浮世絵から写真へ-視覚の文明開化-(後期)2

★第二章 絵と写真との出会い

 本章のスタートは幕末から明治初期に描かれた浮世絵、多くは過去に見ている。歌川芳藤作【開化旧弊興廃くらべ】はとても楽しく、時代を表すという点からも興味をそそられた。


 古写真好きの自分には、【東京名所写真帖】【写真帖】などの展示はこたえられない。

 一方で、これらの写真が面影を伝える江戸時代に制作された【東都歳時記】や広重の風景版画なども、もちろん大好き、あわせて見られた感激は計り知れない。

 明治期の人物画は、「浮世絵と写真の折衷作」といった印象を受けた。

 【故内務(郷)卿贈正二位右大臣大久保利通公肖像】【高貴徳川継絡之写像】は江戸博がたつこの地で生を受けた小林清親の作品、彼は幕臣で、明治維新後は徳川家の転封に従って一時静岡に行っている。

 横浜での展覧会で感銘を受けた五姓田芳柳や渡辺幽香の作品も出展されていた。かの高橋泥舟が賛を寄せている作品もあった。


 国貞の【江戸名所百人美女】も大好きなシリーズ、ぜひ全部を一度に見たい。パネル展示されていた一眞の【凌雲閣百美人】はこれに触発されたのだろう。

 酒井抱一編【光琳百図】【光琳百図後編】【乾山遺墨】も出展されていて、大変嬉しかった。

 松平定信が政治家として優れていたかは疑問があるが、【集古十種】の編纂は高く評価する。


 後半には、横山松三郎が撮影し高橋由一が彩色した写真が登場する。雄大なパノラマ写真もあった。これらの撮影を命じたのは太政官少史・蜷川式胤、彼が刊行した【観古図説】(個人、当館寄託)も展示されていた。

 【国華余芳 写真帖】(国立印刷局 お札と切手の博物館)は、1879(明治12)年に大蔵省印刷局が行った古美術調査の成果物、こちらも多分見たことがある。関西の寺社や日光など、自身の記憶と重ねて熱心に見入った。太平洋戦争末期の空襲で焼失した名古屋城の天守などは、写真という媒体のありがたさを実感させられる。



★第三章 泥絵・ガラス絵・写真油絵-時代が生んだ不思議なモノ-

ガラスケースに司馬江漢の【西旅旅譚】と葛飾北斎の【画本彩色通 初編】が展示されていた。両名とも洋風画作品に取り組んでいる。

 続いて、幕末~明治期に描かれた西洋画・油絵を堪能した。もちろん、国貞の弟子・歌川貞秀の作品も展示されていた。


本章で注目したのは「ガラス絵」、ガラスの裏から通常とき逆の手順で塗り重ねたもの、伊藤若冲が裏彩色を用いていたこいたことは知られているが、明治期には引き手金具やビーズ皿などにガラス絵が見られる。

 かの横山松三郎は「写真油絵」が始め、同門で米国留学中に着彩写真に出会った2代目鈴木真一と共に研究を重ねて完成させた。印画紙の表面の画像だけを薄く残すように裏の紙をはがし、そこに裏から油絵具で着彩するというもの、他の写真師と同様に絵心のあった横山だからこそ成功した技法だろう。

 横山の【自画像】(個人)はアイヌを思わせるものがあった。本展覧会のポスターやチラシに用いられた【丁髷の男と外国人】(個人)も横山の手で成る。鈴木も見事な作品を残している。

 横山の弟子でやはり画家でもあった小豆澤亮一は、専売特許条例が施行された8日後の1885(明治18)年7月9日に特許を出願し、10月に取得した。会場には、小豆澤の風景写真や人物写真、広告なども展示されていた。特許の期限は15年間だったが、小豆澤は取得後5年で没し、写真油絵の希望は忘れられた。素人説だが、別のカラー写真の技法が開発されたのも写真油絵が幻となった一因と思う。

 小豆澤は、1887(明治20)年に開催された東京府工芸品共進会の出品作品を写真油絵で再現した。この【小豆澤写真油絵】には、浅井忠、濤川惣助、柴田順蔵(是真)、石川光明、跡見玉枝、正阿彌清二郎ら、そうそうたるメンバーが名を連ねており、見応えがあった。

 展示のフィナーレは、相撲の浮世絵と写真、締めは横綱・白鵬の平成21年11月場所優勝額だった。両国国技館やJR線両国駅で他の力士の優勝額を見ている。佐藤寿々江氏は半世紀に渡って優勝額の彩色を手掛けられてきたが、数年前に引退されるニュースに接した。現在はインクジェットプリントが用いられているとのこと、私が愛する「刷り物」の歴史を体感する展示だった。なお、白鵬関の優勝額は個人所蔵となっていた。



≪感想≫

 冒頭に記したとおり、自分が大好きな浮世絵と写真の二本立て企画である本展覧会は、実に嬉しく有意義なものだった。

 前期には足を運べなかったが、大好きな浮世絵とあわせて、レンズが、カメラが捉えた大好きな19世紀への時空旅行を体感できた感激は、計り知れない。

 例によってアップまでに多くの日数が経過してしまったが、図録を見直しながら本稿をまとめ、実に素晴らしい展覧会だと再確認した。

本展覧会が開催されていた時、恵比寿の東京都立写真美術館は休館していたので、その点でも古写真ファンにはありがたい企画だった。

今後も近場で古写真に関する展覧会が開催されるなら、可能な限り足を運びたい。

なお、当日のメモによると、この日の夕食はポイントを利用してとったようである。


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by nene_rui-morana | 2018-04-25 14:29 | 展覧会・美術展(日本編) | Comments(0)

趣味の史跡巡り、美術展鑑賞などで得た感激・思い出を形にして残すために、本ブログを立ち上げました。心に残る過去の旅行記や美術展見学記なども、逐次アップしていきたいと思います。


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