鈴木其一  | 江戸琳派の旗手 ② -2

 表記展覧会の出展作品を完全に近く網羅するには、3度足を運ばねばならないことを最初の見学時に入手したリストで知った。見られる機会が少ない其一の展覧会、もちろん即座に実行を決意した。

 2度目の見学日は長時間が経過していて正確な日時は覚えていないが、会期は2016年10月3日から17日までだった。

※作品名後()内は所蔵元、書いていないものは個人蔵です。



 本日のスタートは【雪中檜に小禽図】、酒井抱一らしい雅で品の良い逸品、落款も魅力的、所蔵者・細見美術館には未だ訪れる機会に恵まれていないが、いつかまた京都行きが実現したら、承天閣美術館の特別展と併せて名品の数々を鑑賞したい。

 鈴木蠣潭(せいたん)作品は、【秋草に小禽図】【大黒天図】が出展されていた。

 しばし、両名の名品を堪能した。

 其一が描いた【抱一上人像】は、おそらく抱一の実際の容貌を最も正確に伝えているだろう。





 ほどなく、其一作品が登場する。

【蓮に蛙図】(メトロポリタン美術館フィッシュバイン・ベンダーコレクション)は大田南畝(蜀山人)との、【源三位頼政図】は師・抱一との、夢のコラボレーションである。

【文政三年諸家寄合描図】(メトロポリタン美術館パッカードコレクション)は本展覧会で最もお気に入りとなった作品、多彩なモティーフと書、当代一流文化人との夢の共演、いくら見ても見飽きない。

 本日は過去の展覧会で魅了された其一作品と夢の再会を果たした。【群鶴図屏風】(ファインバーグ・コレクション)【夏秋渓流図屏風】(根津美術館)【風神雷神図襖】(東京富士美術館)は、全て忘れられない其一作品である。好きな白百合が描かれている【夏秋渓流図屏風】の出展は春に根津美術館で見られなかったので特に嬉しかった。

 【桜花返咲図扇面】(細見美術館)にも注目、実に素晴らしい。


ケース内には【光琳百図】などが展示されていた。【癸巳西遊日記】(京都大学附属図書館谷村文庫)も気に入った作品の一つ、絵日記ながら絵師のものだけに見応えがある。

其一は句集や狂歌集の挿絵も手掛けている。【鈴木其一書状】(国文学研究資料館、個人)にもイラストが添えられている。【註文簿】や鑑定書からは当時の絵師の仕事がうかがえる貴重な史料だと思った。

【新撰花柳百人一首募集擦物】(石水美術館)は本展覧会で特に気に入った作品の一つとなった。


【松島図小襖】(ファインバーグ・コレクション)は『ボストン美術館・日本美術の秘宝』で見た光琳の【松島図屏風】を彷彿とさせる。同名の個人所蔵作品も展示されていた。

 【波に波濤図屏風】からも、其一が光琳や抱一の画風を継承していたことがうかがえる。

 【月に秋草図】(岡田美術館)は、月を其一が、秋草と描表装を長男・守一が、それぞれ手掛けている。手前に描かれた秋草がシンブルながらも上品で美しい。

 【毘沙門天像】は父が亡くなる直前に多分見ていると思うが、当日の記事は未だアップできていない。

 能を描いた其一の作品は、ひときわ見る者の心を打つ。



 下の階へと移動、そこにも夢の其一ワールドが広がっている。



 まずは、酒井鶯蒲作【菊に流水図扇】(太田記念美術館)など、他の琳派絵師の作品を堪能した。池田孤邨作【江戸近郊八景図画帖】(細見美術館)は手のひらサイズの小品だがとても丁寧に味わい深く描かれている。


 【十二カ月花鳥図扇面】(ファインバーグ・コレクション)も本展覧会一押しの逸品、和紙の風情を活かした、シンプルだが心清らかになる作品群である。

 【鶯草図香包】【梅鉢草図香包】は絹地に金箔の地にシンプルなモティーフを描く。元の形状を保った豪華かつ貴重な香包を今回見ることができた。

 【笠子に河豚図扇面】(鴻池合資会社資料室)はユーモラス、色鮮やかな【羅陵王舞楽図面】【石橋・牡丹図】にも注目させられる。


 再び、其一以外の絵師が登場する。

守一作【秋草に鶉水月図】は本絵を縁どる中廻しと柱に印象がずらりと押されている。鶯蒲作【近江八幡図巻】(細見美術館)は私好みのミニチュア作品だった。


以降も心憎い其一作品が目白押し、興奮で胸は高鳴る。初見作品、見覚えのあるもの、全てが素晴らしく、いちいち書いてはいられない。

【初荷入船図】(細見美術館)は大きな帆が印象的、【鍾馗・神功皇后・武内宿禰図】は舞台の一幕を見ているようだった。

【鶏に菊図】は伊藤若冲とは違った印象を受けた。

【雪中檜図】も其一らしい作品、【水辺蘆鴨図】は小振りながら琳派の魅力が結集している。

アールヌーボーを彷彿とさせる【花菖蒲に蛾図】(メトロポリタン美術館パークコレクション)は、すっかりお気に入りとなってしまった。

 【四季歌意図巻】(細見美術館)も小さめながら心を打つ逸品で、レプリカを手元に置きたいと感じた。


 ひときわ輝かしいオーラを放つのは、もちろん【朝顔図屏風】(メトロポリタン美術館)、このタイプの作品はかつては「下品で日本の国立博物館で展示するには値しない。」と酷評されたと小林忠先生が話されていたが、ようやく日本人の感性が時代に追いついてきたらしい。個人的には大好きで、再会の感動に興奮しながら、蕾や蔦までじっくりと鑑賞した。


 【林檎図】(愛知県美術館木村定三コレクション)は当時はあまり用いられなかったであろう林檎の実と花がモティーフとなっている。

 【十牛図扇面(稲穂図下絵)】(正木美術館)は室町時代に「戯墨」なる印を用いた画家の扇面に、其一が改装を機に稲穂を描いた掛軸、其一作ではないが牛と牧童を描いた扇面が実にいい。

 【維摩図(光琳写)】は本日最大のサプライズの一つだった。賛の書者は「柳暁堂」、これはかの井伊直弼の号である。出自は決して高くない其一が同時代最高のビッグネームと接点があったことは自分にとっては驚嘆に値した。当時の大名家間、一方で身分を超えた文化の交流を表していると思う。図録の解説によると、風流人であった直弼は尾形乾山の流れを組む年下の三浦乾也に陶芸を学び、宴席に其一を招いている。

 上記作品も、【寿老・大黒・恵比寿図(応挙写)】も、其一が古今東西の芸術家と同様に、偉大な先人の模倣により自己の芸術性を磨いていったことを伝えている。

 【山並図小襖】(ファインバーグ・コレクション)は、目の前に山々が連なり広がっているようだった。



 長い期間が経過し、かなり曖昧になった記憶をたぐりながら本稿をまとめて、あらためて、自分にとっては本当に素晴らしく最高の展覧会であったと感じている。決して誇張ではなく、ここまで気に入った作品が集結した展覧会は、展覧会通を自任する自分の中でもそれほど多くはない。

 毎度の繰り返しになってしまうが、出展作品の素晴らしさは自分の拙い文章ではとても表現できない。ますます鈴木其一を好きになってしまった。

 今回出会った作品との再会が、早くも待ち遠しい。


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by nene_rui-morana | 2018-04-09 09:57 | 展覧会・美術展(日本編) | Comments(0)

趣味の史跡巡り、美術展鑑賞などで得た感激・思い出を形にして残すために、本ブログを立ち上げました。心に残る過去の旅行記や美術展見学記なども、逐次アップしていきたいと思います。


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