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花開く江戸の園芸 第2期 ②

第2章続き
 <有卦絵>は見ていて非常に楽しい。今回も【本性の人八月五日うけニ入】(歌川国周作)、【福助と福寿草】(歌川国郷作)、等等、心の中で笑いながら見た。国芳の【弁財天と金の成る木】はタイトルのとおり、弁天様の周囲は小判があふれ、背後にはおめでたい草花の鉢が描かれている。

 【見立て岡島屋璃寛・見立 大和屋紫和】の作者、春梅斎北英と丸丈斎国広は初めて聞く名だが、個性的な画風が印象的、子どもが持つ団扇に描かれた役者や、背後の虫籠・鉢植えなど、心に残った。




 国貞の【夜商内六夏撰】には薔薇の鉢植えが描かれている。江戸時代にも自生はしていたらしいが、もちろん現在のように品種改良された豪華な花ではなく、野草に近かったのだろう。なおこの作品には<歌川豊國>と署名されている点にも注目した。【浅草 雷神門之光景】は、一部だけ描かれた大提灯や雷神、足下の鉢や剪定鋏などに、国貞らしい表現が感じられた。

 【見立たい尽 はやくひらかせたい】は遠目でも芳年画と分かる作品、紫の頭巾が印象的だった。
 歌麿の【当世座敷八景 唐崎夜雨】も展示されていた。

 さらに進むと、古典や歌舞伎を題材とした作品が展示されていて、複数の絵師の画を比較しながら興味深く鑑賞した。
 まずは【鉢木】、国芳作品は彼らしい雪の表現が心に残る。
 【仮名手本忠臣蔵】は多くの絵師の個性が満喫できるテーマ、大変見応えがある。
 歌舞伎絵は文字通り国貞の十八番、【十作弟弥吉・しづの女小よし・うへ木屋十作・おきくの霊】は、タイトルが示すとおり<番町皿屋敷>を描いたものだが、背後に美しい花や鉢が描かれている。

 【新板 植木づくし】は花も草も植木鉢も多種多様、どんなに見ても見飽きない。【盆玩培養(田安家邸園図)】は大名屋敷内での栽培の様子を伝えている。【初春の御寿曽我】は、ダイナミックなポーズ、鮮やかな衣装、背景の雪景色に藁で覆われた松に梅と、国貞作品の魅力が凝縮された珠玉の逸品である。【婦人かきつばたをいける】は国貞画だが制作年は明治になっている。


第3章 武士の愛した不思議な植物たち
第4章 江戸園芸三花-朝顔・花菖蒲・菊-
 後半の両章も、写生帖や各種マニュアル・図説・引札・番付など、バラエティーに富んだ展示で、大変見応えがあった。
 他章にも多くの所蔵を出展している<雑花園文庫>の作品は大変リアルで、ここでも強烈なインパクトがあった。

 タイトルのとおり琵琶の名器を名の由来にした【長生草 琵琶三名器銘由来】は鉢のデザインに注目、鉢も立派な芸術品だと実感した。

 本章には、朝顔を描いた作品が多数見られた。栽培が容易な朝顔は、多くの庶民に受け入れられたのだろう。国貞、英泉、芳年、そして署名のない作品、それぞれの画風を楽しく鑑賞した。
 続いて菖蒲、【花菖蒲培養録草稿】【花菖蒲画賛】の作者・松平定朝は二千石の旗本だが<菖翁>と号するほど菖蒲を愛し、その育成や品種改良に情熱を傾けた。明治期の国周の作品も見られた。現在の東京下町の菖蒲園といえば堀切や江戸川が有名だが、かつては墨田区内の小村井や寺島町でも見事な菖蒲が見られたことが展示で分かった。推測だが、地震や洪水・地域の工業化による環境破壊などで、壊滅したのだろう。小村井の梅園と共に、非常に残念だと思った。

 そして菊、北斎の【菊図】は今回の目玉の一つ、菊だけを描いた珍しい広重の【花尽見立福禄寿 寿菊】も見られた。
 【菊細工番付】や【目黒白銀 菊の順番づけ】など、大変楽しい作品も展示されていた。

 【造花一覧園百菊】はチラシ、【流行菊の花揃 染井植木屋金五郎】には、菊づくりの象が描かれている。
 【巣鴨名産 菊之栞 商牌雑集】はパンフレットで、山東京伝、式亭三馬、曲亭馬琴などそうそうたる面々が名を連ねている。
 ラスト近く、【百種接分菊】と感動の再会、フィナーレに相応しい多彩かつスケールの大きな逸品、国芳作品の中でも特に好きになってしまった


終章
 最終章は、近代の花の女王、薔薇についての展示がされていた。


[感想]
 1期と同様、大変見応えのある素晴らしい特別展だった。記事のアップまでにあまりにも長い時間が経過し、その間に自分の身辺には書ききれないほど多くの事があったため、細かい部分は忘れてしまったが、例によって何回も会場内を廻り、心に残った作品を繰り返し見たと記憶している。
 当館も含めて、数えきれないほど多くの展覧会に足を運んだが、この時ほど会場内で多くのメモを書いた企画はない。それだけ自分にとっては意義のある、密度の濃い内容だった。
 館内の滞在時間も相当長かったと思う。もっと見ていたかったが、さすがに足腰の疲れと体力に限界を感じ、涙を呑んで会場を出た。
 多くの国貞画を含めて興味をそそられる作品が収録されている本特別展の図録は、迷わず購入した。
 本特別展は5週に設定されており、もう一度くらい足を運びたかったが、この時期に父が体調を崩して入院したため、叶わなかった。
by nene_rui-morana | 2014-08-27 21:18 | 東京スカイツリーの町から | Comments(0)

趣味の史跡巡り、美術展鑑賞などで得た感激・思い出を形にして残すために、本ブログを立ち上げました。心に残る過去の旅行記や美術展見学記なども、逐次アップしていきたいと思います。

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