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歌川国貞展 後期

[副 題] 錦絵に見る江戸の粋な仲間たち


[見学日] 平成30年3月10日(土)


[会 場] 静嘉堂文庫美術館



 表記展覧会はもちろん前後期見るつもりだった。

先述のとおり、前期開催中に実施された小林忠先生の講演会を聴き逃してしまったので、ロバート・キャンベル先生のお話は何としても聴講したいと思い、必死で時間を確保した。

しかし、超有名な先生なので早くに定員に達することが予想され、会場は自宅からはやや遠いので早めに行って整理券を確保することも困難、当日はやや不安を感じながら二子玉川駅で昼食を済ませた後にバスで会場へと向かった。

案の定、入口には「定員に達しました」の貼り紙、大いに失望しつつ建物へと向かう。

チケット購入時にダメもとで聞いてみたら「まだ受付しています」との返事、まさに地獄から天国へ駆け上がった気持ちだった。最後まで諦めない、しっかり確認する、座右の銘として心に刻んでおきたい。

講演をはさんで、夢の国貞ワールドを心ゆくまで堪能した。





 【今様見立士農工商 職人】【今様見立士農工商 商人】は、プリモアートという質の良い複製だった。

講演会開催日ということもあってか、会場はかなり混雑していた。


展示室内は【集女八景 魚村夕照】より始まった。


七福神絵を手前に配する【全盛見立三福神】は豪華絢爛な衣装をまとった吉原の花魁三人を描いた見応えのある作品だった。

 【新板錦絵当世美人合 杜若きどり】は無地の黒い着物が見る者の目を引く。


大好きな【今世三十弐相】シリーズのほか、複数の素晴らしいシリーズものを堪能できた。このシリーズあたりから、新しい顔料が使われているという。


 作品に描かれた女性の中には、お歯黒をした人、笹紅をさした人なども見られた。


 【当世美人流光好(夏の茶屋)】は、ポーズが気に入った。


【五百羅漢寺】は、国貞の生地、本所五つ目にあった禅寺を描いたもの、幼少期の国貞はこの寺を見て育ったのだろう。

他にも【江戸勝景 白ひげ】など国貞の<御当地もの>が出展されていた。


 【風流見立難波乃梅】は今の季節にぴったりである。


 【美人八景】シリーズも見応えのある秀作、≪回向院の晩鐘≫は蚊遣の煙や四代目坂東三津五郎が描かれた団扇が、≪両国の夕照≫は灯が入ったらしい提灯のデザイン(国貞の年玉印二重つなぎ)が、それぞれ印象的だった。

 【当世葉うた合(伸子張)】は、虹のように染め上げた布を伸子張する母と、傍らで走り回る男児を描いたもの、ひときわ色鮮やかな作品だった。


カラフルな【源氏君花街遊覧】は国貞晩年の万延元(1860)年の作品で、実は弟子が多く描いたとも言われる。舞台は横浜・港崎遊郭街の「岩亀楼」、五雲亭貞秀もスタッフに加わっていただろうか。

【長崎円やま】は、鮮やかな玉燈篭や彼方の蒸気船に時代を感じる。背景を描いた広重は二代目である。


歌川広重とのコラボ作品【双筆五十三次】シリーズは、書籍では見ているが、現物を一度にこれだけ見るのは今回が初めてだと思う。

【芝居町 新吉原 風俗絵鑑】は本日は芝居茶屋の宴会のシーンが展示されている。自分が見覚えがある以外の役者も描かれているのだろう。障子の影の表現にも注目した。

【芸者の図】は、みる機会の少ない国貞の扇、【国貞漫画図会 弁天小僧菊之介】【国貞漫画図会 奴の小万】も多分初見だろう。

 【見立娘壇之浦】は動きのある作品、タイトルのとおり『平家物語』り壇之浦のシーンが見立てられている。


 複数の人物を生き生きと描き分けた【神無月顔見世の光景】は1815年頃の作品、左側の柱に「かへり見かゑり見し筆の...」という詞書と「師の恩や雪のしろきを後にして 五渡亭」の句が書かれている。

【春待月娼家の桃花】も好きなタイプの作品、どんなに見ても見飽きない。


【神無月はつ雪のそうか】は他所でも見て心に残った作品、降りしきる牡丹雪の中、たくましく生きる夜鷹の姿を描いている。

【船着き場の夕暮】も国貞作品の魅力が結集した心に残る逸品だった。


 【にわか夕立】に並んで一部修正した【両国にわか夕立】が展示されていた。左図の版木が失われたため彫り直し、他の二枚も改刻したとの説がある。



<感想>

 前期と同様、我が国貞の珠玉の作品を多数見ることができ、後述のようにロバート・キャンベル先生の講演を聴き直にお話できた感動・喜びは、計り知れない。

 もっと長く見ていたかったが、次に別件が入っており予定の時間に後ろ髪引かれる思いで会場をあとにした。

 本館のコレクションは逸品揃いで、過去の展覧会では多くの感激を与えてもらった。自宅からの交通アクセスは便利とはいえないが、今後も興味をそそられる企画展には可能な限り足を運びたい。国貞の展覧会もまた開催されることを熱望する。

 庭園の梅が美しく咲いていて、作品鑑賞の合間には窓から、退館後は傍まで行って見た。結局今年は、ここで見た梅が唯一となった。


by nene_rui-morana | 2018-08-24 22:46 | 展覧会・美術展(日本編) | Comments(0)

趣味の史跡巡り、美術展鑑賞などで得た感激・思い出を形にして残すために、本ブログを立ち上げました。心に残る過去の旅行記や美術展見学記なども、逐次アップしていきたいと思います。

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