2018年 01月 22日
めでたい北斎~まるっとまるごと福づくし~ 後期
[見学日] 2018年1月2日(火)
[会 場] すみだ北斎美術館
2018年最初の美術館見学は、すみだ北斎美術館開館一周年記念の表記展覧会、昨年中に前期を鑑賞しているが、一年のスタートとなった企画展なので、元旦後本年最初のレポとしたいと思います。
今年は年末より複数の身内が体調を崩したこともあり、休みに入ってからは年末の締めや年明けの用事などでほとんど家にいた。しかし展覧会くらいは行きたいと思い、年内に何箇所か巡った。
年明けもどこかに行きたいと思った。近年は2日より開館する博物館等が増えており、各所で独自の正月企画を実施している。どこにしようか迷ったが、会期終了日を考えて表記展覧会に決めた。
正月中だが、館内はかなり多くの見学者が熱心に展示に見入っていた。
※作品名の後に作者名が記載されていないのは葛飾北斎作です
1.めでたい神様
●七福神オールスターズ
七福神は大好きなキャラクター、北斎や門弟の作品が並ぶ。スタートから新年に相応しい大変嬉しい展示となった。
【三升福禄寿】【七福神図】など、本日見られた北斎の高弟・魚屋北渓の作品はとても良いと思った。
【酒宴の男女】には七福神を表すモティーフが記載されている。
本コーナーでは他に、【画本彩色通 初編】【三体画譜 寿老 布袋 福禄】や、葛飾為斎作【花鳥山水細画図式 四編】などに注目した。展示されている以外の頁もぜひ見てみたい。
為斎の【万物図解 為斎画式 二帙 布袋 猩々】は一押し、布袋は腹に似顔絵を描き、恵比寿は河豚(福をかけているのだろう)を釣り上げて驚いている。とにかく楽しい。何度見ても見飽きそうにない。
【伝神開手 北斎漫画 刀八毘沙門天】の精緻で綿密な描写にも魅せられた。
展示作品には、童子や七福神など好みのモティーフが多数登場、例によって書き添えられた字が読めず残念だが、とても楽しめた。手に取って見たいと思う作品もあった。
●神様オンパレード
次のコーナーにも御馴染みの面々?が多数登場する。
制多迦童子、矜羯羅童子は、過去に見た彫像では愛らしい童子の記憶があるが、北斎は不動と変わらぬ身丈で憤怒の形相で描いている。
下階の展示室へと移動する。
展示室の上部には、正月に相応しいモティーフ、亀、兎、海老、鯉、猪、猿、蝙蝠、牡丹、蛤を描いた凧が飾られていた。室内に展示されている擦物作品は全て素晴らしかった。
2.めでたいシンボル
●めでたい生き物
魚屋の【鶴亀松竹之内 鶴 山辺赤人】の鶴と波、【尚歯会番続 倭姫】の衣装と鶴に、空摺りが見られた。本稿を執筆していて気が付いたが、後者は高野長英や渡辺崋山が所属していたグループの名である。
【鶏合 一番左 猩々】には、蜂と竜、酒樽などが組み合わせて描かれていたようだが、しっかり記録しなかったためどんな作品だったか思い出せない。
【義太夫連中奉納手拭図】は軒に名入りの手拭いが掛けられ、その上につがいの鶏が描かれている。
本日とても魅了された【伝神開手 北斎漫画】、本コーナーに展示されている【十四編 銀鼠】の最終頁には≪富嶽百景≫等の広告が掲載されていた。
【画本彩色通 二編 獅子】のライオンは、ある意味当然なのだが、私が好きな≪日新除魔図≫の獅子に似ていると思った。
●めでたい草木
展示作品には、牡丹、福寿草、梅、桔梗など、日本人に親しまれているモティーフが描かれている。
本コーナーにも【伝神開手 北斎漫画】が展示されていた。この作品のレプリカを欲しいと心底思う。
●めでたいお話
【伝神開手 北斎漫画 十編 家久連里】は、小判や米俵など大好きなモティーフが描かれていて、じっくり見入った。【画本千字文】はお気に入りの北斎作品となった。
魚屋作【振振と美人】は、今回初めて知った振振毬杖(ぶりぶりきっちょう)という遊び道具と美人が描かれている。
●めでたいバラエティー
【新形小紋帳 八ツ手麻の葉 網代組麻の葉】はオリジナルのデザイン集、象形文字のような図柄も見られた。
【占夢南柯後記 六】は私好みのめでたいモティーフが満載で興奮は最高潮、コピーが欲しいと思った。
【川遊びの子供】は本日特に注目した北斎作品の一つ、描かれた子供が愛らしく思わず口元がほころぶ。一人は亀を捕まえている。
【貝合わせ】は貝に空摺りが見られた。
【五十三次江都の往かい 原】にはスケッチをする人物画描かれている。
3.めでたい新年
●新年のならわし
【己未美人合之内 若菜の籠を負う美人】【己未美人合之内 羽子板を持つ美人】【塗師と凧揚げの子ども】は小さめの摺物だが、文句なしに素晴らしい。
●新年の芸能
【新春の舞】や【座敷万歳】など、北斎の素晴らしい展示が続く。【万歳図】には二種類の書体の賛が記されていた。
菱川宗理作【鼡のよめ入り 五 十二枚続 道具】もいい作品だと思った。
二代葛飾戴斗作【画本柳樽 七編】には正月の大道芸が、二代柳川重信作【柳川漫画 初編】には正月の風俗が描かれている。
4.めでたい場所
最終章には、昨年来話題になった【富岡八幡門前】など、江戸の庶民が正月に足を運んだスポットを描いた作品が展示されていた。
ラストは【東都十景 あさくさ】、本展覧会を締めくくるに相応しいと思った。
≪感想≫
2018年のスタートを飾るのに相応しい展覧会だったと感じた。今回は摺物が多数出展されていたが、このジャンルはとても好きなので、自分には嬉しい展覧会だった。
本稿をアップした時点で当館の会員期限は切れているが、近くに刀剣博物館が移転し江戸東京博物館のリニューアルオープンも近いので、次回の展覧会の時に再度登録しようと思う。
この日は展示室内でおみくじを引いた。1階の講座室では双六や漫才などの催しもあったが、この後にも予定を入れていたので少しだけ見て、次の目的地へと向かった。
私は、北斎の絵画がなぜここまで比類なき魅力を感ずるのか作品と文献を観ながら考察してみました。ざっとでも読んでいただけると嬉しいです。ご感想・ご意見などをブログにコメントいただけると大変感謝します。