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出雲と大和 前期

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                [副 題] 日本書紀成立1300年特別展


                [見学日] 2020年2月4日(火)


                [会 場] 東京国立博物館・平成館


 表記特別展が開催されたのは令和2年に入ってからだが、内容から、改元に伴う一連の企画の一環とみなして差し支えないだろう。

 出展作品の大半は過去に見ていると思うが、やはり記念の企画なので、足を運ぶことにした。

 前期の終了間際の2月4日(火)、永年勤続の休暇がとれた。当日は「たばこと塩の博物館」の展示を見た後、東京スカイツリータウン内に入り昼食をとり、シャトルバスで上野に向かった。


 まず、【日本書紀 神代巻(乾元本)下】(国宝、奈良・天理大学附属天理図書館)が目に入る。亀卜によって神祇に奉仕する卜部氏吉田家に伝わった写本で、『徒然草』の作者・吉田兼好もその名のとおり、この家の出である。



第1章 巨大本殿 出雲大社

 本章では最初に、巨大なオブジェのような【宇豆柱】(重文、出雲大社、島根県立古代出雲歴史博物館保管)と【心御柱】(重文、出雲大社)にしばし見入った。平成12(2000)年に出土した出雲大社の大型本殿柱遺構の柱材で、鎌倉時代中期の遷宮の時のものと思われる。

【模型 出雲大社本殿】(島根・出雲市)は、古代出雲大社本殿の10分の1の模型、本殿の大きさは諸説あるが、本作品は総高16丈(約48メートル)、引橋の長さ1町(約109メートル)と仮定しているという。いずれにしても、巨大な建造物であったことは確からしい。

【赤糸威肩白鎧】(出雲大社)は、家臣に暗殺された暴君として知られる足利義教所用、息子の義政により奉納されたと社伝にある。上級武将が着用したと思われる重厚な甲冑だが、細部は後代に製作された部分もあるという。

【杵築大社造営遷宮旧記注進】(出雲大社)は何とか読める。宝治2(1248)年の出雲(杵築)大社遷宮儀式の様子を造営所が都の出雲国司に報告したもので、読んでいて飽きない。これが担当者?の署名や花押まで記された正式文書であるのに際し、ややラフな印象を受ける【杵築大社造営遷宮旧記注進】(重文、島根・北畠家)は控えなのかもしれない。

【金輪御造営差図】は、以前に別の展覧会で見た。先述の平成12年に出土した本殿の柱と、この平面図は一致する。所有者の島根・千家家は、高円宮家の女王が降嫁されたことでその名を知ったが、ルーツは皇室より古く遡ると聞いたことがある。

【御櫛笥および内用品】(出雲大社)と【出雲国杵築大社御神殿天井八雲之図】(島根・千家家)は、寛文7(1667)年の遷宮の時の古神宝および解説図である。

【太刀 銘 光忠 菊桐紋蒔絵糸巻太刀】(出雲大社)は、慶長14(1609)年の遷宮にあたり豊臣秀頼が奉納したものといわれる。

【太刀 銘 了威】(重文、物部神社)は、大内義隆が寄進したと推察されている。

【色々威腹巻】(重文、島根・佐太神社、島根県立古代出雲歴史博物館保管)は尼子義久所用と伝わり、保存状態も良い。



第2章 出雲 古代祭祀の源流

 【貝輪】(島根・出雲市)は男性用腕輪、弥生時代のものという。

 続いて、銅剣や銅鐸などを鑑賞、中には国宝も含まれていた。

 出雲市の西谷3号墓からの出土品に注目する。【弥生土器】は【山陰系】【吉備系】【丹越系】などを展示、造形が豊かで彩色されているものもあった。青色が美しい【勾玉】、出雲は高度な技術を保有していて当地で加工したとも考えられる。【管玉】は淡青緑色の碧玉製で大変丁寧に仕上げられている。



第3章 大和 王権誕生の地

【三角縁神獣鏡】(重文、文化庁、島根県立古代出雲歴史博物館保管)は、高校の日本史の教科書に掲載されていた記憶がある。

 続いて目に入った古墳の出土品の中には、見たことがないものもあった。

 第2会場へと移動する。

当館所蔵の奈良県橿原市・新沢千塚126号墳出土品の中には、ガラスの碗や皿・金製の方形板や垂飾付耳飾・玉など、大変美しかった。

【七支刀】(国宝、奈良・石上神社)も、高校の日本史の授業で習った覚えがある。この国宝は過去に見ている。

藤ノ木古墳出土品は全て国宝、未盗掘で副葬品は類をみないほど豪華で精巧、金属製品が燦然と輝き、1500年の年月を感じさせない。

【鳳凰文心葉形杏葉】(奈良国立博物館)を見て、古墳時代の日本に既に鳳凰は伝わっていたのだなと思った。

島根県安来市・鷺の湯病院跡横穴墓出土品のレブリカが、副葬品の往年の輝きを再現していた。

【子持勾玉】(島根・松江市、島根県立古代出雲歴史博物館保管)の類は、過去にみた記憶がない。

【出雲国風土記(倉野家本)】は、古態を留める貴重な写本とのことだった。



第4章 仏と政(まつりごと)

 仏像好きの自分には、最終章も嬉しい展示だった。記憶にはないが、過去にお目見えしている仏様もおられるかもしれない。

【観音菩薩立像】(重文、島根・鰐淵寺、島根県立古代出雲歴史博物館保管)は台座に製作年等の銘が刻まれている。

【十一面観音菩薩立像】(当館)はアーリア系を思わせる目鼻立ちがはっきりした風貌、手指の表情や装身具が気に入った。

【浮彫伝薬師三尊像】(奈良・石位寺)は現存最古級の貴重な石仏、わずかながら彩色も残っている。

奈良・当麻寺からは【持国天立像】がいらしていた。

【楊柳観音菩薩立像】(奈良・大安寺)は怒りの表情をみせている。

【十一面観音菩薩立像】(重文、奈良・金剛山寺(矢田寺)は、衣の表現に注目した。

 島根・萬福寺(大寺薬師)の【四天王像】(重文)は、堂々とした風格と繊細な手の表現に魅せられた。特に筆を持つ【広目天】の右手と宝塔を持つ【多聞天】の右手は手タレのように繊細だった。

【牛頭天王坐像】(島根・鰐淵寺、島根県立古代出雲歴史博物館保管)は、興福寺の阿修羅像のような三面像、この類の作品はあまり見たことがない。



≪感想≫

 本展覧会では、一度だけ訪れた出雲大社と、以前当館で開催され大いに感銘を受けた『大神社展』が、懐かしく思い出された。

 展示の中には、現在でも通用しそうな斬新で美しいデザインのものもあった。

 歴代権力者の信仰もうかがえて、自分にとっては有意義な企画だったと感じている。

 後期を楽しみにしながら、会場をあとにした。


by nene_rui-morana | 2020-10-12 22:00 | 展覧会・美術展(令和 日本編) | Comments(0)

趣味の史跡巡り、美術展鑑賞などで得た感激・思い出を形にして残すために、本ブログを立ち上げました。心に残る過去の旅行記や美術展見学記なども、逐次アップしていきたいと思います。

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