趣味の史跡巡り、美術展鑑賞などで得た感激・思い出を形にして残すために、本ブログを立ち上げました。心に残る過去の旅行記や美術展見学記なども、逐次アップしていきたいと思います。
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蔵王権現と修験の秘宝

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[見学日] 2015年10月23日(金)

[会 場] 三井記念美術館


 秋口に入り、身辺の慌ただしさが増す折、表記展覧会については見学する予定はなかった。

 しかし、たまたま見たテレビ特番がとても良く、高校時代に当時所属していた史学部の夏合宿で一度だけ訪れた吉野のことも懐かしく思い出され、行ってみようかという気持ちになった。

当日は現地に到着した後、金券ショップで別の展覧会のチケットを購入し、COREDO内のレストランで昼食、昼休み時間帯で混雑しており、お目当ての店には入れなかった。



 修験道は、役行者が始めたとされる日本独自の山岳信仰、仏教や道教などと融合して独自の発展をとげてきた。

 本展覧会のメインとなっている奈良県の吉野は修験道の根本聖地で、主尊・蔵王権現像の他、多くの秘宝が伝わっている。

 吉野はまた、日本歴史上著名な人物が深く関わった地でもある。古くは天武天皇・持統天皇夫妻、平安朝以降は藤原道長など多くのVIPが信仰のため当地を訪れて経典等を納めた。国立公園の名そのままに、吉野・熊野への参詣は院政期の皇族・貴族の大きなレジャーだった感がある。自分が吉野を訪れたのは、その年の部の研究テーマが鎌倉幕府滅亡で後醍醐天皇ゆかりの地をめぐったことによる。源義経と静御前の悲恋は後に歌舞伎の演目にもなった。





●展示室1・2・3

 スタートは大阪市立美術館所蔵の【蔵王権現像】(重美)、その後も、右手右足をあげ左手は剣印を結ぶ蔵王権現像の展示が続く。中には重文もあった。どれも憤怒の表情をしているが、大峯山寺所蔵の像(重文)はユーモラスだった。

 歩みを進めると、馨や五鈷杵・懸仏などが目に入る。

 【経典・脚台付】(国宝)は、経年劣化はあるものの往年の輝きがうかがえる。

 展示室2からは、金峯山寺からの出展作品が続く。ここは合宿の時に立ち寄っている。

 【双鳥宝相華文経箱】(国宝)は、藤原道長の時代まで遡るという。平安時代の多くの公卿が金峯山寺に参詣して経典等を埋納したが、彼らの日記と照合する研究がなされているようである。


 六田知弘氏の写真展【大峯奥駈】は、荘厳で厳粛な雰囲気をモノクロームで伝えていた。



●展示室4

 吉野の金峯山寺所蔵品の展示が続く。高校の合宿の記憶はかなり曖昧になっており、現在とは変わっている部分も現地では見ていない作品も多いと思う。それでも必死で思い出しながら、それなりに懐かしく鑑賞した。

 やや前傾姿勢の【蔵王権現像】は今回展示の中でも出色の逸品、品格があり躍動感にあふれ、衣装やアクセサリー・小道具などもキマっていた。

 人間味あふれる【役行者坐像】と、ユーモラスな【前鬼像・後鬼像】は、見ていて心和んだ。後者は興福寺の【天灯鬼像】【竜灯鬼像】に似ているように思った。慶派は奈良仏師だから、可能性は否定できないと思う。

 高野山展や最近人気の熊野古道関係のテレビ番組で≪曼荼羅≫には関心を寄せているので、【吉野曼荼羅図】には注目した。

 この室には彫像作品を数多く展示、中には私が好きな慶派の作品もあった。

 やはり合宿で訪問した如意輪寺からは、【阿弥陀如来立像】が出展されていた。

 合宿では櫻御坊は訪れなかった。【大峯八大童子像】は小さく愛嬌があり、雛人形のようだった。



●展示室5

 このコーナーには、鏡像や懸仏などか展示されていた。識別はしにくかったが、多様な造形を楽しんだ。

 吉野水分神社の釣燈篭は慶長9(1604)年の作、年表を見たらこの年に黒田如水が亡くなっている。寄進者・豊臣秀頼や施工した大工の名などの刻銘があるが、読めなかった。

 金峯山寺所蔵の【笈】(重文)の読み方を、松尾芭蕉の著作から知ったのは自分だけではないだろう。花鳥文の線刻や透かし彫りが見事だった。

 蔵王権現や多くの眷属が多彩に線刻された【蔵王権現鏡像】(總持寺所蔵)は国宝に相応しいオーラを放つ逸品、制作は長保(1001)年、前年に娘・彰子が一条天皇の中宮になり、藤原道長が絶頂への階段を駆けあがっていた頃である。見事な構図と線・線刻の技術に脱帽、三鈷を持つ蔵王権現の装飾や表情は実に素晴らしく、今回特に大きな感動を受けた私好みの作品だった。この作品は東京国立博物館に寄託されているので、以前に同館を訪れた時にインパクトを受けた作品と同一かもしれない。信貴山でも同じような見事な作品を見た記憶がある。ぜひ拓本がほしい。この作品は廃仏毀釈の時に金属供出のために売り出された中から掘り起こされたとテレビ番組が伝えていた。救われたことを喜ぶ反面、多くの至宝がその時代に失われたであろうことを残念に思う。



●展示室6・7

 このコーナーの中心は、鳥取県にある三徳山三佛寺からの出展、鳥取県には未だ足を踏み入れたことがなく、今後もいつ行かれるか分からない。特に「日本一危険な国宝」ともいわれる崖上の≪投入堂≫には絶対に行かれないので、この展示は自分にとっては貴重なものとなった。

 複数の【蔵王権現像】は、頭部正面等に髑髏や三鈷の装飾があるもの、三鈷を持つもの、等々、造形も様々、唯一左手左足を上げる重文もあった。

 【僧形坐像】は像底の墨書から、行明という僧侶の肖像であることが分かる。

 【鸚鵡文銅鏡】(重文)は、観音や菩薩を線刻し、背面には鸚鵡の装飾、正倉院宝物の中に同様のものを見た記憶がある。


≪感想≫

 例によってひと通り見た後、最初に戻って、気に入った作品や、特に蔵王権現像の造形の違いを見直した。

 先述のとおり、本展覧会には当初は足を運ぶつもりはなかったのだが、修験道に関していろいろ学び、蔵王権現など多くの秘宝に触れ、自分にとっては非常に有意義なものになったと感じている。前期にも国宝級の展示があり残念だったが、至宝の数々を見ることが出来て嬉しかった。また、忘れかけていた高校時代の合宿のことも久々に思い出すことができた。

 自分が足を運ぶ日本の展覧会は、従来は仏教関係と近世以降は絵画が圧倒的だったが、近年は神社関係でも心に残るものに何回も遭遇した。今回それに修験道が加わった。

 今後はこの分野もマイペースで勉強をすすめ、次回の展覧会に備えると共に、いつの日か吉野や熊野を訪れる夢を持ち続けていきたい。


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by nene_rui-morana | 2015-11-02 21:09 | 展覧会・美術展(日本編) | Comments(0)
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