趣味の史跡巡り、美術展鑑賞などで得た感激・思い出を形にして残すために、本ブログを立ち上げました。心に残る過去の旅行記や美術展見学記なども、逐次アップしていきたいと思います。
by nene_rui-morana
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<特別展>没後150周年 歌川国貞 第1部 ②

 ※ 展示室は2階と地下に分かれますが、展示の順番が図録の番号と一致していないようで記憶も定かでないので、展示リスト・図録の順番に沿って記します。

Ⅲ 人気絵師国貞登場
 本コーナーの展示のメインは最も国貞らしさが感じられる役者絵や美人画、見応えのある作品が目白押しで、いちいち記してはいられない。
【舞台うしろゟ見る図 五代目松本幸四郎のばんずる長兵衛 七代目市川団十郎の白井権八】は、タイトルのとおり舞台後方から見るという珍しい構図で両名は後ろ向き、中央の雲助はひっくり返っている。
 【御座敷狂言こしらゑの図】には、国貞作品にはお馴染みの面々(当時の人気役者)が描かれている。
 【大坂道頓堀太左衛門橋より西を眺むの図】が描かれたのは文政4(1821)年頃、この時期に国貞は上方に滞在していたとのことで、現地の歌舞伎興行も見たのだろう。右後方の幟には役者名が見られる。
 本日の展示作品の中には、【当世江戸鹿子 隅田川木母寺】【江戸八景 木母寺暮雪】など、国貞の御当地に程近く墨田区に現在も残る木母寺を描いたものが複数見られた。後者は、雪景色、衣装、モデルの容貌、全てが実に美しい。
 【寺嶋松隠居梅幸別荘雪の景】は以前見ているかもしれない。この作品の舞台も、現在の墨田区内、東京スカイツリーからさほど遠くない場所にあった。
 【当世三十二相】シリーズは、特に好きな国貞作品で、会うたびに心が弾む。
 手前のケースに展示されているのは草子、 【正本製】は柳亭種彦と、【俳優素顔 夏乃冨士】は山東京伝との夢の共演である。
 【当世押羽子板】シリーズに見られる羽子板の意匠は、今回初めて見た。




Ⅳ 新画風の展開
 【役者雪月花 雪】【役者雪月花 花】は小判摺物というミニチュア作品、しかし大変綿密に描かれている。
【当世美人合】シリーズは国貞作品の真髄を堪能できる色鮮やかな逸品である。
対して【中万字や内 八ツ橋 わかば やよい】【扇屋内 花扇 玉屋内 若紫 松葉屋内 粧ひ】は国貞には珍しい藍摺の作品、後者に登場する女性は国貞が慕った英一蝶筆の画を見ている。【二見浦曙の図】【五月雨の景】のような風景画も国貞作品の中では少数派だろう。
 役者を描く国貞の筆はいよいよ冴える。【千社詣 白鬚】のバックに描かれている白鬚神社は国貞の御膝元に程近い墨田区内に現在も残る。【千社詣 洲崎弁財天】と共に、後の広重とのコラボ作品が思い出された。
 草子仕立ての【三芝居 役者 声音早合点】は声音の指南書とのことを葛飾北斎と同様に国貞もこのジャンルの仕事を手掛けていたことを知った。【双錦画譜】は溪斎英泉との夢のコラボである。
 【嵯峨ノ釈尊開帳ノ図 回向院境内ノ図】は以前見たことがある。よく見ると、人々の間に役者の姿があった。
【東海道五十三次之内】シリーズは【三嶋之図】【蒲原】を展示、関連本では見ているがオリジナルは初見かもしれない。背景には歌川広重画が使われている。


Ⅴ 歌川派の全盛
 このコーナーの展示作品の署名は全て<豊国>、色彩はあざやかさを増し、衣装のデザインなどもより綿密になっている。名声が確立して良い絵の具や多数のアシスタントが使えるようになったのかもしれない、
 【東海道五十三次之内】シリーズと【見立三十六撰之内】シリーズは大好きな国貞作品、本日は展示室も明るく、細部まで心躍らせながらじっくり鑑賞した。
 【嘉無路喜久】の下絵は、国貞の制作過程がうかがえる自分にとっては嬉しい展示だった。
 【四代目市川小団次の後室嵯峨ノ方 四代目尾上梅幸の愛称胡蝶】は竪二枚続の作品、国貞が描いた<死絵>は八代目団十郎追悼絵複数を含めて何度か見ているが、本日展示されていた【八代目市川団十郎死絵】は初見かもしれない。手前に描かれているのは父・七代目、頼みにしていたであろう跡取り息子に自害という形で先立たれた心の中がしのばれる。
 広重との夢のコラボ作品とも感激の対面、【風流源氏 夜の庭】、【当盛六花撰】シリーズ、【双筆五十三次】シリーズ、全て見応えのある逸品だった。
 下部のケース内の【東都花日千両】は狂歌絵本、展示されている【戯場之部】を国貞が、【日本橋之部】はもちろん広重が、【廓中之部】は歌川国芳が描いている。
 【歌川広重死絵】には、年下の盟友・広重に対する国貞の思いが感じられる。


Ⅵ 孤高の晩年
 国貞の晩年数年間の作品がラストを飾る。このコーナーの作品は全て、色彩が豪華で画風も斬新、前衛的なものが感じられる。展示の数々から、<豊国>襲名後の国貞は署名のデザインも含めて、意識的に画風を変えたのではないかと感じた。もちろんそこには、彫りや摺りの技術の向上や、色鮮やかな良質絵の具の出現も関与していたのかもしれない。
 【鳶の者御祭佐七 十三代目市村羽左衛門家橘】【妼於加留 沢村田之助 曙山】は<七十八歳豊国筆>という署名が示すように最晩年の作、背景のぼかしやクローズアップされたモデルなど、現代美術にも通じる斬新さがあった。
 【江戸美人尽】の下絵は、2階展示室の下絵と並び、自分にとっては他例の少ない貴重な展示だった。
 文化文政の爛熟した文化を吸収し、天保の改革による規制を乗り越え、激動の幕末の時代に卓越した画力と時代を見る目により浮世絵史上不滅の業績を残した本名・角田肖造こと歌川国貞・三代豊国は、明治維新まで4年を残した元治元(1864)年、79歳でその生涯を終えた。弟子の二代目歌川国貞が描いた【香蝶楼豊国像】には、先に記した歌川派の年玉印が見られた。


≪感想≫
 国貞ファンを自負してはばからない自分にとって本展覧会は必見どころか絶対に見逃せない企画、予想にたがわぬ力の入った内容で、受けた感激もひとしおではなかった。
 今回見た作品の大半とは過去に既に対面済みだが、何度見ても心躍る。大好きな国貞作品についても、毎度のことながら「受けた感動は自分の拙い筆ではとても表現できない。ご自身の目で見ていただきたい。」としか記せない。
 例によって後ろ髪をひかれつつ、後期の鑑賞を心待ちにしながら、閉館時間ギリギリに館を出た。今後も同様の企画が実現して、同門の国芳や広重と同様の関心・評価が国貞にも寄せられることも祈りながら。

 
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by nene_rui-morana | 2015-02-05 15:34 | 展覧会・美術展(日本編) | Comments(0)
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