鳥獣人物戯画 感想

 【鳥獣人物戯画】の名を初めて知ったのは高校の日本史の教科書(当時は本特別展のタイトルと同じ【鳥獣戯画】と書かれていた)、大学入学後に卒業に必要な単位取得のために古代末期の日本絵画史の講義を履修し、レポート作成等のために関連書を読んで俄然興味が高まった。時期を同じくしてNHKで特番が放映され、大ファンとなる。アルバイト学生で特に生活が苦しい時期だったが、昼食を何度もぬいて図録を2冊購入した。1994年の平安建都1200年の年には京都を訪れ高山寺にも足をのばした

 その後に長い年月が流れ、当時は知らなかった多くの芸術作品に出会い心惹かれてきたが、若き日に出会い魅了されたこの作品の地位は自分の中でゆるぐことはない。
 文句なし、この作品は素晴らしく、そして楽しい。どんなに見ても見飽きない。再会してあらためて、その素晴らしさを実感した。甲巻はもちろん、他巻の動物の生き生きとした描写や断簡にも惚れ直した。
 あわせて今回は、【鳥獣戯画】以外の出展作品にも印象に残るものが多かった。私好みの白描画、愛らしい栗鼠と明恵を抱くような樹木の表現が印象的な【明恵上人像(樹下座禅像)】、明恵遺愛の【子犬】などの湛慶作品、細やかな描写が頃に残る雄大な【華厳宗祖師絵伝 義湘絵】、等々、高山寺が誇る寺宝の数々に驚嘆させられた。今日の高山寺は、同じ京都の本願寺や相国寺・東寺などに比べれば、規模は大きくない。その寺にして、これだけの数の国宝・重文を所蔵しているのは自分にとってはサプライズであり、あらためて、京都という町が持つ歴史・底力を見せつけられる思いがした。
 待ち時間を更新する形での鑑賞となったが、今回鑑賞できた感動は計り知れず、なかなか大変だったが足を運んでよかったと心底思った。職場ではトラブル続きで道中は少々気持ちも沈んでいたが、会場に到着して至宝の数々を目にしたら俄然元気を貰えた。甲巻は、見られる喜びが大きかったため、待ち時間も足腰の疲れもさほど苦痛には感じなかった。大混雑の会場の整理にあたられた係員の皆様にも心より感謝している。館内1階には撮影コーナーも設けられていたが、ここも含めて看板等の写真を上手く撮れなかったのは残念だった。
 今後再び、【鳥獣人物戯画】の展覧会が開催されるなら、必ず足を運びたいと思う。世界のどこかで新たな断簡が発見されることも願っている。加えて、自分にとってのもう一つの最高の絵巻物作品【信貴山縁起絵巻】全巻が公開される日が来ることも、切望してやまない。

 なお本特別展では、お金に余裕のある団塊の世代が退職して自由な時間を獲得した現実も、あわせて実感した。最近は美術展は全般的に混んでいると感じていたが、本特別展とGWに訪れた江戸博の≪大関ヶ原展≫(記事はいつかアップします)で特に思い知らされた。平日でこれだけ混雑しているのだから、話題の展覧会はとても土日旗日の鑑賞は無理だろう。
 鑑賞の待ち時間だけでなく、チケット売り場やミュージアム・ショップ、洗面所なども混雑も、すざまじいものがある。
 今後は展覧会に出向く時は、待ち時間用の文庫本は必須アイテム、かつて海外旅行に行く時に持参した推理小説の類いを見繕っておかねばならないだろう。
 あわせて主催者側にも、待ち時間が3時間になるような展示に関しては、しかるべき措置を検討していただきたい。同じ上野での≪ツタンカーメン展≫の時は整理券が配布されたが、この方法なら待ち時間は同じでもその間を有効に使える。予約制の導入も検討の余地があるだろう。
 この意見は決して個人的な持論とは思わない。自分が待ち行列に並んでいる間に近くでは、体調を崩したり倒れて車椅子で運ばれた人が何にもいた。
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by nene_rui-morana | 2015-06-13 15:10 | 展覧会・美術展(日本編) | Comments(0)