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浮世絵 ベルギー・ロイヤルコレクション展 (前期)

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【見学日】2008年9月3日(水)

【会 場】太田記念美術館

 8月28日の読売新聞夕刊で本企画展を知る。近年、外国の美術館が所蔵する保存状態の良い浮世絵コレクションが注目を浴びており、日本で企画展が開催されたり特別番組が組まれたりしている。浮世絵はとても好きな芸術作品なので当企画展はぜひ行こうと決心、前期と後期で展示が変わるそうなのでどうしても2度行かねばならない。しかし直後に海外旅行を控えており、スケジュール調整にはかなり苦労した。

 1時過ぎに地下鉄・明治神宮前駅に到着、まずはこれまでに何度か利用しているお気に入りの店でランチを食べた。

 会場に到着して荷物をロッカーに預け、スリッパに履き替えてチケットを買う。
 まずは1Fから鑑賞開始、最初に目にしたのは鈴木春信の作品、実は私は浮世絵に深く傾倒するようになってからも、春信の作品はあまり好きにはなれなかった。それが昨年、某テレビ番組で春信の絵暦を何点か見てから俄然魅了され、現在では大注目の芸術家の一人となっている。今回は貴重な肉筆画が展示されている。保存状態が良く色鮮やか、実に見事である。
 並んで展示されているのは写楽の作品、モデルの個性を極端にデフォルメした作風は好みの分かれるところだが、役者の実像を想像させるのは確かであろう。こちらの作品群も色鮮やか、【初代中島和田右衛門のぼうだら長左衛門と初代中村此蔵の船宿かな川やの権】は月代の色まで残っている。【二代目嵐龍蔵の奴なみ平 とら屋とら丸】は現存する唯一の作品とのこと。版元・蔦屋の印も見ていて感じるものがある。
 歩を進めると向かい側に展示されているのは歌麿の作品、お馴染みの美人画は何度見ても見飽きない。今回とりわけ嬉しかったのは、歌麿作品としては珍しい妖怪画3点が見られたこと、こちらもユーモラスで楽しく見られて、歌麿の意外な一面がうかがえた。
 なお、1Fにはこの他に館所蔵の浮世絵6点が展示され、こちらも色鮮やかで見ごたえがあった。 

 2Fに上がり、ろの字に展示された作品を順番に見ていく。広重・写楽・春信・歌麿・国芳・その他私の知らない絵師が描いた作品の数々を、心行くまで堪能した。多彩な衣装、鮮やかな色彩、人物の個性、調度や背景の表現、間違いなく浮世絵は日本が世界に誇る芸術作品である。
 個人的に気に入った作品は、鳥文斎栄之の【吉野丸船遊び】、最近このような続き絵に特に魅了されている。大勢の登場人物はいくら見ても見飽きず、大判の紙面全体からは作者の実力があふれ出ている。
 【当世遊里美人合(蚊帳の内外)】他の鳥居清長作品は、すらりとした女性の表現と多彩な衣装のあでやかさに惹かれた。
 写楽の【三代目市川高麗蔵の廻国の修行者西方の弥陀次郎実は相模次郎時行】【四代目岩井半四郎の鎌倉稲村が崎のおひな様おとま実は楠正成女房菊水】とは組みの作品で現存唯一、今回セットで見られた。
 国芳の【相州江ノ嶋之図】は、版元の印がユニークで印象的だった。
 歌麿コーナーの一角に、本日ここに出向く最大の理由となった作品、【針仕事】が展示されていた。98年の「大歌麿展」で衝撃に近い感動を与えられた逸品、今にも動き出しそうな女性のポーズ、かざした布のぼかしの表現、ひざにまとわりつく子供、足元に置かれた小鈴付の糸切り鋏も実に心憎い。今回再会を果たして、決して誇張ではなく興奮と感激で体が震えた。

 どんなに撮影や印刷の技術が向上しても、芸術作品の真価は直接この目で見てみなければ伝わらない。今回、当展覧会を見られた感激、喜びは計り知れない。
 一通り見学した後も、何度となく1Fと2Fを往復し、念入りに見直した。たっぷり2時間以上は鑑賞しただろう。本当は閉館までいたかったのだが、夕方から別の用事が入っており、後ろ髪ひかれる思いで切り上げ、記念の絵ハガキやしおりを買って美術館をあとにした。いつの日か、現地で再会するという大きな夢を、天に託して。

 千代田線に乗るつもりで駅まで行くと、直前に人身事故が発生して止まっており、少々辟易としながら原宿駅まで戻ってJRで移動した。
by nene_rui-morana | 2008-09-03 20:20 | 旧展覧会・美術展(日本編) | Comments(0)

趣味の史跡巡り、美術展鑑賞などで得た感激・思い出を形にして残すために、本ブログを立ち上げました。心に残る過去の旅行記や美術展見学記なども、逐次アップしていきたいと思います。

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