花開く江戸の園芸 第1期 ①

f0148563_2131839.jpg[副 題] 東京都江戸東京博物館開館20周年
       記念特別展

[見学日] 2013年8月3日(土)

[会 場] 江戸東京博物館


 標記特別展の情報を得た時、迷わず見学を決意、今回も展示替えがあるので複数回足を運ぶことにした。
 例によって季節外れのアップとなってしまったが、当日は道中蝉しぐれを聞きながら会場に向かった。


序章 プラントハンターの驚き
 会場に入ると、植木棚を模した展示や提灯が両脇で迎えてくれた。我が歌川国貞の画の大型暖簾も展示されていた。
 最初の展示は、幕末に日本を訪れた英国人プラントハンター、ロバート・フォーチュンの著作≪VISITS TO CAPITALS OF JAPAN AND CHINA≫、当時の日本人が階級を超えて花を愛し園芸が盛んであったことを伝えている。私も数年前にざっとだが邦訳「幕末日本探訪記」を流し読みした。
 他に、もう一冊の洋書と、鍬形蕙斎の【江戸一覧図】が展示されていた




第1章 花と緑の行楽文化
 このコーナーの展示のスタートは17世紀に描かれた【草花図屏風】、四季の花々を多彩かつ華やかに描いた六曲一双の屏風、俄然気持ちはハイになる。
 歩みを進めると、お馴染みの絵師が夫々の感性で江戸の花と緑を描き、興奮で胸が高鳴った。
 歌川広重筆【東都名所 上野不忍池】に描かれた蓮をを見て、ベトナム旅行の時に現地で咲いていた蓮や食した蓮飯・蓮の葉の料理・蓮茶などを思い出した。不忍池の蓮は現在でも季節になると美しい花を咲かせるが、江戸時代は将軍家に献上されたという。
 手前に三囲神社の鳥居を大きく描いた歌川国芳筆【隅田川花見】は、隅田堤の賑わいを生き生きと伝えている。
 国貞筆【隅田川東岸花見図】は、おそらく以前にも当館で見ていると思う。こちらは左端に三囲の鳥居が描かれている。【風流むしきき】には役者と秋草が、【向ふ島の夜桜】には女性と夜桜が描かれている。
 江戸名所花暦にみる江戸の花名所地図も展示、亀戸や小村井・向島・隅田川など、国貞が活躍しその様子を数多くの作品に描いた地の名も見られた。
 歌川国輝筆【春の明ぼの】は、正月らしい門松や福寿草に加えて、巨大な凧が強いインパクトを与える。瓢箪型に書かれた署名や描 かれている美人・広告も私好みの作品だった。
 さらに進むと、染井に関する展示が登場、六義園もあるこの地は江戸時代は文字通り花の里だったことを再確認した。雀亭の【八十八夜花盛 源氏名寄躑躅の花道】は引き札(宣伝広告ビラ)、染井の21名の植木屋が名を連ねている。染井の植木屋・伊藤伊兵衛に関する展示は、本日特に心に残った。伊兵衛が著した庶民向け園芸書を見ていると、彼は古典の教養も豊かだったことがうかがえる。所蔵の多くは、他にも多くの作品を出展している<雑花園文庫>だった。
 【小金井花の道しるべ】は添えられたコメントのとおり<葛飾北斎が描く、小金井お花見マップ>、本日は全作品にこのようなコメント風ミニ解説が併記されていた。
 お馴染みの長谷川雪旦画【江戸名所図会】【江戸名所花暦】も出展、自分もぜひレブリカを手元にほしい。
 <百花園と花屋敷-民間庭園の登場->と題したコーナーには、北斎や国貞が活動していた現在の墨田区にある花の名所を描いた作品が多数展示されていた。タイトルにもなっている≪百花園≫は佐原鞠塢が開き、命名者は酒井抱一とも言われている。三囲神社や牛御前(牛島神社)を、記憶にある現在の姿と比べながら見た。
 居所近くの小村井はいわば国貞の御当地、筆はますます冴える。広重も描きゴッホが模写したことで知られる梅林が名物だが、【小村井梅園 秋の七くさ】などから梅以外の花も季節ごとに咲き誇っていたことがうかがえる。


第2章 普及する植木鉢と高まる園芸熱 
* 本章は2つに分け、順不動で絵師ごとにまとめました。
 タイトルのとおり、第2章のメインは江戸の園芸熱を促進した植木鉢に関する展示、破片や現物から描かれた鉢まで内容は多岐に及んでいた。デザインも色彩も多種多様、植木鉢は立派な芸術品、園芸の重要なバイプレイヤーだったことを認識した。
 先のコーナーに登場した植木屋伊兵衛家の庭の様子を伝える【武江染井翻紅軒霧島之図】を見て、あらためて染井の地は桃源郷のようだったのだろうと感じた。
 栽培用の唐むろなども再現されていた。

 展示はまさに、国貞と国芳のオンパレード、次々と目に飛び込んでくる花々と人物の華麗な描写に感動で胸が震えた。どの作品も素晴らしく、感想全てを記すことは到底できない。ある作品には鉢植えを愛でる人々、ある作品は背景に季節の花々、両名の卓越した筆が、庶民の園芸熱を生き生きと伝えている。

 国芳の【子供遊 松竹梅 松】はとりわけ輝かしいオーラを放っていた。【めでたいづゑ まけてもらひたい】は、福寿草を求める母子を描いたもの、顔半分のぞく幼女が愛らしい。【福禄寿と金の成る木】には松・菊・椎の鉢植え、あふれる小判と、めでたいモチーフが多数描きこまれた私好みの作品、福禄寿が持つ書には「何事も横に寝るのはわるけれど 此字ばかりは立ぬのがよし 腹」と、国芳らしいユーモアあふれる歌が書かれている。

 国貞の【梅幸住居雪の景】は、史実か否かは不明だが、やはり現在の墨田区・向島寺島村にあった尾上菊五郎の別荘を興行関係で不仲となっていた市川団十郎が訪ねて和解するシーンを描いたもの、庭には菊五郎の好んだ松、大小の植木鉢から大木まで形状も多彩、積る雪が風情をかもし出す。庭では他にも職人が巨大な雪の蛙を作っている。
窓辺に桜草が飾られている【鏡を見る美人】、覗き見る鏡には愛しい男性の姿が写っている。【気の合同子 春の楽】には、鏡餅・松飾り・おかめ面・七草など、正月らしいモチーフが多数描かれている。

 【江戸の花名勝会】シリーズは、以前に礫川浮世絵美術館で何点か見て、大いに感銘を受けた作品、本日展示されているのは【百 二番組】、江戸で最大級の茅場町の植木市を描いたもの、国貞、広重、歌川国久(二代)の夢の競演である。

 当館は国貞作品のコレクションが充実していて、本日はいつにも増して多くの国貞と対面でき、感動と興奮で胸がふるえた。
一度に多くの作品を見比べると、時代によって画風が変わっているように感じる。若き日の作品は師匠・初代歌川豊国の画風と非常によく似ている。時代が下ると、人物表現はより洗練されて独特の魅力を放つようになり、衣装やアイテム類・バックなどもより緻密で多彩になっている。勝手な想像だが、長年の描き込みによりタッチに磨きがかかり、作品も世間に評価され収入が増えて多くのアシスタントを雇えるようになり、細部まで綿密に表現する作品の制作が可能になったのではないかと思った。
 
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by nene_rui-morana | 2014-04-10 20:43 | 旧展覧会・美術展(日本編) | Comments(0)

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