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歌川国貞展 前期

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[副 題]

   錦絵に見る江戸の粋な仲間たち


[見学日] 平成30年2月4日(日)


[会 場] 静嘉堂文庫美術館



 表記展覧会を自分が前後期共に見ずに済むわけはない。例によって必死にスケジュールを調整した。



 チケットを購入し、ロッカーに荷物を預け映像を見ながら小休止した後、歌川派略年譜を見つつ会場に入る。


 スタートは【今様見立士農工商 職人】、色が非常に鮮やか、【今様見立士農工商 商人】と合わせて見た。後者の左襖には下谷の錦絵問屋・魚屋栄吉の新刊宣伝ポスターが大きく描かれ、看板に見られる国貞は二代目、彫師は名工と名高い「横川彫竹」である。


 【江戸花見たて六歌仙】は多分初見だと思う。





 以前に見た作品、見ていない作品が散見される。

 これまでの展覧会と同様、多彩な服飾、色彩の美しさに魅了された。

 【北国五色墨】シリーズのタイトルのデザインは自分には沖縄のシーサーか狛犬のように見えたが、墨(多分中国製)とのことだった。

 

 【集女八景】シリーズのコマ絵は、国貞作品に時々見られる年玉印枠と松皮菱枠を組み合わせ、画題とその風景を水墨画風に描いている。

 【時世江戸鹿子 白銀の清正公】は、夜泣きした赤ん坊に乳を含ませて寝かしつけた直後を描いたものだろう。子どもは気持ち良さそうに眠り、母は胸元もあらわに愛児を見つめて布団に入ろうとしている。コマ絵に描かれている表題の寺(正確には境内にある加藤清正を祀った堂)は、子どもの夜泣きや疳の虫封じもしたという。

 【浮世見立粂の仙人】は同じテーマの河鍋暁斎もパロディー画を描いている。洗濯する女性の白い脛を見て粂の仙人が天上から落ちてくるというストーリーを素に、半ば胸元もはだけた洗濯中の女性と、コマ絵には屋根から落ちんとする職人が描かれている。


 国貞の御当地を描いた作品も見られた。【江戸自慢 四万六千日】には、七代目市川団十郎の賛が記された団扇が描かれている。同じシリーズの≪両国夕涼≫には丸井コマ絵に両国の花火が描かれている。

 このシリーズはとても良い。≪駒込富士参り≫≪洲崎廿六夜≫からは、子どもへの細やかな愛情が感じられる。後者は、以前メアリー・カサットの展覧会で見て(記事はいつかアップします 汗)微笑ましく思った喜多川歌麿の【行水】が思い出された。


 【思事鏡写絵(湯上り)】のコマ絵の店先に描かれたロゴが版元と同じで、コマ絵は版元・松村屋の店先かもしれない。


 【江戸新吉原八朔白無垢の図】は後方の竹村伊勢の積物にも注目、左図右上に黒い三画は色指定のミスらしい。


 【風流投扇興 夕きり】は、モデルの美しさ、透ける薄物の着物、扇、門と絡まる朝顔、見どころいっぱいの名品、このような作品を見る度に国貞に魅せられていく。


【蛇踊図 唐人踊図】には、当時流行した蛇踊りと唄の歌詞が後方の衝立のかかれている。作品名がカッコ書きとなっているのは、正式なタイトルが作品に書かれていないからだろう。


 【月雪花ノ内 向島月見】は現在の墨田区が舞台、こちらも国貞の御当地、対岸は浅草の景観がモノクロで描かれている。


【雪のあした】は正月の景観を一図に撮り合わせたもの、井戸には注連縄がはられ、手桶には「寿」の文字、例の年玉模様がデザインされた竹馬の少年がくわえる曲物には「文政六年(1823)癸未」と書かれている。後にこの作品の藍摺版が出されたが、そちらではこの年の記載が消されているという。


 【今世斗計十二時 巳ノ刻】以降は狂歌が書き添えられている作品が見られたが読めず残念、読めれば味わいが深まるにと学生時代の不勉強をあらためて後悔した。


 【御誂当世好】シリーズは、畳紙に包んだ様々なデザインの反物がコマ絵となっている。≪厚板≫の越後札に書かれている「チウ三」とは「昼三」、吉原の上級遊女のことだという。


 【星の霜当世風俗】シリーズ以降は、過去の展覧会や美術全集等で見覚えある作品が続く。このシリーズの≪かげま≫は実は女性ではなく、客は僧侶と思われる。≪行燈≫の行燈の中の影、襟元に「五渡亭」、足下のアイテム、等々、国貞作品の醍醐味が堪能できる。


 【当世庭訓往来 牛嶋の餅】のコマ絵の看板は今も残る長命寺名物・桜餅、私にはモデルがまとった着物の左袖の亀が「貞」の字に見えた。

 【三囲】【江戸勝景 柳島妙見】と、この近くを描いた御当地ものが続く。


【四季遊ノ内春 佃島】の波の表現が印象的、以降は過去に見ている作品が続いた。


【双筆五十三次 宿つぎ目録】はビラ絵の名手とされる梅素亭玄魚の作、このタイプの作品は大好き、本シリーズは広重とのコラボである。


【芝居町 新吉原 風俗絵鑑】は、署名等はないが描かれた人物の画風が酷似していることから国貞作品である可能性が高いという。確かに描かれた役者の顔には見覚えがある。

桟敷席に座る客は見るからに富裕層、着装も豪華だし御馳走が並んでいる。平土間席の客も湯茶や煙草・軽食で談笑しながら舞台を楽しんでいて、酒も供されるようで早くも出来上がり喧嘩している人もいる。現在は観劇中は食事はできないが、以前に一度だけ行った両国国技館の相撲では飲食しながら取り組みを観たことを思い出した。

 通常ではあまり描かれない楽師や、舞台裏、更には下手から役者の背後を見る安価な「羅漢台」の様子も伝えている。

 私の心を鷲掴みにした中村座の楽屋絵に共通するものがある、国貞屈指の名品であり、本日この作品を見られた意義は非常に大きい。

  

 【百人美女】シリーズは絵暦だが、老眼のため解説を読んでも分からず残念、似た構図の作品を他で見ている。


 【今風化粧鏡】シリーズは数多い国貞の美人画の中でも屈指の名品だと思う。本シリーズで描かれた女性の美しさは絶品、特に≪牡丹刷毛≫は素晴らしく、眉毛の繊細な描写に魅了され、刷毛の空摺りを双眼鏡で必死に見て確認した。


【当世六玉顔】シリーズは、太田記念美術館で見たような気がするが、他絵師の類似のシリーズだったかもしれない。≪井出の玉川≫≪擣衣の玉川≫は、背景のレース編みのモティーフのようなモダンなデザインが印象的だった。

 

 今回は国貞作品の他に、作中に描かれた鏡台などが参考出品されていた。(所蔵はポーラ文化研究所)



<感想>

 あらためて述べるまでもなく、本展覧会は自分にとっては理想的な企画、当館の国貞作品コレクションは全国屈指だが一度に見られる機会はあまりないと思うので、本当に嬉しかった。

 毎度のことながら、展示作品の素晴らしさは自分の拙い文章では表現できないとしか記せない。今回と同様の企画が再度実現することを切望する。

 見学後に短い時間だが庭園を散策した。水仙や早咲きの紅白梅に、春の訪れも遠くないことを感じた。


by nene_rui-morana | 2018-08-19 15:07 | 展覧会・美術展(日本編) | Comments(0)

趣味の史跡巡り、美術展鑑賞などで得た感激・思い出を形にして残すために、本ブログを立ち上げました。心に残る過去の旅行記や美術展見学記なども、逐次アップしていきたいと思います。


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