浮世絵師たちの聖地すみだ

 昨年の秋口以降、「たばこと塩の博物館」の谷田有史主任学芸員の講演会『川柳で読み解く江戸名所』の記事に多くのアクセスをいただいた。

 この講演を聴講した直後、所用で墨田区役所に出向いた時、1Fのリバーサイドホールで表記パネル展が開催されていた。自分にとっては非常に興味深く、意義のある内容で、谷田氏の講演会でも触れられた内容と重なる部分も多く、大変嬉しかった。


 周知のように墨田区は、浮世絵界最大の巨匠の一人・葛飾北斎の生地にして生涯の多くを過ごした地、点在する観光スポットは多くの浮世絵に描かれている。かつては所縁の碑なども多数あったと思われるが、墨田は関東大震災と東京大空襲で甚大な被害を受けており、残念ながら完全な形で残っているものはほとんどない。それでも今回は、浮世絵作品とあわせて残された碑の写真や拓本なども紹介され、見応えがあった。紹介された場所の中には過去に訪れた所もあり、記憶を辿りながら見ていった。



 展示はおおむね、下記の3章に分類されていた。


●歌川派育ての親 豊国

 最初に登場したのは歌川豊国、プロフィールがかなり詳しく解説されていた。追悼絵【豊国肖像】を描いたのは筆頭弟子にして後にその名を襲名した我が歌川国貞(署名は五渡亭国貞)、写真であっても国貞作品を見られた喜びは並ではなかった。

 更に嬉しかったのは、北斎も厚く信仰した「柳嶋妙見」こと法性寺に残る記念碑のかつての完全の姿を写した写真が展示されていたこと、この碑は豊国の三回忌に90名の弟子(この人数にも感嘆させられる)が建立し元に遺筆を埋めたと言われているが、関東大震災で大きく破損してしまった。国貞のファンになって間もない頃に現地を訪れたが、今回、被災前の完全な碑の写真と碑文の解説を見ることが出来て、大変嬉しかった。


●北斎を慕った 国芳

 今や絶大な人気を誇る歌川国芳については、多くの方が様々な文章をアップしているので、あらためて述べるまでもないだろう。

 紹介されていた区内三囲神社の【一勇斎歌川先生墓表(国芳顕彰碑)】(碑の裏には月岡芳年の名もみられる)は、自分も参拝した時に見た。多くの浮世絵に登場する三囲神社の鳥居については、谷田氏の講演会でも説明があった。


●北斎の兄弟子 春英

 最近の浮世絵の展覧会で多くの作品に触れて、勝川派もなかなかいいなと感じている。

桜餅で有名な区内長命寺境内には、【歌川春英翁略傳之碑】がある。谷田氏の講演で紹介されていた松尾芭蕉の句碑「いざさらば雪見にころぶところまで」も同寺の境内にある。

谷田氏の講演会で紹介された勝川春章の【東扇 中村仲蔵】が紹介されていたのも嬉しかった。



 上記以外でも、向島百花園の【月岡芳年翁之碑】、北斎も描いた法泉寺の窪俊満【故郷の】の歌碑、【歌川豊広辞世狂歌碑】などが、パネルで紹介されていた。江戸時代に浮世絵師にとって墨田が特別な場所であったことが体感できたように思う。

今回の展示に関するパンフレットをいただけた。石碑のなかには路地裏の一角に残されているようなものもあるが、ぜひ全てをこの目で見たいと思う。


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by nene_rui-morana | 2016-01-19 10:50 | 東京スカイツリーの町から | Comments(0)

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