谷文晁 前期①

f0148563_19564511.jpg[副 題] 生誕250周年

[見学日] 平成25年7月21日(日)

[会 場] サントリー美術館


 谷文晁の名は、高校の日本史の教科書等に記載されていたこともあり、盟友だった我が酒井抱一よりも遥か以前に知っていた。その文晁の大規模な展覧会が開催されると知り、抱一の縁もあるので、ぜひ見ておこうと思った。
 しかし、多忙のため忘れかけ、気が付いた時は前期の終了間際で、あわててスケジュール調整した。
 平成26年最初のアップは、鑑賞後半年以上が経過してしまった標記展覧会となった。

 スタートは【孔雀図】(上野記念館蔵)、ついで「下谷根岸の住人、旅行と酒が好き」という文晁のプロフィールパネルが展示されていた。

序章 様式のカオス
 スタートはお馴染みの画風の作品が目白押し、大変見応えがあった。
 【連山春色図】(静岡県立博物館蔵)など、日本人好みの淡色で雄壮な山水画が展示されていた。
 一方で、【渓山樵夫図】【李白観瀑図】(田原市博物館蔵)など、ラフなタッチのモノクロ画も心に残った。
 【ファン・ロイエン筆花鳥図模写】(神戸市立博物館蔵)は、徳川吉宗から五百羅漢寺に下賜されたが、オリジナルは失われ文晁の模写が貴重な史料となった。後述の、吉宗の孫・松平定信との関係が感じられた。
 【慈母観音像】(山形美術館蔵)は、人物描写、波や竹の表現などに注目した。
 【仏涅槃図】(大統寺蔵)は、ひっくり返った象などから、嘆きがより強く伝わってきた。






第1章 画業のはじまり
 コーナーのはじめ近くに展示されていた【谷文晁像】(東京国立博物館蔵)は文晁の孫・谷文中の筆、弟子・渡辺華山の人物画が連想された。
 【達磨・徳山・臨済像】(濟松寺蔵)以降は、文晁の師匠・加藤文麗らの作品が続く。
 展示は再び文晁の作品に戻る。【三聖図 文晁画稿】(東京藝術大学蔵)は私好みの素描風作品だった。【四季山水図】は多くの絵師が取り組んだテーマ、文晁も独自の解釈で見る者の心を打つ画風に仕上げている。
 【文姫帰漢図巻】(大和文華館蔵)は文晁の収蔵品とのこと、巻尾に館蔵印が見られた。
 文晁は、応挙 呉春 岸駒 南蘋派らの影響を受けたという。
 ケースの中には、文晁と交流のあった人物の自画像や肖像画が展示されていた。浮世絵の中のような美男美女とはいえないが、みな風格がある当代の一流人、大変リアルで親しみがわいた。
 【歴代名公画譜】以降は文晁の模写作品が続く。
 【本朝画纂】は松平定信旧蔵とのこと、北斎漫画等に通じるものを感じた。
 コーナーの締めくくりは【画学斎過眼図藁】(大東急記念文庫蔵)・【画学斎過眼図藁】(田原市博物館蔵)・【縮図帖】など手控え・スケッチ帖、この類は好きなジャンルである。


第2章 松平定信と『集古十種』旅と写生
 コーナーのスタートは【松平定信自画像】(鎮國守國神社蔵)、文晁は時の老中・松平定信に重用され、江戸湾岸巡視等に同行し、各地を写生した。カメラやビデオがなかった時代、従軍絵師が果たした役割の大きさは容易に想像できる。定信といえば超堅物ともいえる生真面目人間で、様々な娯楽を規制し、浮世絵師を含めた多くの文化人を罰したことで知られているが、一方で文晁という当代一流の絵師と親しい関係を持っていたのが興味深い。
 定信は全国の古文化財の調査も行い、記録や模写を展示されている【集古十種】(大和文華館蔵)に集約した。
 定信という当代随一の権力者のバックアップを受けたことにより、文晁の画風にはさらに磨きがかかったように感じる。このコーナーの作品群も大変見応えがあった。
 ラフなタッチの【戸山山水図】(出光美術館蔵)は特に心に残った。
 定信が題を記した【異国船図】(神戸市立博物館蔵)が描かれたのは文政12(1829)年、徐々に列強の影が忍び寄り始めた頃で、来たるべき時代を暗示しているように思った。
 【那須眺望図】(栃木県立美術館蔵)や【松島真景図巻】(仙台市博物館蔵)など、定信が賛を寄せた作品が続く。【福寿草図】き特に素晴らしいと思った。
 【隅田川両岸図】(群馬県立近代美術館蔵)は、水鳥、富士、船等が情趣深く描きこまれている。
 ケース内に展示されていた【松島画紀行・松島日記写本】(仙台市博物館蔵)や【谷文晁東北地方写生図】(東北大学附属図書館蔵)は、全頁見たいと思った。
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by nene_rui-morana | 2014-01-02 13:16 | 旧展覧会・美術展(日本編) | Comments(0)

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