人気ブログランキング | 話題のタグを見る

国宝 興福寺仏頭展 前期

国宝 興福寺仏頭展 前期_f0148563_20485789.jpg[副 題] 興福寺創建1300年記念

[見学日] 2013年10月4日(金)

[会 場] 東京藝術大学大学美術館


 某所で入手したチラシで標記特別展を知る。お越しになる?諸像にはもちろん何度か対面しているが、旅行が困難な現在、東京で奈良の国宝を見られる機会は大変貴重なので、鑑賞することにした。
 当日、会場に赴く道中には銀杏が落ち、秋を感じた。


第1章 法相宗の教えと興福寺の絵画・書跡
 地下2階の第1展示室に入ると、まず正面で迎えてくれたのは【厨子入り木像弥勒菩薩半跏像】(重文)、後方にはこの仏像が安置されていた【厨子】(重文)が展示されていた。厨子は後世のものらしいが、じっくり見ると、扉にはインドや中国・日本の僧が、上部には舞う飛天が描かれていた。法隆寺でも似たような厨子を見た記憶がある
 そのまま右手に進むと、【興福寺別当次第】(重文)などの文書類が展示されていた。見る機会の少ない巻物や紙背文書類の他、版木も出展されていた。
 【護法善神扉絵】(重文)は本日は6枚出展、彩色も残り、綿密な描写が印象的だった。【帝釈天像】や【増長天王像】などは彫刻作品には多数触れたが絵画はあまり見たことがないので、注目させられた。後者は面のようなモチーフが描かれた装具もユーモラスだった。扉絵そのものも過去に見た回数は多くはないので、特に心に残った。
 【法相祖師像彩絵 厨子扉絵】(東京藝術大学大学蔵)は劣化し描線も固いが、時代は鎌倉までさかのぼる。
 興福寺ゆかりの僧侶の肖像画も展示されていた。
 【持国天像】(重文)からは、先述の扉絵と同様に強烈なインパクトを与えられた。【大般若十六善神像】も同様だった。




第2章 国宝 板彫十二神将像の魅力
 第2展示室には国宝の標記作品が展示されていた。11世紀の興福寺再建と共に制作され、以後損なわれず今日に至る貴重な寺宝である。素材には伽藍や仏像をつくった際に出た木材の余りが使用されたとも言われ、制作した仏師の信仰心も今日に伝えている。
 【真達羅大将像】のみ正面向きで手を合わせている。【迷企羅大将像】【伐折羅大将像】はお馴染みの新薬師寺の彫像を思い出しながら鑑賞した。弓矢の状態を見ている【頞儞羅大将像】は京都を特集したテレビ番組で他寺の彫像を見た記憶がある。
 板彫十二神将像については、10代の頃に食事代を削って買った写真集に掲載されていたこともあり、比較的早くその存在を知っていた。しかし、複数回訪れた興福寺で対面したのか、記憶は定かではない。
 本日、至近距離で直面し、ようやくその素晴らしさを体感できたように思う。個性的な表情とポーズ、ユーモラスで動きのある生き生きとした表現、日本美術史上を代表する名品であることは間違いない。見れば見るほどどれも良いが、上記した作品と【宮毘羅(くびら)大将立像】が特に気に入った。


第3章 国宝 鋳造仏頭と国宝 木像十二神将立像
 本展覧会の展示はすべて素晴らしいが、クライマックスはやはり3階の第3展示室だろう。今回は天平の文化空間が再構成され、手前に十二神将が配され奥に仏頭が安置、往年の東金堂内部が再現されている。
 憤怒の中にも力強い風格のある【木像十二神将立像】は、ユーモラスな先の【板彫十二神将像】と比べつつ鑑賞、同じ像でもボーズや持ち物?が異なっていた。頭部には干支の造詣が見られる。総て素晴らしいが、【真達羅大将立像】は特に技量の高い仏師が制作したと言われている。【宮毘羅大将立像】には彩色文の跡が見られた。
 そしていよいよ、白鳳の貴公子の感動の再会となる。私が中高生の頃の教科書等には、この国宝は【興福寺仏頭】もしくは【旧山田寺仏頭】と記されていた。今回は【銅造仏頭(興福寺東金堂旧本尊)】と題されている。見る場所を変え、角度を変え、背面にもまわり、じっくり鑑賞した。本日は高い位置に展示されていたので、通常とは違った仰ぎ見るアングルからこの日本美術史上屈指の至宝を心行くまで堪能した。この像がたどった数奇な運命はよく知られている。本日は頭部のひびや耳の損傷など、破損部分も念入りに見て、応永18(1411)年の落雷による火災がいかに激しいものだったかがうかがえた。その後所在が分からなくなった本像は、昭和12(1937)年10月に再び人々の前にその清々しい姿を現した。頭部のみの仏像としては唯一、国宝に指定されている。白鳳文化の瑞々しさを現代に伝える珠玉の名宝、見る人総ての心を打つ名品である。


第4章 特別陳列 深大寺釈迦如来倚像
 重文の標記彫像は10代の頃に知っていたが、現物を見るのは今回が初めて、戦後間もなく盗難にあい現在も所在が分からない新薬師寺の香薬師と良く似ているという。右手中指が破損している。今回この会場で対面できたのはまさにサプライズで、本当に嬉しかった。
 なお、この像の背後には『興福寺仏頭 白鳳の貴公子』と題した3Dデジタル映像が放映され、復元された姿も見ることができた。


≪感想≫
 古の奈良の都から遠く離れた東京で、白鳳文化の最高峰に触れられた喜びは筆舌に尽くしがたい。
 興福寺は何度も行ったが、現地では【仏頭】や【阿修羅】を含めた【八部衆】や【十大弟子】、東金堂の諸像、また五重塔などのオーラがあまりにも強烈で、他の宝物にまで目が行き届かなかったような気がする。
 今回、【板彫十二神将像】と【木像十二神将立像】の魅力を満喫し、これまでに増して興福寺が大好きになった。
国宝 興福寺仏頭展 前期_f0148563_2051226.jpg 今の私には旅行は遠い夢だが、次回奈良を訪れた時は必ず興福寺に足を運び、至宝の数々と再会することを切望している。

 本日は、藝大校内の右の看板も、大変気に入った。
by nene_rui-morana | 2014-01-06 20:52 | 旧展覧会・美術展(日本編) | Comments(0)

趣味の史跡巡り、美術展鑑賞などで得た感激・思い出を形にして残すために、本ブログを立ち上げました。心に残る過去の旅行記や美術展見学記なども、逐次アップしていきたいと思います。

by nene_rui-morana