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よみがえる仏の美~修理完成披露によせて~_f0148563_20031294.jpg

[副 題] リニューアルオープン展 第3弾

[会 期] 2016年4月23日(土)

       ~ 6月5日(日)

[会 場] 静嘉堂文庫美術館


 例によって、表記展覧会を鑑賞することになったいきさつは思い出せないが、ポスターやチラシの「若冲もならった名品」という一文に惹かれたのは間違いないだろう。好きな仏像が出展されるのも要因の一つになったと思う。



 当館所蔵の珠玉の天目2点、【曜変天目】(国宝)【油滴天目】(重文)に迎えられて、見学を開始する。


 展示室内もしくは入口に、修復前後のパネルが展示されていたことが、当日のメモに記されている。


スタートは【普賢菩薩像】(重文)、修復の様子を伝えるパネルも展示されていた。上品で繊細、往年の優雅さがうかがえる。


【大般若波羅蜜多経(和銅五年長屋王願経)巻第二四五】外、経典も展示されていた。


【青銅経筒「如法妙法蓮華経一部天仁二年四月八日勧進僧□□」銘】の類の展示は、これまであまり見たことがない。


【百万塔および百万塔陀羅尼】は、平城遷都1300年の時にどこかの企画展で見た記憶がある。テレビ番組で町場の工場が再現作成した映像を見たが、案外、簡単に作れるようだった。展示されている陀羅尼は「根本」「相論」「自心印」「六度」の四種だった。陀羅尼には九種類の版があり、当館はすの全てを有しているという。


【古経貼交屏風】には、経典 摺り物 仏画、古裂、サンスクリットの書跡、陀羅尼などが、貼られている。この類の作品は好きなので嬉しかった。


重文【羅漢図】は、かの牧谿の作、続いて別の作者の羅漢図を鑑賞した。



色鮮やかで華やかな【文殊・普賢菩薩像】の旧所蔵者は東福寺で、近年大人気の絵師・伊藤若冲の代表作【釈迦三尊像】(相国寺承天閣美術館)の原画とも伝わり、当然ながらこの作品から得たインスピレーションが【動植綵絵】の誕生にもつながったのだろう。中央の釈迦如来は現在、アメリカのクリーブランド美術館が所蔵しているとのことだった。



 絵画作品に描かれたモティーフは、単身もの?から、眷属、諸神、諸仏など、バラエティーに富んでいた。


【水月観音像】はまとったヴェールや装飾品・足元の珊瑚などが、とても美しい。小さな善財童子の衣装も細やかだった。


【如意輪観音像】は重要美術品、このお姿の仏像はたくさん見てきたが、仏画はあまり記憶がない。截金や金泥が多用された細密で濃彩な実に美しい作品、宝冠や身にまとったアクセサリー?も華やか、蓮華坐の蓮弁や持ち物も印象的だった。


 十二神将は好きなモティーフ、今回は京都・浄瑠璃寺旧蔵と伝わる十二神将像のうち、【寅神像】【卯神像】【午神像】【酉神像】の四体を展示、ユーモラスな表情、躍動感あふれるいきいきとした造形、特に心に残る展示だった。


【春日宮曼荼羅】は類似作品を以前、他所で見た記憶がある。展示作品はネイビーブルー基調の背景に、本地仏と春日大社の神々が共に描かれていて、かつての神仏習合を伝えている。春日大社の社殿や御蓋山、若宮神社、等々、奈良旅行の記憶を思い起こしながら鑑賞した。 

 

 河鍋暁斎作【地獄極楽めぐり図】は、日本橋の小間物問屋・勝田五兵衛が14歳で夭逝した娘・田鶴の供養のために贔屓だった暁斎に発注したもの、田鶴が臨終を迎えてから極楽往生するまでの旅の様子を、歌川派を彷彿させる画風でユーモラスかつ悲しみを含ませて描いている。近代が感じられる汽車や人力車、盛り場や芝居見物、宴会、等々、漫画のように進んでいくストーリーは見応え充分、いくら見ても見飽きない。



 見学日当日は薄曇りだったが、窓から眺める庭園の若葉がまばゆかった。



≪感想 & エピローグ≫

 副題のとおり、見学時にリニューアルオープン展は3企画が開催されたようだが、表記展覧会しか鑑賞は叶わなかった。

 本展覧会の出展作品数は多くはなかったが、名品揃いで心行くまで眼の保養をさせていただいた。

 しかし、展覧会図録が刊行されなかったことなどもあり、なかなか記事がまとめられなかったが、他の仏像の展覧会の感想を整理したのを機に、静嘉堂文庫美術館の他の美術図録や他の方のブロク等を参考に、何とかアップに漕ぎ着けた。あらためて、展示作品の魅力を再確認した。十二神将はその後、他所で十二体揃っての再会も果たしている。


 そうこうするうちに、静嘉堂文庫所蔵の美術作品は丸の内に移転されることが決定した。今年開催された世田谷でのファイナル展覧会は、超多忙な年度初めに加えて緊急事態宣言による会期変更等もあり、幻となってしまった。来年以降アクセスは良くなるが、日常生活では足を運ぶ機会がない二子玉川へはほとんど行かなくなるであろうことを思うと、少し残念な気がする。庭園見学が可能であれば、近場の別の施設の企画展等の折に行かせていただければと思っている。


# by nene_rui-morana | 2021-10-05 19:30 | 展覧会・美術展(日本編) | Comments(0)

[見学日] 2021年10月2日(土)

[会 場] 葛飾区郷土と天文の博物館


 9月に表記展覧会を見学した後に感想をまとめていたところ、明確に思い出せない展示があり、地元の図書館で葛飾区の歴史や文化財に関する資料を借りて調べたが記載は見出せなかった。心残りではあるが、機会があれば当館の研究員の方に照会してみようと思っていた。

 しかし、同じ「旧曳舟川」沿いにある足立区郷土博物館で特別展〖谷文晁の末裔-二世文一と谷派の絵師たち-〗が開催されることを知り、せっかくの機会だからあわせて見て確認してこようという決心を固めた。

 当日は、足立区郷土博物館の展示が非常に充実していて予想外に長い時間を要してしまい、気がついたら午後4時近くなっていたので、タクシーで会場へと向かった。


 受付をすませ、2階の会場へと足早に移動する。


 まずはお目当ての展示を確認した。

 幕末から明治時代にかけて、青龍山浄光寺(木下川薬師)の住職をつとめた無礙心院鍖苗は、その後は他寺の住職を経て天台宗本山の会計課長や宗務課長を歴任し、明治33(1900)年に大僧正までのぼりつめた。ほどなく病に倒れて逝去、会場には、翌年に建立された墓石とそれに刻まれた来歴のパネル、浄光寺が所蔵する【鍖苗墨絵】が、展示されていた。写真の墓石が浄光寺にあるのか解説はなかったが、いつか同寺を訪問して確認したいと思う。


 目的が果たせたので、あとは閉館ギリギリまで、前回心に残った展示を中心に、再度見て行った。

十三日講中のコーナーでは、【題目曼荼羅】のほか、【茶漬茶碗箱等】が目に入った。最近では会議の際はペットボトルが主流だが、自分が若い頃には給湯室には会議用の湯呑みが常備され、お茶出し担当は女性職員が定番だった。講の飲食の時も専用の食器類が用意されていたことがうかがえた。

 また井伊直弼の書状は、尊勝院に宛てたものだが、現在は浄光寺が所蔵している。


 先の記事には触れなかったが注目した展示もある。

 現在の東水元にあたる「上小合村」の絵図には中央に「薬師堂」が描かれていて、現在のこの付近に残る祠の写真が併せて展示されていた。

 セルロイド金型と縁起物人形は当地の代表的地場産業である。

 【東葛西夕顔観音延喜】はとても美しい。観音は午の年のみ開帳とのこと、次回見られるだろうか。

 【亀形瓦】は亀有香取神社のもの、ちなみに、江東区の亀戸にも香取神社があり、関連調べてみようかと思っている。


 常設の郷土展示室も、短時間だが再見学した。


 会期終了前日という慌ただしい訪問だったが、目的が叶い、満足している。

 次回の企画展にも、できれば足立区郷土博物館とあわせて、足を運びたいと思っている。


 補足で、宝蔵院の彼岸花の稿で書き逃していたことを、ここに追記したい。

 宝蔵院の境内には「やくし道」の石碑があった。これはおそらく、浄光寺(木下川薬師)への道標だろう。区外でも同様の石碑が現存している。


# by nene_rui-morana | 2021-10-03 18:32 | 展覧会・美術展(令和 日本編) | Comments(0)

生誕100年 ユージン・スミス写真展_f0148563_14404399.jpg


[会 期] 2018年年1月2日(火)   [会 場] 東京都写真美術館


 20世紀を代表する写真家ユージン・スミス(1918年~1978年)については、恥ずかしながら名前程度しか知識がなかった。

 表記展覧会は、会場となった東京都写真美術館でウジェーヌ・アジェの企画展と同時開催されていて、そちらが目的で足を運んだ時にあわせて鑑賞したと思う。


 展示室入口には、スミスの写真が掲示されていた。

 カンザス州ウィチタで生をうけたスミスは、17歳の時にニューヨークで偶然出会った日経写真家の作品に感銘を受けて写真家を志す。



1.初期写真

 スタートの本章に展示されているのは、1930年代から開戦直後にかけて撮影された作品、【『ツー・フォア・ザ・ショウ』でミス・マフェット役を演じるベティ・ハットン】のモデルの名は、歴史と映画を貪欲に追及していた若き日に当時ファンだったチャールトン・ヘストン主演の〖地上最大のショウ〗で知った。貧しくビデオデッキはもちろんなし、レンタルも今日のように普及していなかった当時、往年の名画を見ようとすれば、気長にリバイバルかテレビ放映を待つ以外に手段がなかった。この映画は平日の深夜に目覚ましをかけて起きてリアルタイムで見た。



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# by nene_rui-morana | 2021-09-30 20:29 | 展覧会・美術展(西洋編) | Comments(0)

 自宅近所の公園等に彼岸花(曼殊沙華)が咲いているのを見かけて、今年もお彼岸が近いことを感じた。

 私は、他の季節は何の変哲もない場所に今の時期だけ咲き誇るこの花が好き、日常生活の中でこの花を見かけると、何となく嬉しくなる。大学のキャンバスはけっこう広く、夏休みが終わって後期授業が始まった頃にはそこかしこに咲いていたのが思い出される。

 「葛飾区郷土と天文の博物館」の記事に記したとおり、久しぶりに彼岸花が見たくなり、何処に行こうかと思案した。世紀をまたいた頃に浜離宮に行って目の保養をさせていただいたが、数年後に再び訪れた時は直近の園内整備の影響かほとんど咲いておらず、がっかりした記憶がある。都内に他の名所はないかとスマホで検索したところ、当山がヒットした。


 当日は、葛飾区郷土と天文の博物館の見学を終えた後、京成電鉄で立石まで出て、バスで奥戸新橋まで移動した。

 下りてすぐの場所にあるのだが、例によって方向音痴で入口が分からず、一周して境内へ入った。


 「和光の鐘」の脇から入ってすぐの所に群生している彼岸花は、やや盛りは過ぎていたが、白や初見の黄色の花もあり、俄然、気持ちが高ぶった。参道より奥には入れないが、幸い本日は双眼鏡を持っているので、老眼でも十分に堪能できた。





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 奥に進むと、地蔵尊の全面には今を盛りと咲き誇っていて大感激、しばし見入り、撮影した。


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 自分と同じ目的とおぼしく人が、三々五々、境内に入っては出て行く。


 堂内の仏様に手をあわせた後、更に奥にも咲いているが目に入り、しばし堪能させていただいた。


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 奥の墓地でも、そこかしこに咲いていた。

 本稿の趣旨からは外れるが、父が亡くなり菩提寺に赴く回数が増えてから、それまであまり意識してこなかったことが目につくようになった。塔婆が立っていないお墓を見ると、このお宅は絶えてしまって墓参する人がいないのか、と推察させられる。更地になっているところは、近年の時勢にあがらえず墓仕舞いされたのかもと思う。


 スマホでバスの時刻を確認し、到着時刻まで、境内を歩きながら、鑑賞と撮影を繰り返した。

 お隣の八剣神社も少し覗かせていただいた。


 帰り際にもう一度、変わり種の黄色をじっくり見た。


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 バスと鉄道を乗り継いで家路につく。途中、駅ビル内の店で夕食の弁当を買い、ファーストフードで足休めした。


 コロナで心も荒みがちな昨今、葛飾で過ごした休日半日は、しばし安らぎを与えてくれたと感じている。

 以前は季節の花等を求めてあちこちに足を運んでいたが、最近は職場近くで見られる桜を除いては、梅、藤、薔薇、菖蒲、萩、紅葉、牡丹、等々、すっかりご無沙汰となっている。

 今の状態の終息の見通しは立っていないが、以前のようにはいかないとしても、今後は時間を作って季節を味わいたいと思う。まだ先になるが、来年の桜の季節には曳舟川親水公園を、菖蒲の季節には堀切菖蒲園を、久々に訪問したいと思う。

 あわせて、葛飾は帝釈天以外の古刹も多いので、他の寺社等にも足を運びたい。


# by nene_rui-morana | 2021-09-27 18:30 | 季節の風物詩 | Comments(0)

令和3年度企画展 文化財展~継承される一品~_f0148563_21371300.jpg
[見学日] 2021年9月19日(日)   [会 場] 葛飾区郷土と天文の博物館


 2021年10月はオリンピックの関係で祝祭日がなく、仕事も忙しい時期なので有休をとって展覧会等に出向くのは困難であることが予想される。

 連休がある9月中にどこかに行っておきたいと思っていた矢先、近所の公園で彼岸花が咲いているのが目に入り、久しぶりに季節を体感してこようという気持ちになった。

 ネットで東京都内の彼岸花の名所を検索し、東都・葛飾区にある「宝蔵院」がヒット、初訪問を決めた。せっかくなので、近くに併せて立ち寄れそうな場所はないかと考えるうち、かなり以前に同じ葛飾区の「堀切菖蒲園」に菖蒲を見に行った際に知った「葛飾区郷土と天文の博物館」のことを思い出す。再検索すると公共の交通機関を利用して移動出来そうで、関心をそそられる企画展も開催されているので、まずはこちらから見学することにした。

 

 当館の最寄り駅は京成電鉄・お花茶屋駅、大学時代の友人が独身時代に一時期ここに住んでいて、1度だけ遊びに行った。それ以外でも何度か下車したことはあると思うが、記憶は定かではない。

 正午少し前に駅を出て、近くの店で昼食をとった後、徒歩で現地へと向かった。真夏日が復活して、かなり暑かった。

 当館は「旧曳舟川」沿いにある。「曳舟」はその名のとおり、現在の葛飾区から墨田区にかけての川筋で舟に人を乗せて曳いた交通手段のことで、歌川広重や小林清親の作品にも描かれている。昭和初期に荒川放水路ができて分断され、墨田区側は現在、東京スカイツリーに通じる「曳舟川通り」となっている。葛飾区側は親水公園として整備され、区民の憩いの場となっている。

 平成3年開館の当館は、昨年11月にリニューアルオープンしたという。



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# by nene_rui-morana | 2021-09-25 12:32 | 2021年 | Comments(0)

趣味の史跡巡り、美術展鑑賞などで得た感激・思い出を形にして残すために、本ブログを立ち上げました。心に残る過去の旅行記や美術展見学記なども、逐次アップしていきたいと思います。

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