡る活躍がうかがえる作品のオンパレード、昨年来複数の絵師バージョンを見てきた【仮名手本忠臣蔵】を英泉も手掛けていた。他にも、相撲絵や武者絵・美人東海道シリーズ・双六など、お馴染みのモチーフが多数見られた。
 祭り行列の様子を伝える【獅子おさなあそび】など、子どもを描いた作品はやはり微笑ましい。【新版 浮人形水遊】は切り抜いて組み立てる<おもちゃ絵>、下部に描かれた遊び方を解説する子どものイラストは本当に可愛い。


十.版本
 フィナーレはガラスケースに展示された読本類、英泉は四百点近い本を手掛けたという。
 この分野も自分は好きなので大変嬉しい内容だったが、より感激したのは、名だたる文化文政期の面々の名がそこに見られたことである。【忠臣裏皮肉論】は英泉著で画は国貞(署名は三代豊国)、タイトルからみて多分パロディー作品と思われる。他にも、曲亭馬琴、為永春水など、そうそうたる顔ぶれが登場、今日歴史の授業で習うこの時代の文化人は案外近しい関係にあったことがうかがえた。
 室内の柱に展示された【都沢精巧錦絵】は英泉(一筆庵)と国貞(豊国)のコラボ作品の店頭宣伝札、貴重なこの史料も自分にとっては素晴らしいサプライズだった。


≪感想≫
 先述のように溪斎英泉という浮世絵師を知ったのは比較的最近のことで、その作品も未だ北斎や歌麿ほどには接してはいないが、本展覧会でその魅力を心ゆくまで堪能することができたと感じている。
 毎度のように作品の素晴らしさについては自分の筆力では到底伝えきれず、ご自身で見ていただきたいとしか記せない。愛してやまない国貞作品と同様、艶やかな美人、華やかな衣装、細やかに描きこまれた調度やアイテムにより、当時の生活が手にとるように伝わってきて、今の自分が最も魅力を感じる19世紀に時間旅行したような心地がした。
これだけの質と量をそなえた溪斎英泉の実現は容易ではなかったと思う。当館スタッフの皆様のご尽力に心より感謝したい。なお館内で入手した館報で、小林忠先生が本年3月に当館館長を退任されたことを知る。長年教鞭をとられた学習院大学も3月で定年となられ、現役の一線から退かれたことになる。決して誇張ではなく、先生なくしては江戸芸術を愛する今日の自分の人生は違ったものになっていた可能性が高い。その意味では大恩人であり、寂しさはぬぐえないが、今後はフリーな立場で研究に携わられるのだろう。心より感謝申し上げ、ますますのご健康ご活躍をお祈りし、今後も先生が企画される展覧会に足を運ぶのを楽しみにしている。
 本特別展の後期も必ず見学することを決心して、会場をあとにした。
by nene_rui-morana | 2012-07-24 21:43 | 旧展覧会・美術展(日本編) | Comments(0)

三.風景画の時代へ
 第三章には風景画を展示、広重か北斎の作品ではと思われるものも何点かあった。実際に北斎作品からヒントを得て描かれたものもあるという。
 蘭字風模様の枠で囲まれた【江戸高縄之景】【江戸金龍山浅草寺観世音境内之図】には、西洋画の影響が感じられた。
 【江戸両座芝居町顔見世之図】は賑わう芝居町の熱気が伝わってくる、私好みの作品だった。
 両国川開きを描いた三枚組【東都両国橋夕涼図】は人々のしぐさや表情を多彩に表現、当時人気だったという屋形船<吉の><川一>などの提灯も見られる。手前の船上の箱にさり気なく<英泉画>とかかれているのが心憎い。多分この作品は過去にも見ていると思う。
 【江戸八景】シリーズは上部の扇形の中にシリーズとタイトルを表記、百数十年前の江戸の名所の様子が生き生きと伝わってくる。このシリーズの【愛宕山】は校合摺も併せて展示、こちらには見当も見られた。
 水墨画を思わせる【雪中山水図】は情趣あふれる味わい深い逸品、重要美術品指定も納得できる。
 

四.江戸名所・名物と美人
 名所と美人という取り合わせが好きな自分にとっては最も見応えのあったコーナー、往時の江戸の名所、美人、生活、風俗等が手にとるように伝わってきて、英泉が生きた時代にタイムスリップしたような錯覚さえ覚えた。
 【今様美人拾二景(十二景)】シリーズは、手前に個性的な美人、上部に江戸名所を描いた絵巻物のこま絵を配置、浅草・芝・深川・上野、等等、今日に伝わる江戸各所の地名に心躍る。
 【御利生結ぶの縁日】シリーズは、上部の絵馬額に社寺と建物名が、重ねて描かれた奉納手拭に所在地がかかれ、特に印象に残る作品群だった。スタートは浴衣姿の既婚女性を描いた【日本橋中通り新右エ門町 妙見】、続く【日本橋西川岸 地蔵尊】は傘を持って振り向く構図、強風になびく着物の裾などの表現が絶妙で、周囲からも「これ、いいね!」という声が聞かれた。母子の心温まる情景を描いたのは【芝赤羽根 水天宮】、母親が手にする団扇の賛を書いたのは戯作者二世南仙笑楚満人、すなわち溪斎と親交のあった為永春水で、「溪斎」の署名のあるん帆柱も描かれている。【白銀台町 清正公】に描かれた多くの千社札(仙女香や蔦屋の宣伝も兼ねる)、【両国薬研堀 不動尊】に描かれたむぎ湯、当時の生活が手にとるように伝わってきて、心の中は新鮮な興奮と感動に満たされた。
 展示ケースの中にも、魅力的な作品が多数展示されていた。【江戸名物尽 竹村の最中の月】は、こま絵の中には竹村の店先とロゴマーク入りの蒸籠が、遊女の後方に贔屓客への挨拶状と思われる手紙用の紙束が描かれていた。こま絵が現物のイラストとタイトルを示す【江戸音曲歌合 都羽二重拍子扇 一巻】は当時の歌謡集で、描かれているのは手紙を読む芸者、隣には本物が展示されていた。当時の高級料亭等を描いた【美人料理通】シリーズも展示、【山谷 八百善】は酒井抱一も馴染んだ名店、他にもどこかでその名を聞いた【両国柳橋 万八楼】などの見事な店構えを伝えている。【向嶌 武蔵屋】には雨の中を傘をさしたまま必死で下駄をぬごうとする女性が描かれているが、東京スカイツリーの御膝元で「武蔵=634」という偶然に少々驚いた。また仙女香や引札も展示されていた。
 再び壁の展示に目を移す。【江戸の松名木尽 押上 妙見の松】が伝えるのは、葛飾北斎が熱心に参拝した柳島妙見、東京スカイツリーの近くにあり、境内には歌川豊国の碑も残っている。国貞もこの近くで活動していた。描かれている娘の雪華文の衣装が印象的、手拭は吉原の妓楼・扇屋が奉納したものである。大勢の参拝者で賑わう様子を描いた【江戸金龍山浅草寺観世音雷門之図】も印象的な一枚、イベントを告知する立看板、仙女香などの広告、英泉や版元名も書かれた中央の大提灯など、細部まで綿密にかき込まれ、心底惹きつけられた。


五.肉筆美人画
 展示数は少ないが、貴重な肉筆作品を見ることができた。
by nene_rui-morana | 2012-07-23 19:23 | 旧展覧会・美術展(日本編) | Comments(0)

f0148563_1126173.jpg[副 題] 蘇る、江戸の媚薬。

[見学日] 平成24年6月2日(土)

[会 場] 千葉市美術館


 曾我蕭白展で当館を訪れた時、表記展覧会の情報を得る。溪斎英泉という浮世絵師の名前を知ったのはそれほど昔のことではないが、歌川国貞に似たその画風には関心を寄せていたところなので、ぜひ見ておこうと思った。


一.初期の美人画とその周辺
 溪斎英泉は寛政3(1791)年に江戸の下級武士の家に生まれる。国貞より5歳年下である。20歳の頃に、これも最近個人的な関心を寄せている菊川英山の門人となるが、偶然にも広重や国芳が各々の師の門下に入ったのはその翌年のことだった。
 第一章には英山の影響を受けた初期の美人画等を展示、スタートは遊女と禿を描いた【風流花合 白酒売】、こま絵は七代目・市川団十郎の白酒売、私好みの作品だった。その後もあでやかな美人絵の展示が続く。多彩な衣装や綿密に描かれた各種アイテムは、国貞作品と共通するものが感じられる。
 続いて、鳥居派を思わせる役者絵、後半には少々エロチックな危な絵が展示されていた。


二.英泉美人の流行
 多くの絵師によって描かれたお馴染みのテーマを、今回は英泉の筆で堪能した。英泉描く美人画の特徴は、つり上った目に鼻筋の通る面長、国貞美人と似ているが独特のアクの強さ・艶めかしさがある。
 【青楼七軒人】シリーズは、暖簾に妓楼名やロゴマークがかかれているが、同じシリーズで同じ趣旨の他絵師の作品を見た記憶がある。【大文字内 誰袖】は後摺も併せて展示、後者は妓楼名が漢字表記となり衣装や布団の柄も簡素化されている。
 【時世十二相】は大判を四分割した画面が三枚、上部の虫眼鏡の中に「~そう(相)」と題を書き、十二通りの表情を描き分けている。この作品は本日特に気に入ったものの一つ、国貞も同様の一枚ものシリーズを手掛けている。
 【浮世風俗美人競 一泓秋水浸芙蓉】は過去に別の展覧会で見たい目元にうっすらと紅のぼかしが入れられ、匂い立つような妖艶さがただよってくる。この作品にも、同じシリーズの【[幺刀]真臨鑑現 生滅帯花知】にも、当時人気の白粉<美艶仙女香>が描かれており、後者のモデルの女性は「御かほりのくすり 美艶仙女香 京橋南三丁目坂本氏」と書かれた包装紙を手にしている。この後の作品にもしばしば美艶仙女香は登場し、当時の浮世絵が商業広告の役割を担っていたことがうかがえる。坂本氏は英泉のスポンサーだったのかもしれない。
 【当世好物八契】シリーズは、当時の様々な女性を描き、作品上部には<けん酒><本結城紬嶌>などその女性が好むもの(=表題)を描いて、当時の生活をうかがうことができる。同じ趣向の【当世好物八景 読物】に描かれているのは英泉画の<南総里見八犬伝><街道茶漬>、さり気なく自己PRしているのが微笑ましい。
 【新吉原八景】シリーズは、こま絵に吉原周辺の風景を描く。【廓内八契】シリーズでは、茶屋がこま絵に描かれていた。
 【今世美人競】シリーズは、上部に英泉のマーク〇に泉の枠を作り、そこに描かれた美人の職種を書いている。シンブルながら気の利いた表現に、英泉の卓越したデザインセンスが感じられる。
 【吉原遊女の宴】は、吉原が大火に見舞われた後に隅田河畔の仮宅で営業していた時を描いたともいわれる。
 【今様花鳥風月】は、満月の下、大風で満開の桜が舞う様子が、風にさらわれる懐紙や着物の裾をおさえる美人で、見事に表現されている。
 このコーナーにはまた、自分にとっては素晴らしいサプライズがあった。室内の柱に展示されていた参考パネルは歌川国芳作【日本奇人伝】、兄弟子・国貞(豊国)、英泉、そして国芳自身が描かれている。英泉は人のよさそうな町人風の男性、国貞は坊主頭の重厚な容貌、そして国芳自身は例によって派手な衣装で後ろを向き容貌はうかがえず、傍らには猫が描かれている。このパネルを見た時、「国芳さん、本当に貴方って人は...」とその粋な気質に絶句・感動し、ますます国芳という浮世絵師に魅せられてしまった。近年私の心をとらえている三人の絵師が同時代人で交流があったことを実証している点でも、嬉しい展示だった。
by nene_rui-morana | 2012-07-22 20:58 | 旧展覧会・美術展(日本編) | Comments(0)

蕭白ショック!! ②

■第二章 第三部 曾我蕭白―蕭白円熟―
 タイトルの通り、円熟期を迎えた蕭白の見応え゛のある作品が続く。
 【松に孔雀図襖】は本日特に心に残った作品の一つ、中央にすらりと立つ孔雀は貴婦人のように気高く、実際に人をモデルにして描かれたのではないかと思った。樹木の表現も上品だった。
 【山水図押絵貼屏風】は多くの画家によって描かれた<瀟湘八景>がモチーフ、このタイトルの屏風も展示、このコーナーは味わいのある落ち着いた風景画が多く、丁寧かつ個性的な画風に魅せられる。


■第三章 京の画家たち
 ずらりと並んだお馴染みの面々に感動で胸は一杯、各作品に夢中で見入った。
 伊藤若冲の作品は以前見ていると思うが、本日も対面できて大変嬉しかった。【寿老人・孔雀・菊図】は特に心に残った。
 最近急激に傾倒している池大雅の作品も出展、彩色と点描に才能をいかんなく発揮した【溪上高隠図】は私好みの逸品だった。【辺溪閑遊図】は妻・玉瀾との共同作品とのことだった。
 雪を描かせたら他の追従を許さない円山応挙、雪かきをする人々も印象的な【秋月雪峡図屏風】は文句なしの名品である。一方で【鉄拐蝦蟇仙人】では人物画にも秀でていたことがうかがえた。
 他にも長澤蘆雪や与謝蕪村らの味わい深い作品に触れることができた。

  
≪感想≫
 そのタイトルのとおり、本展覧会で受けた衝撃は並々ならぬものがあった。
 今回あらためて、曾我蕭白という絵師のスケールの大きさ、奇才ぶり・多才ぶりに驚嘆させられた。画風は極めて多彩、初対面時の感想だった化物風画はもとより、上品な花鳥風月画、大胆な表現の作品など、知らずに見たならば同じ絵師が描いたとは信じられないだろう。同時に蕭白は、細部まで綿密に描きこまれた力作から、酔いに任せて即興で描いたと思われるラフなタッチの作品まで、実に様々なタイプの画を残しており、それぞれに違った魅力がある。多くの作品からあふれるダイナミックなパワーは、いかなる絵師も凌駕できない。
 また蕭白にはある意味、漫画の元祖的な面がある。多くの歴史上の人物・伝説上の人物を彼独特の風貌で、しばしば痛烈なパロディーを加えて描いている。複数の作品を見比べると似た風貌の登場人物が見出せるが、これも同時代の他の画家とは一風違った、今日の漫画家に近いものを感じる。同じ作者の漫画は別個の作品であっても眼を中心にキャラクターに共通性が見出せるのと同じである。
 見終えた時、前期も見学しなかったことを心底後悔した。前期に来ていればより多くの作品に触れられたし、後期までに少し勉強しておればより密度の濃い鑑賞ができたと思う。
 とにかく、本展覧会で曾我蕭白という絵師の真髄にほんの少し触れたような気がする。まだ伊藤若冲や酒井抱一のように大好きと明言できるまでには至っていないが、俄然気にかかる芸術家の筆頭に躍り出た。今後もおそらく、展覧会でその作品に触れる度に、新たなサプライズが実現するような予感がする。
 それにしても、かくも多くの芸術家を輩出した江戸という時代の奥深さにも、毎度のことながら感嘆させられる。

 帰りがけに、クリアーファイルや絵葉書などを記念に購入した。
by nene_rui-morana | 2012-06-11 20:08 | 旧展覧会・美術展(日本編) | Comments(0)