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至上の印象派展 ビュールレ・コレクション

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     [見学日] 2018年4月27日(金)   [会 場] 国立新美術館 


某所で【イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢】で用いられた表記展覧会のチラシを入手、この作品については別途まとめるが幼少期からの思い出があるので、直ちに見学を決意した。

 しかし展覧会が開催されたのは特に忙しい年度末から年度初めにかけての時期、 気がつけば会期終了が迫り、例によってサービス残業をして早退し、何とか時間を確保した。


 タイトルのとおり、本展覧会はスイスの実業家エミール・ゲオルク・ビュールレのコレクションを紹介するもの、2020年には全てがチューリヒ美術館に移管されるという。

 会場に入り、まず目についたのはE.Q.ビュールレ財団り理事長クリスチャン・ビュールレ(ビュールレの孫)のメッセージ、正面にはコレクションに囲まれたビュールレの写真が展示されていた。



第1章  肖像画

 スタートはフェルメールの展覧会でその名を知ったフランス・ハルツ作【男の肖像】、彼は80代まで生きた。

 ピエール=オーギュスト・ルノワール作【アルフレッド・シスレー】は、画家、モデル、共にビッグネームである。

 個人的には、ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングルの【イボリット=フランソワ・ドゥヴィレの肖像】と【アングル夫人の肖像】(未完)に注目した。





第2章  ヨーロッパの都市

 第1章に続き、自分好みの、どこかで見たような懐かしさを感じる作品が並ぶ。

 ヴェネツィアを描いた複数の作品を、自身の訪問時や別の展覧会で眼にした19世紀から20世紀初頭にかけての写真の記憶と重ねて鑑賞した。アントーニオ・カナール(カナレット)作【カナル・グランデ、ヴェネツィア】は運河沿いの建物、ゴンドラ、古い町並みが、心に残る。同じ作者の【サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂、ヴェネツィア】は、緻密で写実的な描写が印象的、画面手前にはタイトルにもある私が世界で最も愛する建築物が雄大にそびえている。

 【雪のサン=ミシェル橋、パリ】からは、前衛画家としての印象が強いアンリ・マティスはこういう絵も描いたいたのかと思った。

 なお、当日の本章のメモに「古写真、古い町並み、人力車や馬車、クラシックカー、フィルム」とあるが、詳細が思い出せない。会場に映像が流れていたのだろうか。



第3章 19世紀のフランス絵画

 そうそうたる面々に懐かしさで胸はいっぱい、更に興奮は高まった。

 エドゥアール・マネ作【オリエンタル風の衣装をまとった若い女】のモデルは、シースルーの白いドレスに裸体が透け、後年の【草上の昼食】【オランピア】を彷彿とさせた。

 カミーユ・コロー作【読書をする少女】も展示、彼には他にも有名な肖像画があるが、やはり風景画家としてのコローが個人的にはより親しみやすい。



第4章  印象派の風景-マネ、モネ、ピサロ、シスレー

 本章にも、私が好きなアルフレッド・シスレーなど、目玉作品が続く。

 カミーユ・ピサロ作【ルーヴシエンヌの雪道】は、似た絵画を他所で見て好きになった記憶がある。

 クロード・モネ作【ジヴェルニーのモネの庭】を食い入るように見入った。満開のヒナゲシに睡蓮、モネらしい作品である。現在の自分にはジヴェルニーを訪れてモネの存在を肌で感られる可能性は、ほぼゼロに等しい。



第5章  印象派の人物-ドガとルノワール

 本章には、日本人に馴染みの深い2人の画家の作品、そして本展覧会の目玉作品が、展示されている。

 中央に展示されているのはエドガー・ドガ作【14歳の小さな踊り子】、他にドガの代名詞的な【控え室の踊り子】や、今回初めて知った【リュドヴィック・ルビック伯爵とその娘たち】などが出展示されていた。

 ピエール=オーギュスト・ルノワール作【夏の帽子】【泉】の間を通った正面に、本展覧会のクライマックス【イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)】が展示されている。多くの人が真剣に見入っていた。この作品については別稿を設けたい。


 作品の背面には、ビュールレの略年譜のパネルが展示されていた。

1890年にドイツで生を受け、軍隊経験を経て義父が筆頭株主をつとめていた会社の一員となり、後に独立する。ドイツが再軍備を始めると、義父が買収したスイスの会社(技術開発はドイツから資金援助を受けていた)に英仏やベルギーから大量の注目が入る。

1937年にスイス国籍を取得、この頃より本格的に印象派作品の収集に乗り出す。

ドイツ軍がフランスを占領すると、自社は国策によりドイツ向けの武器を生産、1944年からは民生品へと移行した。

戦後も蒐集は続き、1956年にチューリヒで死去、その4年後に遺族によって財団が設立された。

もとより、ビュールレを「死の商人」と批判する気持ちは毛頭ない。平和な時代のぬるま湯につかっている我々に、大戦中に国策に従った先人を非難する資格はない。

多くの人々を魅了する素晴らしいコレクションを残してくれたことに、ひたすら感謝している。



第6章  ポール・セザンヌ

 タイトルのとおり、本章は全てセザンヌ作品である。

 【聖アントニウスの誘惑】は同テーマの他の画家の作品を見た記憶がある。主役は完全に3人の艶めかしい裸婦、アントニウスは左上に追いやられている。

 チラシにも掲載された【赤いチョッキの少年】は、やはり忘れがたいインパクトがある。

 【庭師ヴァリエ(老庭師)】は、ピカソを思わせる画風だった。



第7章  フィンセント・ファン・ゴッホ

 本章のゴッホ作品は良品揃いで全て気に入った。

 【アニエールのセーヌ川にかかる橋】は初見、船、川、橋、汽車、人物のアレンジがとても良い。

【日没を背に種まく人】【二人の農婦】など、ミレーのオマージュのような作品も出展されていた。

 【二人の農婦】に描かれているのは雪の残る畑で農作業を行う農婦、ゴッホらしいうねるような雲の表現が強い印象を与える。



第8章  20世紀のフランス絵画

 本章にも、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックやパブロ・ビカソ、ピエール・ボナール、ポール・ゴーギャンなど、私が好きな画家、最近関心を寄せている画家の作品が勢揃いし、心が躍った。

 ロートレックの【コンフェッティ】は英国の製糸会社のポスターの習作、タイトルの英単語は高校の英語の授業で覚えた記憶がある。

 エドゥアール・ヴュイヤールの名は初めて聞くが、【訪問者】【自画像】の画風は私好みだった。

 ピカソの【ギュスターヴ・コキオの肖像】は、やはり輝かしいオーラを放っている。ポーズ、バック、共にキマっている。



第9章  モダン・アート

 モーリス・ド・ヴラマンク作【ル・ペック近くのセーヌ川のはしけ】は、各モティーフの配置がとても良い。

 ジョルジュ・ブラックには最近、各所でその作品を見る機会に恵まれて注目しており、今回も3作品が見られて嬉しかった。

 ピカソ作品も2点、出展されていた。



第10章  新たなる絵画の地平

 フィナーレはモネの【睡蓮の池、緑の反映】、正直自分は、以前に見た別の睡蓮の方が好きだが、水面の表現等が素晴らしい。



≪感想≫

 待望の【イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢】のほか、本展覧会の作品は良品揃いで、受けた感動は並々ではなく、大変満足している。

 印象派の作品は日本人の感性にあっており、ビュールレの好みは日本人に似ていたのかもしれない。


 館を出た時はすっかり日が暮れていて、例によって方向音痴の本領を発揮し、かなり大回りしてしまった。

 空腹で倒れそうだったが、食事をとれる店がなく、ようやく空いていた店を見つけた。


by nene_rui-morana | 2019-08-12 09:30 | 展覧会・美術展(西洋編) | Comments(0)

趣味の史跡巡り、美術展鑑賞などで得た感激・思い出を形にして残すために、本ブログを立ち上げました。心に残る過去の旅行記や美術展見学記なども、逐次アップしていきたいと思います。


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