春画展 第1期

[副 題] 世界が、先に驚いた。


[会 期] 2015年9月19日(土)~12月23日(水・祝)


[会 場] 永青文庫



 2013年から14年に大英博物館で開催された『春画展』が大きな反響を呼んだことを、美術関係雑誌で知った。その後に参加した2014年度の浮世絵学会で、国内でも開催の運びとなりつつあるとの情報を得る。

春画の芸術的価値は近年高まりつつある。最近の展覧会でも河鍋暁斎などが描いた春画が出展されていた。

 注目を浴びていた展覧会であることと、次回いつ実現するか分からないという理由により、足を運ぶことにした。都内での春画展見学は東洋文庫に次いで二度目となる。

 会場の永青文庫は、道中が坂なのに加えて4階建てなので、高齢者やハンディのある方には少々難儀かもしれない。チケット買いの行列も会場内も、かなり混雑し、係員に抗議する高齢男性の姿も見られた。





プロローグ

 4階に移動し、最初に目に入ったのは【あぶな絵 源氏物語】(溪斎英泉筆)、本展覧会は4期に分かれていて、本章の展示は4点ほどだった。



Ⅰ.肉筆の名品

 入口近くのケースに展示されていたのは【天癸両濫】(白澤庵所蔵)、作者は狩野彰信(章信)、当然ながら御用絵師も春画を描いていた史実を認識した。

関連年表には、そうそうたる顔ぶれが並ぶ。あらためて述べるまでもないが、春画は役者絵や風景画と並ぶ浮世絵のジャンルであり、今日に名を残す絵師は全て手掛けている。庶民にも自然に受け入れられていたし、大名や高貴な身分の人の中にも熱心なコレクターがいたという。ただし、従来の美術全集などにはあまり掲載されてこなかった。

【金瓶梅】は豪華でカラフル、これまで見た我が歌川国貞作品の中では最上質の一品だと思う。よほどの上客からの注文品だろう。

 【好色十二図】は過去の展覧会で役者絵の記憶がある歌川国政作、蚊帳の表現に注目した。

 【耽溺図断簡】(絵師不詳、ミカエル・フォーニッツコレクション)は、生々しくリアル、女性のお歯黒が印象的だった。



Ⅱ.版画の傑作

 3階へと移動する。

 【和合同塵】(菱川師宣筆、東洋文庫所蔵)以降は、漫画のような作品が続く。毎度のことながら、詞書が読めないのが残念でならない。

 鳥居清信、鈴木春信、勝川春章、等々、名だたる名絵師の作品が次々と登場する。

 鳥居清長作品は【袖の巻】(東洋文庫所蔵)が出展されていた。

喜多川歌麿作品は、国際日本文化研究センターが所蔵する【絵本笑上戸】【ねがひの糸口】などの他、【歌まくら】がケースに展示されていた。

 海女と蛸の濡れ場を描いた葛飾北斎の【喜能会之故真通】は「世界一有名な春画」として本展覧会を特集した雑誌やテレビ番組などでも紹介されていた。草子で想像よりも小さかった。女性の恍惚とした表情や乱れた髪の表現などに北斎の真髄が遺憾なく発揮されている。「美人画に関しては自分より上」と評した娘の応為も、未だ見たことはないが春画を手掛けているという。

 本コーナーにも我が国貞の【四季の詠】や、歌川国芳の【華古与見】(国際日本文化研究センター所蔵)などが展示されていた。

【女大楽宝開】(月岡雪鼎筆)は、並んで展示されている【女大学宝箱】のパロディー、交合図ももじってある。くずし字が読めないのが本当に悔しい。

 2階に入った所のケースに展示されていた【閏花鳥襷】(北尾重政筆、東洋文庫所蔵)と【袖の巻】(鳥居清長筆、国際日本文化研究センター所蔵)は、以前に他所で見たかもしれない。

 きめ出し・空摺り・正面摺りなどの技法が駆使された国貞の【花鳥餘情 吾妻展示】と英泉の【古能手佳史話】は、共に国際日本文化研究センター所蔵である。

【絵本 開中鏡】も同様、作者は国貞の師匠の歌川豊国、若い男性と骸骨との交合を描いた作品で、かなりヒットしたらしい。後日他所で調べたが、かの『牡丹灯籠』をモティーフに描かれたらしく、豊国作品らしく男性の容貌も役者風である。

 他の国貞作品は、【正寫相生源氏】(国際日本文化研究センター所蔵)、東洋文庫が所蔵するこの作品の袋(包紙貼込帖のうち)も展示されており、時間が経過して記憶が定かでなくなったが雀が鳥かごから飛び立つデザインがされていたように思う。



Ⅲ.豆判の世界

 【豆判絵暦 名松合】【豆判絵暦 絵巻物百美人】は、当日のメモに「背景の格子や紺地・将棋」との記載に続いて「小さくて、老眼にはよく分からず残念だった。」と記してある。自分にとって絵暦は関心をそそられるジャンルなので、じっくり見たかったけれど判別が難しかったのだろう。



エビローグ

当館が所蔵する国貞の【艶紫娯拾餘帖】は本展覧会のラストを飾るに相応しい雲母摺の豪華な逸品、タイトルで想像されるように柳亭種彦の『偐紫田舎源氏』がベース、頁によっては通常展示も可能だろう。後日、再会が叶うことを願っている。

 大名家伝来の春画も残っているという。格式ある家の若君・姫君は結婚して子どもを生むことが最大の義務だったので、彼らの性教育のために発注?されたものもあるように思った。

≪感想≫

 評判の展覧会だけあり、さほど広くない館内は混雑していた。中年以降の男性が多く、「これはモデルを見ながら描いたのかな?」などとの会話も聞こえたが、女性もかなりいた。

 自分には未だ知識がなかったが、本展覧会には貴重な作品が数多く出展されていて、足を運ぶ機会を得られたのは幸運だったと思う。今後は更に、春画を展示する機会は増えるだろう。我が国貞にはこのジャンルでも名品が多いので、これらを鑑賞する日が訪れることを願っている。

 見学を終えた後は、ショップに立ち寄った。自分は買物はしなかったが、こちらもかなり賑わっていた。本展覧会の立派な装丁も図録も展示されていた。購入はしなかったが、北斎は有名な『北斎漫画』に似た形式で男性と女性のシンボルを描いた作品も残していたことを知った。

 まだ春画の精髄を感じるまでには至っていないが、江戸時代は性に関してはおおらかで今日ほど卑猥にはとらえられていなかったことは感じられた。


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by nene_rui-morana | 2017-07-30 22:11 | 展覧会・美術展(日本編) | Comments(0)

趣味の史跡巡り、美術展鑑賞などで得た感激・思い出を形にして残すために、本ブログを立ち上げました。心に残る過去の旅行記や美術展見学記なども、逐次アップしていきたいと思います。


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