歴史と、自然と、芸術と


趣味の史跡巡り、美術展鑑賞などで得た感激・思い出を形にして残すために、本ブログを立ち上げました。心に残る過去の旅行記や美術展見学記なども、逐次アップしていきたいと思います。
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皇室の彩(いろどり) 百年前の文化プロジェクト

[副 題] 東京藝術大学創立130年記念特別展


[見学日] 2017年11月17日(金)


[会 場] 東京藝術大学大学美術館

 

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 平成最後の年のスタートは今年最初に行く展覧会にしたかったが、想定外の波乱の年明けとなり、いつになるか予想がつかなくなったため、今年特に注目が集まる皇室ゆかりの展覧会とする。

 表記展覧会はテレビの関連番組で知った。多忙な時期だったが、近年急激に傾倒している帝室技芸員の作品も出展されるというので、ぜひ見ておきたいと思った。

 当日は近くの東博平成館で≪運慶展≫を見た後、途中の珈琲店で小休憩をとり、会場へと向かった。

 東京藝術大学大学美術館で開催された過去の展覧会からは、いずれも並々ならぬ感動を受けている。本日はかなり混雑していて、やっとロッカーを確保した。







第一章  皇室をめぐる文化政策と東京美術学校

 会場内の展示解説に、高村光雲、石川光明、横山大観らが散見、俄然、興奮が高まる。


画帖のような【綵観】は、明治後期の各分野の大家による夢の競演、高村光雲、石川光明、海野勝珉、石川光明、宮川香山(初代)、濤川惣助ら、これまで大きな感銘を受けてきた芸術家が名を連ねている。


【萬歳楽置物】は高村光雲と山崎朝雲の合作、由木尾雪雄大の手による蒔絵と螺鈿の台も華麗で美しかった。


【景雲餘彩】は大正11(1922)年の第九回再興院展へ皇太子(昭和天皇)が行啓した際に献上されたもの、横山大観や下村観山らが揮毫した。個人的に心に残ったのは、最近注目されている小林古径の【栗鼠】のやらかな質感、前田青邨の【鱚】、両名ともまだ30代だった。


【日出処日本】は、富士の画家・横山大観らしい雄壮な大作、父が生まれた昭和15(1940)年に開催された紀元二千六百年奉祝展覧会出品後に昭和天皇に献上された。【秩父霊峰春暁】も迫力満点だった。


【鳳凰之図】(結城素明作)は、頭の中で伊藤若冲の鳳凰と比べつつ鑑賞した。


 本章では、大正4(1915)年頃に、大礼に際して、大正天皇・貞明皇后ご夫妻に献上された、江戸時代の名所図を踏襲したような作品群が強く心に残った。

 東京市在住の15名の画家が分担して描いた【東京市十五区名所図】は、江戸時代の浮世絵と各地の現在の景観とを記憶の中で比べつつ、自身の居住地も含めて念入りに見入った。鏑木清方や【大政奉還】を描いた邨田丹陵らが名を連ねている。

 【東京市名所図扇面(図巻)】 はタイトルのとおり扇型、こちらも絵師の個性が光る逸品、作者の中では板谷波山の名に記憶がある。

 【東京名勝図・萬歳楽図衝立】は、表面の中央に当時の東京市の地図を配し、それを囲むように十五面の扇面名勝図を嵌入している。裏面には萬歳楽の舞姿が刺繍されている。表面は桐柾目地、裏面は金色の綴織地、当時最高の素材が使われたのだろう。名勝図の技法は、象嵌、磁器、木彫、牙彫、七宝など多彩、各々の個性が輝く素晴らしい作品である。双眼鏡を使ってじっくりと鑑賞した。全て素晴らしいが、シックな螺鈿で東京駅が描かれた【神田区 神田須田町】、彫漆が格調高い【麹町区 宮城二重橋】、ブルーの磁器が美しい【芝区 芝浦】などが、特に気に入った。もちろん、裏面の刺繍も大変素晴らしかった。



第二章  大正十三年、皇太子御成婚奉祝

 タイトルのとおり、本章の展示は大正十三(1924)年の皇太子(後の昭和天皇)御成婚を祝う品々、作者の中に有名な芸術家のほかに自分は知らない人もいたが、大変見応えがあった。


 本章の、そして本展覧会の目玉は、何といっても、昭和3(1928)年に昭和天皇御夫妻に献上された【御飾棚 鳳凰菊文様蒔絵】と【御飾棚 鶴桐文様蒔絵】、格調と気品、技術の結晶、最高峰の要素の凝縮、文字通り、表現すべき言葉が見当たらない。この棚を飾った【彫金花瓶 鶴】なども展示されていた。

 今回、この名品をこの目で間近に見ることができた感激は計り知れない。


【瑞彩】は御成婚奉祝のために東京府から献上された画帖、当代の画壇の縮図ともいえる夢の美の競演、これだけの面々が集結できるのは本当にすごい。私が好きな上村松園も名を連ねている。

【現代風俗絵巻】は、作者の中で知っているのは小村雪岱だけだった。タイトルのとおり、大正から昭和へと移りゆく時代の風俗を写し取ろうと試みられている。


【二曲御屏風 腰彫菊花文様】は、【御飾棚】とともに、昭和天皇ご夫妻に二曲一双ずつ献上されたもの、こちらも文字通り、当時の第一線の芸術家の輝きの凝縮、興奮で胸が騒いだ。全て素晴らしく気に入ったが、格調高い漆黒の【螺鈿扇面:山水】が特に心に残った。富樫光成の堆朱扇面【花籠】などは、現代は再現不可能だという。 



鑑賞の合間に、1階で放映されていた特集映像『皇室 奇跡の秘宝 ~日本美の最高峰をもとめて~ 』を見た。関東大震災で昭和天皇の成婚は延期され、記念事業の多くが中断、若き良子女王(香淳皇后)が慈善物資を作る姿を写した写真も紹介された。一時はプロジェクトの中止も検討されたようだが、多くの関係者の尽力により本日の展示作品は完成にこぎつけた。

幸いにも戦災を免れ、平成の終わりを生きる我々に感動を与えてくれている。香淳皇后は【御飾棚 鶴桐文様蒔絵】を愛され、傍らに立たれた写真も紹介されていた。



再び展示室に戻り、番組で紹介されていた見どころを中心に再び【御飾棚 鳳凰菊文様蒔絵】を鑑賞した。

他の気に入った展示も、時間の許す限り何度も見直した。



≪感想≫

 今回の展覧会は文字通り、当時の一流芸術館の輝きの凝縮、鑑賞できた感激は並大抵ではなかった。

 毎度のことながら、どんなに見ても見飽きることがなく、このまま、いつまでも見ていたいと心底感じた。閉館時刻になり館を出る時は名残惜しくてならなかった。

 帝室技芸員を知って以来感じていること、「皇室は日本文化の育成と継承には大きく貢献している。」という思いを新たにした。間もなく新天皇が即位されるが、この機会にも後世に残る名品が誕生することを願っている。

 なお、見学中に半券を落としてしまった。自分にとっては記念になる貴重なものなので残念でならない。

 数日後の夕刻に再度この近くに来る機会があり、関連番組だけでも見られたらと思ったが、タッチの差で閉館してしまい果たせなかった。

 最近の展覧会では必ずといっていいほど館内で関連映像の放映があるが、図録と同様に会期終了後も鑑賞できる途を検討してほしい。


by nene_rui-morana | 2019-01-05 15:31 | 展覧会・美術展(日本編) | Comments(0)
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