趣味の史跡巡り、美術展鑑賞などで得た感激・思い出を形にして残すために、本ブログを立ち上げました。心に残る過去の旅行記や美術展見学記なども、逐次アップしていきたいと思います。
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生誕290年記念 勝川春章-北斎誕生の系譜

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     [見学日] 2016年3月18日(金)


     [会 場] 太田記念美術館



 近年大人気の葛飾北斎は、駆け出しの頃は勝川春章の門下で活動し、「春朗」と号していた。2016年はその春章生誕から290年目といわれ、浮世絵の聖地・太田記念美術館で表記特別展が開催された。

 複数の浮世絵展覧会により、勝川派の作品も良いなと思うようになっていたので、副題にも惹かれ、表記展覧会に足を運ぶことにした。

作者名の表記がない作品は勝川春章作、所蔵の表記がない作品は当館所蔵です。








 まずは勝川の始祖・春章の真骨頂、役者絵を堪能する。

 スタートは【三代目松本幸四郎の土左衛門伝吉】、ユーモラスだが写実的な作品、壺の意匠も印象的だった。

【二代目中村助五郎のまたのゝ五郎かげ久 三代目大谷広次の川津の三郎祐安】は、力士の肉体外に空摺りが見られた。

 【絵本舞台夫雄義】は一筆斎文調とのコラボ作品、扇面役者絵には大いに魅力を感じる。

鞍馬獅子を躍る役者の一瞬の動きをとらえた【初代中村仲蔵の御厨喜三太】は文句なしに春章初期の傑作、獅子の被り物はユーモラス、子供の玩具がデザインされた衣装も可愛い。個人所蔵の初出品作品とのことなので見られた喜びは大きい。

同じモデルを描いた【東扇 初代中村仲蔵】東京国立博物館と感動の再会、扇の骨に空摺りが見られる。

 【初代嵐雛助の渡辺丁七唱】は、幾何学的な衣装の模様、上部の金と桜、書き添えられた句のとり合わせが絶妙、役者のポーズもキマっている

 【五代目市川団十郎の股野の五郎景久 初代中村里好の白拍子風折 三代目沢村宗十郎の河津の三郎祐安】以降は、文字通り、役者がそこにいるようだった。



2階へと移動する。

【五代目市川団十郎のあら次郎 初代中村仲蔵の時忠公】以降も、臨場感あふれる展示が続く。

 途中からは次の代の作品が登場する。

 春潮作【四代目岩井半四郎の七変化】は役者の多彩な芸と艶やかさを描いた、鮮やかで華やかな作品だった。


展示は美人画へと変わる。

 鈴木春信作【浮世絵美人寄花 南の方 松坂屋内野風 藤】が出展されていて大感激、

春英の【おしゑ形】【おしゑ形 枕獅子】は画面たっぷりに美人の立ち姿を描いている。衣装も華やかで見応えがある。

似た画風の春扇作【二川 よしだへ一り】は背景の扇型の枠内に東海道巌窟観音の景観を描いている。


相撲絵でも勝川派の魅力を満喫できる。

制作年とされる天保3(1783)年当時のスター力士2人と行事を描いた【小野川喜三郎 谷風梶之助 木村庄之助】東京国立博物館は、かなり以前になるが、聴講した江戸時代の勧進相撲に関する講演会で配布された 

 【日本一江都大相撲土俵入後正面之図】石黒コレクションは、東方力士の退場と西方力士の土俵入りを正面から描く。こちらも花方力士が文字通り揃い踏み、あまり見られない後姿の行司を珍しく感じた。

 春好作【江戸三幅対】は、行司が五代目市川団十郎、手前に描かれているのは谷風と今も名高い高級遊女・花扇、当時の各界トップスターの夢の共演、現代でも実現はかなり難しいだろう。


 描写は全身像から大首絵と変わる。このジャンルは喜多川歌麿や東洲斎写楽が有名だが、その先駆けともいうべき勝川派の大首絵も大変素晴らしいと感じている。個人的には極端にデフォルメされた写楽画よりも勝川派の役者絵の方に好感を覚えている。

 春好作【四代目岩井半四郎】【三代目瀬川菊之丞】は、役者の個性を見事に描き表している。

 春英作【三代目市川高麗蔵 三代目坂田半五郎 初代中村富三郎】は、歌麿の【当世三美人】(自分が子どもの頃は【寛政の三美人】と称されていた)と写楽の役者絵を掛け合わせたような印象を受けた。制作は寛政5(1793)年、この少し後に展示されていた写楽の代表作は寛政6年制作、春英の作品の方が先駆けなのだろう。


 特に武者絵や役者絵は、背景の風景画にも注目したい。



 勝川派以外の作品も見られた。

 【役者舞台之姿絵】は遠目にも初代歌川豊国の作品だと分かる。我が国貞を生み出しだ土壌が着実に熟成されていったことがうかがえる。


展示ケースの中には、揃物の中版錦絵が展示されていた。【かゐこやしない草】は全12枚、北尾重政と春章が6枚ずつ担当していて、当時の絵師の交流がうかがえる。養蚕の手順が説明とともに描かれ、春信風の女性が美しい。

折り紙くらいの大きさに描かれた力士の肖像錦絵は、非常にリアルだった。ぜひ全作品を見てみたい。


春章の肉筆画も出展、格調があり大変美しい。

【子猫に美人図】は、衣類の描写、女性の美しさ、猫の可愛さ、見どころ満載の逸品である。



地下の展示室へと移動する。こちらには歌川派や葛飾北斎の作品も見られた。

 豊国の大首絵【六代目市川団十郎】は大変インパクトがあった。

「春朗画」と署名された北斎初期の作品【金太郎に鷲と熊】は、がっしりとした金太郎が愛らしい。鷲と小熊の表情もどこかユニークだった。縦長の美人画【女札】は北斎20代の天明年間の作といわれる。

【上埜】【新板浮絵三囲牛午前両社之図】は北斎の生地の近くを描いたもの、後者は他所で見た記憶がある。

 【北斎漫画】の魅力はあらためて記すまでもない。自分の手元にも同寸大のレプリカが欲しい。

 ≪冨嶽三十六景≫の中で最もお気に入りの【御厩川岸より両国橋夕陽見】も鑑賞することができた。



≪感想≫

 残念ながら前期は見られなかったが、春章を祖とする勝川派の魅力が堪能できる、大変素晴らしい展覧会だったと思う。

 時間は経過してしまったが、本稿をまとめるにあたり、地元の図書館で図録を借りて読み直し、あらためて勝川派作品の魅力を再確認した。

同じ時代を生きた役者や力士を生き生きと描いた春章の作品からは、時代の息吹きも感じとれる。

今後も機会があれば、勝川派の展覧会を見て、その魅力を体感していきたい。


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by nene_rui-morana | 2018-06-24 16:27 | 展覧会・美術展(日本編) | Comments(0)
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