趣味の史跡巡り、美術展鑑賞などで得た感激・思い出を形にして残すために、本ブログを立ち上げました。心に残る過去の旅行記や美術展見学記なども、逐次アップしていきたいと思います。
by nene_rui-morana
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没後100年 五姓田義松-最後の天才-  後期

10月29日に見た表記展覧会・前期の感動は並々ならぬものがあったが、多忙の折、二度足を運ぶつもりはなかった。しかし展示を見てから、これも当初予定になかった図録を購入しようという気持ちになり、閉館直前に展示室を出てミュージアムショップに足を運ぶと、まさかの売り切れ、「現在増刷中で11月6日から館内発売のみ再開し、なくなり次第終了、郵送販売等は行わない。」とのことだった。超過密スケジュールが続く中、一時は断念したが、類書の少ない五姓田義松作品収録書はどうしても入手したく、サービス残業や休日出勤を繰り返して6日の金曜日に何とか時間を確保した。

 多忙の影響か当日は体調が思わしくなく、特に持病の腰痛の症状が出ていて、やや長い往路の電車移動はかなり苦しかった。


 地下鉄駅から地上に出ると、見学を終えたとおぼしき人が図録を手にして歩いて来るのが目に入る。慌てて、やや小走りに会場に入ると既に長蛇の列、係員の方の「現在並んでいただいている方は全員購入していただけます。」との言葉にやや安心しつつも、この手にするまでの30分近い時間が長く感じられた。

 大願成就?後、館内のレストランでやや遅い昼食をとり、ロッカーに荷物を預けて、見学を開始した。



展示室に入ってすぐの場所には、浅草や向島など、東京の景観を描いた作品が展示されていた。神社境内の石碑に刻まれた文字までも綿密にえがいている。義松は一時期、浅草で暮らし、対岸の墨田区・白鬚神社界隈に私塾を開いていた。

義松にとって本展覧会が開催された横浜はいわば御当地、風景画もより味わいがあるように感じた。


今回も前期と同様、多彩な義松ワールドに心酔しながら夢中で見ていった。人物、静物、動物、植物、風景、家の中、その他あらゆる事物を網羅している。

 また義松は、カメラマンのように、自身が生きその目で見た時代を切り取って作品に描いた。自分は同時代のベアトや蓮杖の写真と相通じるものを感じた。【潮干狩】などの作品には 写真の影響があるように思った。

 図録には掲載されていなかったようだが、【出征ノ際 其母病気危篤】と題された作品は心に残った。自分の世代は家永三郎先生の教科書裁判の記憶があるが、それと共通するものを感じた。


 『齋藤利吉氏旧蔵作品群』中の【風景】は横長の用紙を浮世絵のように2枚続きにして描かれていた。


 技法の面でも義松は多彩で、それぞれに味わいがある。全て気に入ったが、好きなジャンルである素描類から受けた感銘は格別だった。ラフな作品には画家の個性がより強く表れる。

 一方で、「宮廷画家」として取り組んだ作品は、さすがに見応えがあった。【御物 明治十一年北陸東海御巡幸図】中の山野や田園を描いた作品は、風でざわめく草や雲の質感、遠近感など非常にリアルで、見ていると引き込まれるような気がする。

 【浜離宮】は、整然と表現された建物が絹地と見事に調和している。


 帰国後の義松の活動はそれまでの華やかさとは一変して地味になっていき、世の注目も集めなくなる。ひっそりと世を去った後は長らく、その名が語られることはなかった。今回の展示作品の中に宮内庁所有の【御物】複数があるのを見て、変な言い方だが一種の安堵感を覚えた。御物に指定されたからこそ、時代の一線から退いた後もその作品と名前は残り、今日の再評価につながったのだと思う。


 当館が所蔵する『五姓田義松旧蔵作品群』は、義松の真骨頂が堪能できる素晴らしいコレクションである。膨大な作品群にはあらゆるモティーフと画法が網羅され、見ていて胸が高まる。ただし残念ながら、会場で最も心に残った作品は図録に収められていなかったため、タイトルもどんな絵だったかも思い出すことができない。

幸い【松】は収録されていて、当日の感動を思い起こすことができた。


ラスト近くの似顔絵類は、マンガチックで楽しかった。明治10年に描かれた油彩の【自画像】は、本展覧会のフィナーレを飾るに相応しい逸品である。



f0148563_15004010.jpg 今回の展覧会で五姓田義松という絵師の一生に触れて、現代に生きる自分は、若くして華やかなトップアイドル等の地位に上りつめながら、その後世間の話題にあがらなくなった芸能人を連想した。最近は「あの人は今?」のようなタイトルで、かつて人気を博した芸能人のその後と現在を伝えるテレビ番組がよく放映されている。一時はテレビのレギュラー出演やCMなどの露出がひっきりなしだった芸能人が、我が家の近くの公民館や温泉施設に来るという広告も時々目にする。

時代の一線に返り咲くことはなくとも、義松の力量が衰えることはなく若き日の栄光によりもたらされたプライドも失っていなかったことを、【浅田夫妻像】は伝えている。

 本展覧会により義松は、自分の中で俄然注目に値する画家へと上りつめた。幸運にも入手することができた図録をしっかり読み直し、今後は彼のことをしっかり勉強していこうと思う。

 芸術家の中には何百年もの間忘れられ、近年再評価されている人も少なくない。義松は間違いなく、近代日本を代表する天才絵師である。本展覧会が、同時代を生き同じ年に没した小林清親や、後輩の黒田清輝と同等の注目・評価を受けるきっかけとなることを切望してやまない。


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by nene_rui-morana | 2016-02-20 15:30 | 展覧会・美術展(日本編) | Comments(1)
Commented at 2017-04-02 22:00 x
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