燕子花と紅白梅 光琳デザインの秘密

[副 題] 尾形光琳300年忌記念特別展

[見学日] 2015年5月6日(水)

[会 場] 根津美術館


 表記展覧会については確かな情報も得ておらず、実は足を運ぶ予定はなかった。当日、練馬で開催されていた小林清親の展覧会を見に現地に向かう道中、表参道を通ることになり、時間もあるし見て行こうと途中下車した次第である。
 連休中ということもあり、なかなか混雑していた。
 館内に入り、かろうじてロッカーを確保した後、まずは庭園で見事な燕子花を見てから見学を開始した。


第一章燕子花図と紅白梅図-「模様」の屏風の系譜
 先述のように、会場に到着するまで本特別展の内容は知らなかった。だから、タイトルを見て「もしかしたら【紅白梅図屏風】が見られる?」と、期待に胸が高まる。展示室1で表題の2作品が並んで展示されているのが目に入った時の感動は並々ではなかった。
 展示のスタートは植物図鑑のような【四季草花図屏風】、以下、見覚えのある作品が続く。
 熱海のMOA美術館から出展された【紅白梅図屏風】(国宝)の前に立ち、しばしの間、様々な角度から入念に鑑賞した。明確な記憶はないが、この作品は大昔に見ていると思う。これまでに、高校の教科書にその時代の代表作として掲載されている作品の多くは複数回目にしてきたが、【紅白梅図屏風】は≪大琳派展≫や他の国宝展などにも出展されず、永らく再会?の機会がなかった。それだけに本日の喜びは計り知れず、夢中で見入った。かすかな記憶よりは、やや小ぶりに感じた。たらしこみで表現された枝や幹、単純化かつきら星のように配置された梅の花、この作品には見る人を魅了してやまないオーラがある。紅白梅と水の流れはそれぞれ男女を表しているとの説もある。
 対する【燕子花図屏風】(国宝)は、これが何度目の対面か思い出せない。鮮やかかつシンプルな群青と緑の色調と、リズム感のある構図、文句なしにこちらも日本美術史を代表する逸品であり、見る度ごとに新たな感動を与えられる。
 やはり光琳が描いた【夏草図屏風】は、今の季節に相応しい展示だった。

 
第二章衣装模様と光琳(重文)-光琳を育んだ装飾芸術
 本特別展では、光琳の息子の養子先・小西家に伝わる【小西家文書】が出品されていた。これは尾形光琳という芸術家を知る上で大変貴重な史料であり、以前から関心を抱いていたので、こちらを見られた喜びも大きかった。同文書の中の【雁金屋衣装図案帳】(重文)などを見て、東福門院和子など当時の一流人が光琳の実家・雁金屋に豪華な衣装を発注したのだろう。高校の日本史の教科書で知った尾形光琳について、より深く触れる機会となったのは、大学で履修した授業で読まされた故・大石慎三郎先生作「江戸時代」だった。今日、同時に読んだ「元禄時代」とあわせて読み直すと、学生時代には注目しなかった(というより理解できなかった)内容に新たな興味がそそられる。
 光琳に多大な影響を与え、私自身も敬愛してやまない本阿弥光悦作品も展示されていた。螺鈿が美しい【群鹿蒔絵笛筒】(重文)は23頭の鹿が描かれている。雲母摺の豪華な【光悦謡本】は、今日の教本にあたると思うが、光悦作とは何と贅沢なと息を呑んだ。長い長い【花卉摺絵新古今和歌巻】も印象的で、じっくりと見入った。
 作者は分からないが、【花卉摺絵隆達節断簡】は、表装の刺繍の見事だった。


第三章 団扇・香包・蒔絵・陶器-ジャンルを超える意匠
 タイトルのとおりのこのコーナーの作品の多くは、多分以前に見ている。
 第三章にも【円形図案集】【図案小品集】【水流に浮草図】【鹿図印籠下絵】【梅花蒔絵箱下絵】などの小西家文書(重文)が展示されていた。光琳らしいモチーフが多数見られた。
 【佐野渡蒔絵硯箱】【水葵蒔絵螺鈿硯箱】は、上品で大変美しい蒔絵作品だった。
 ガラスケースの中の【扇面貼交手筥】(重文)は、底に八橋図が描かれていた。
 お気に入りの尾形乾山の皿なども見られて嬉しかった。複数の銹絵の皿(一部は兄弟のコラボ作品)は、モノクロームの表現が心に残る。見る機会の少ない乾山の画【定家詠十二ケ月和歌花鳥図 正月】も展示されていた。
 
 
 2階の展示室には、古代中国の青銅器や、江戸時代の茶道具などが展示されていた。こちらは過去に見ていると思うので、軽く流して見たが、心に残った作品も何点かあった。


[感想]
 本展覧会は文字通り、自分にとっては超サプライズ、少々大袈裟だが「偶然の積み重ねがもたらした奇跡の出会い」だった。
今の自分の生活環境では、日帰りで行かれる熱海も遠い場所、それだけに【紅白梅図屏風】を見られた喜びは計り知れない。今回あらためて出品目録を見ると、MOA美術館以外にも京都国立博物館や大和文華館・大阪市立美術館などから作品が出展していて、当館の実力を見せつけられる思いがした。
 今回は残念ながらお気に入りの【夏秋渓流図屏風】(鈴木其一作)は展示させていなかったが、当館の今後の展覧会で再会するのが俄然楽しみになってきた。
 本当はもっと長くとどまってより深く鑑賞したかったのだが、この後に予定が入っているので、例によって後ろ髪引かれる思いで展示室を出る。ショップで【紅白梅図屏風】のファイル他の買い物をした後、会場をあとにした。
[PR]
by nene_rui-morana | 2015-06-23 23:22 | 展覧会・美術展(日本編) | Comments(0)

趣味の史跡巡り、美術展鑑賞などで得た感激・思い出を形にして残すために、本ブログを立ち上げました。心に残る過去の旅行記や美術展見学記なども、逐次アップしていきたいと思います。


by nene_rui-morana