2017年 07月 18日
画鬼・暁斎 後期
[副 題] 幕末明治のスター絵師と弟子コンドル
[見学日] 2015年9月4日(金)
[会 場] 三菱一号館美術館
前後期で展示替えがあり表記展覧会、告知された時点で迷うことなく2度足を運ぶことを決心した。
前回感銘を受けた作品、新たな展示、夢の暁斎ワールドを夢中で満喫した。
Ⅰ.暁斎とコンドルの出会い-第二回内国勧業博覧会-
スタートの【東京名所之内 上野山内一覧之図】は、前期とタイトルも所蔵も同じだが別物らしい。
コンドルの【上野博物館遠景之図】(東京国立博物館所蔵)は後期のみの出展、暁斎に師事する前か直後の頃の作品だと思うが、水彩画の優れた才能が遺憾なく発揮されている。
Ⅱ.コンドル-近代建築の父
【丸ノ内第壱号館建築平面図 一階平面図】(三菱地所株式会社所蔵)以下のコンドル建築の図面は、ジャンルは違うがこの直前に江戸城の展覧会で城の図面等を見たので、記憶をもとに頭の中で見比べた。
Ⅲ.コンドルの日本研究
母国にいた頃から日本に関心を寄せていたと思われるコンドルは、来日後にかのアーネスト・サトウも所属していた「日本研究会」に入会、多方面に研究・発表を行った。著作も多い。
本章にはコンドルの作品や著作が展示されているが、【スケッチブック】(東京大学所蔵)が特に心に残った。
Ⅳ.暁斎とコンドルの交流
コンドルは師匠・暁斎に関する貴重な記録を残したが、【Kiyosai Sensei.at Nikko.Augst 5th】もその一つ、自分は数年前に岩波文庫『河鍋暁斎』を購入した。
本コーナーの暁斎作品は全て素晴らしい。
【鯉魚遊泳図】の精緻な描写に驚嘆させられた。大好きな【暁斎絵日記】(河鍋美術館および東京藝術大学所蔵)と【暁斎画談 内篇・外篇】の前には多くの人垣が出来ていた。前期分に記載したとおり、現物を目にして実際の大きさ等が分かり、本当に嬉しかった。近年は『北斎漫画』が発刊当時の装丁で復刻されたりしているが、この作品もぜひ実物大のレプリカを刊行してほしいと感じる。
Ⅴ.暁斎の画業
本コーナーの作品は念入りに仕上げられた秀作揃い、前期にも増して熱心に鑑賞した。
※展示や見た順番を正確に覚えていないので、併せて記します。
1. 英国人が愛した暁斎作品
2. 道釈人物図
【牛と牧童図】は好きなテーマである。【蜥蜴と兎図】【蛙を捕える猫図】【栗と栗鼠図】【鹿に猿図】の毛の質感の表現に息を呑んだ。下絵の表現も素晴らしい。
【ぶらさがる猿図】【小禽を捕える鷲図】には、若き日に短期間だが師事した歌川国芳の作品と相通じるものを自分は感じた。
鮮やかな【毘沙門天図】は、多分注文品だろう。以前に書籍等で見たような気がする。対する軽妙なタッチの【布袋の蝉採り図】のようなモノクロ作品も、自分は好きである。
コーナーの一室に、後述の【惶々暁斎画帖】の巨大サイズ版をバックに撮影できるコーナーが設けられていた。手前の人物よりも猫の方が人間的な表情で描かれている。
3. 幽霊・妖怪図
4. 芸術・演劇
【鳥獣戯画 猫又と狸】の猫は本展覧会のチラシに用いられている。個人的には【九尾の狐図屏風】に注目した。
先述のとおり、暁斎が芸能分野にも造詣が深かったことは本展覧会で初めて知ったので、【三番叟図】【狂言 瓜盗人図扇面】【子供助六の股くぐり図扇子】などは心に残った。【月次風俗図 十一月 顔見世狂言「暫」】には、黒子や後見も描かれている。
5. 動物図
6. 山水図
7. 風俗・戯画
【柿に鴉図】は柿の朱色が印象的だった。
【書画展覧余興之図】には当時このイベントの寵児だった暁斎ならではの作品、多くの人物から飾られた書画まで、実に見応えがある。
賑やかな宴の様子を伝える描いた色鮮やかな【吉原遊宴図】は、人物の表情や衣装・襖(屏風?)の絵まで、丁寧に描き込まれている。
【花に文鳥図団扇】は輸出用に描かれたとも言われる。
8. 春画
今後はこのジャンルを展示する展覧会も増えると思うが、他の分野に比べるとまだまだ鑑賞できる場も関連書も少ないので、貴重な機会と思い、よく見ておいた。
9. 美人画
暁斎の美人画は、本展覧会のフィナーレを飾るのに相応しく、上品で実に美しい。
3作品が展示されていた【惶々暁斎画帖】は浮世絵を踏襲した作品、巨大な猫とそれに驚く人物を描いた最後の作品は、先述のフォトコーナーで拡大展示されても全く遜色がない。
★エピローグ
鑑賞から記事アップまで多くの時間が経過し、細部の記憶も定かでなくなった部分が多いため、購入した図録の他、地元の図書館で暁斎関連の書籍を借りて少し勉強し直した。これにより、新たな発見や出会いもあった。
『芸術清朝2015年7月号』、『美術手帖2015年7月号』、『反骨の画家 河鍋暁斎』(新潮社)などは、参考になった内容も多く、また楽しく読むことができた。
≪感想≫
エピローグに記したとおり、記事アップまでにはずいぶん時間がかかってしまった。この間、生涯後悔するであろう過酷な経験をした。後戻りはできず、この先数年かけて解決しなければならない現実を抱えているが、そんな中にあって本展覧会で出会った暁斎作品は大きな支えとなっている。
暁斎の大ファンである自分には、本当に心躍る嬉しい展覧会だった。コンドルと彼の作品に触れられたのも有意義だった。
図録の他に、販売数限定の『暁斎画談』を入手できたのも感激だった。本書には、幼少期に師事していた国芳工房の様子を描いた画が挿入されている。
愛してやまない暁斎、再び展覧会でその作品に会える日が来ることを心より願っている。
コメントありがとうございました。少しでもお役に立てた内容があったなら幸いです。今後もよろしくお願いします。