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国宝 曜変天目と日本の美 前期 2

下階へと移動する。

 

◆天下の趣味人

【大江山酒呑童子絵巻】は、生き生きとした描写に魅せられた。

 正面の【大獅子図】は一目で竹内栖鳳作と分かる『動物の肖像画』、藤田は同時代の芸術に対する着眼も確かだった。

 円山応挙の【蔦鴨図】も展示されていた。

この後は舞台衣装の展示が続く。これまでに小袖や能装束などの服飾作品は多数見てきたが、今回ほど心躍ったことはない。【紺地格子虫尽長絹】は、透ける大きな格子柄が虫篭のよう、金糸で秋の虫が刺繍され、繊細で上品な素晴らしい衣装だった。【緑地唐草萩菊牡丹文舞衣】は緑地の絽に金色で文様が織り込んであった。


 歩みを進めると、藤田美術館付近の地図のパネルが展示されていた。大阪城に近く、この近くを訪れた時のことが懐かしく思い出された。



第4章 茶道具収集への情熱

 いよいよ、待望の国宝【曜変天目茶碗】と感激の対面となる。小さい作品だが、神秘的な瑠璃色の輝きは見る者を魅了する。私はオパールという宝石が好きだが、それに相通じるものがあるように感じた。この茶碗は外側にも曜変が見られる。

 尾形光琳・乾山兄弟のコラボ作品【銹絵絵替角皿】(重文)も私が好きな作品、複数の他所で見ているがここでも対面できて大感激した。

 【瑞瑞山水人物文反鉢】は変わった形だが、美しい青が爽やか、絵も見事だった。

 【鴨形香合】は野々村仁青には珍しい黒や紺・茶などシックな色合いの作品だった。

茶入は最近特に関心を寄せている。小さいが味わいある造形には心底魅了される。【唐物肩衝茶入 銘 蘆庵】(展示は上階の展示室)や【唐物茶入 銘 野中】【田村文琳茶入】【古瀬戸文琳茶入 銘 霜夜】【田村文琳茶入】など、今回展示されている全てが素晴らしかった。

【絵高麗壷形共蓋水差】はユニークな絵柄が楽しかった。

 【砧青磁双魚小鉢】は実に美しく格調高い逸品、上海など外国の博物館で見た同系列の作品が懐かしい。

 【万暦染付双龍唐草文蓋物】は景徳鎮の官窯で制作された作品、五つ爪の龍が見られる。

 フィナーレを飾る【交趾大亀香合】は、傳三郎が最晩年に九万円で入手した当館コレクションの筆頭、現在の貨幣価値はその一万倍あるという。



≪感想≫

 当日はかなり混雑しており、日頃の多忙もあって少々疲労感を覚えたので、ベンチでしばしまどろみ、閉館近いすいた時間にゆっくり見直した。

 本展覧会の内容は予想以上に素晴らしく、興奮と感動もひとしおではなかった。鑑賞中には作品を見ながら過去の展覧会を思い起こし、本稿執筆にあわせて手元のいろいろな図録や過去に放映された藤田美術館特集テレビ番組を見直して、あらためて藤田傳三郎の芸術に対する造詣の深さに感服させられた。不遜な言い方だが、傳三郎氏と自分とは美術の好みが合うようで、展示作品ことごとく気に入り、更に今回は能装束など新たなジャンルも開眼した。

 世界に3点しか残っていない曜変天目のうち2点をこの目で見ることが出来て本当に嬉しい。残る京都・龍光院所蔵品は1990年に上野で開催された『国宝展』で見ている可能性があるが、もとより当時の自分には日本史の教科書に掲載されている以外の美術作品の魅力が分かるわけはなく、記憶には残っていない。

 大阪には何度か足を運び、大阪城にも行ったが、その近くにある藤田美術館は未だ訪れたことはない。次回いつ大阪に行かれるのか、その見通しもつかないが、実現した暁はぜひ藤田美術館にも足を運びたいと思う。欲張りを言えば、あわせて龍光院の曜変天目も見たいと思っている。

 父が入院して以来、慌ただしい日々が続き、静嘉堂文庫で曜変天目を見た時期も正確に覚えてはいなかった。身辺も相変わらず落ち着かないが、可能な限り美術展には足を運び、滞るばかりの記事アップにも少しずつ取り組んでいきたい。


by nene_rui-morana | 2016-02-14 11:23 | 展覧会・美術展(日本編) | Comments(0)

趣味の史跡巡り、美術展鑑賞などで得た感激・思い出を形にして残すために、本ブログを立ち上げました。心に残る過去の旅行記や美術展見学記なども、逐次アップしていきたいと思います。

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