趣味の史跡巡り、美術展鑑賞などで得た感激・思い出を形にして残すために、本ブログを立ち上げました。心に残る過去の旅行記や美術展見学記なども、逐次アップしていきたいと思います。
by nene_rui-morana
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映画『スバルタカス』寸描

 先日、BS放送で往年のハリウッド映画『スバルタカス』が放映された。自分にとってはいささか思い入れのある作品なので、少し思い出等を整理して記したいと思う。
※監督や出演者の敬称は略させていただきます。

 スタンリー・キューブリック監督がメガホンをとったこの作品が公開された時、自分はまだ生まれていない。
 出演者は、主演のカーク・ダグラスの他、ローレンス・オリヴィエ、チャールズ・ロートン、ピーター・ユスティノフ、ジーン・シモンズ、等々、全盛期の英米映画界を代表する豪華な顔ぶれで、上映時間は3時間20分近い大作である。
 この作品に初めて接したのは高校生の時、前後編を2週に分けて放映された。その時は深夜にかかる放映だったこともあり、前半を少し見ただけだった。当時カーク・ダグラスは日本のCMに出演していたこともあり、自分の世代の日本人にも比較的良く知られていた。共演していた女優さんはジーン・シモンズだと母が教えてくれた。





 数年後の大学在学時、再びテレビ放映された。
 途中から登場した端正な男性俳優に、若き自分の胸は騒いだ。彼がトニー・カーティスだと父に聞かされ、非常に驚く。その少し前に公開されたオールスターキャスト映画での、頭髪が後退した中年男性とのギャップは、かなり大きかった。
 『スバルタカス』に出演した時、カーティスは35歳だったが、役柄のアントナイナスの年齢20代半ばと言われても違和感がないほど若々しく、初々しい印象さえ受けた。
 カーティスは両親より上の世代だが、それ以来、俄然お気に入りのスターとなる。
 自分がこれまでの人生の中で直接間接に知った男性の中で、文句なしにカーティスは最高の美男子の一人、個人的な好みはあるだろうが、容貌の美しさという点では彼と肩を並べる男性は何人もいないと自分は思っている。それら数少ない男性とは、若き日のアラン・ドロン、リチャード・フライシャー監督映画『アシャンティ』に出演していたインド人俳優カビール・ベディ、20代半ばで訪れたマレーシア・ペナン島の寺院で出会った10代の青年、若き日の自分は、手の届かない男性に関しては徹底して面食いだったと感じ

 自分が映画に興味を持ち始めた10代前半の頃、我が家の経済状態はかなり苦しかった。当時、自分が急激に傾倒していった往年の名画を見る機会といえば、遠方であっても名画座での上映かテレビで放映されるのを待ち、テストなどの事情や時間帯に関係なくリアルタイムで見るしかなかった。そのチャンスが訪れても、テレビはもちろん1台しかないので、チャンネル争いに負ければ次の機会を待つしかなかった。
 若き日のカーティスの存在を知った頃、永年の夢だったビデオがようやく入り、アルバイト収入も少し増えたので単価が下がり始めたレンタルビデオも手に届くようになった。テレビ放映時は吹替えだった『スパルタカス』にビデオで再び見た時は本当に感激した。複数回借りたように記憶している。
 カーティスの映画も、可能なものは次々と見ていった。当時録画した映画は現在も何本か残っている。人気が出た頃のあまり有名でない作品から、ハリウッドを代表する大スターになってからのものまで、好きな映画は何本もあるが、個人的にはやはり大好きなマリリン・モンローと共演した『お熱いのがお好き』と、これと同時期に制作され対照的な役柄でオスカーにノミネートされた『手錠のまゝの脱獄』が、特に心に残っている。

 映画と歴史が好きな自分にとって『スバルタカス』は、ストーリー、出演者、共に魅力的な作品だった。
 ヒロインのジーン・シモンズは、カーティスと同様に特に好きなスターの一人、カーク・ダグラスは大好きではないが、映画好きな自分には忘れられない存在である。オリヴィエやロートン、ユスティノフも同様だった。
 大学を卒業して少ししてから、公開時にカットされたシーンを復刻させた完全版がリバイバル上映され、大スクリーンで再度見ることが出来た。今回放映されたのも、完全版だった。  
 オリヴィエやダグラスの自伝も読み、撮影時の知られざる舞台裏にも触れた。
 本論とは多少ずれるが、かなり以前にやはりテレビで見たボリショイ・バレエ団の公演も、ダンサーが魅力的だったこともあり、大変素晴らしかった。

 ストーリーは省略するが、個人的に特に好きなのはラスト近く、戦いに敗れたスバルタカスとアントナイナスがクラッサス(オリヴィエ)に決闘を命じられた後のシーン、相手を残酷な磔刑にかけさせまいと必死で戦い、最後にはスバルタカスがアントナイナスを刺す。スパルタカスの腕の中で息をひきとる間際のアントナイナスのセリフ、❝I love you,Spartacus,like my own father...❞、何度見ても胸に迫る。

 映画は悲劇で、しかし一抹の希望を残して幕を閉じた。しかし現実の歴史は、その後も刻まれた。
 スバルタカスとアントナイナスに残酷な運命を下したクラサスも、その後に非業の最期を遂げ、映画終盤近くのセリフが暗示するように、反乱当時は30歳になっていなかったらしいジュリアス・シーザーが天下の覇権を握る。周知のように彼もブルータスの凶刃に倒れ、紆余曲折を経て甥ともいわれるオクタヴィアヌスが皇帝となる。やがては彼の直系も途絶えた。

 自分自身もその後年齢を重ねるにつれて、数々の試練に見舞われた。
 ウマの合わない上司にパワハラを受けて職場で孤立させられた時はプチ鬱状態となり、人生そのものだった読書や映画にも全く心が行かない時期があった。
 職場を異動し、徐々に海外旅行など新たな活路を見出し、追っかけに近いほど熱中できるスターにも出会った。
 しかし運命は残酷で、心の支えであったスターの何人かが若くして急逝し、立ち直るのにかなりの時間がかかったこともあった。
 
 『スパルタカス』制作から半世紀以上を経た現在、キューブリック監督も、メインキャストの多くも、既にこの世を去っている。現在存命なのは、主演のダクラスと(彼は来年で100歳になる)、シーザー役のジョン・ギャヴィンだけだと思う。
 若き日に心をときめかせたカーティスは、2010年に85歳で亡くなった。ネットで見た葬儀には、最初の妻ジャネット・リーとの間の長女、ジェイミー・リー・カーティスの姿も見えた。
 この映画と、カーティスの存在を教えてくれた父も、昨年彼と同じ世界に旅立った。
 全身全霊をこめ時には貪欲に映画やスターを求め愛せるのは、若さと未来への希望があればこそ、おそらくこれからの自分は、かつてのように映画やスターを愛することは出来ないだろう。
 久々に思い出の映画に接し、納戸の奥から古書店をハシゴして探しあてたパンフレットを引っ張り出して見て、たまらない懐かしさと共に、この世を生きる上で避けては通れない寂しさを痛感した。
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by nene_rui-morana | 2015-03-08 01:45 | 映画 | Comments(0)
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