維新の洋画家-川村清雄

[副 題] 勝海舟、篤姫らを描いた知られざる巨匠

[見学日] 2012年11月24日(土)

[会 場] 江戸東京博物館・1階展示室


 標記も江戸東京博物館開館二十周年記念特別展だった。記事の作成がままならないまま、実に一年以上が経過してしまったが、先日同じ会場で開催された『八重の桜』の記事をアップし、両者はほぼ同じ時期を生きたので(川村の生没年は1852年~1934年、新島八重は1845年~1932年)、続けて掲載するのが相応しいと思った。
 その作品は過去に何度か見たが、作者・川村清雄については初めてその名を知った。本特別展が告知された時、多忙の折、行くのは無理だろうと思っていたが、清雄が生きた時代や描いた人物については近年とみに関心が高まっているので、やはり見ておこうという気持ちになり、会場に赴いた。


序章 旗本の家に生まれて
 正面に展示された川村の写真に迎えられて会場に入る。
 川村清雄は嘉永年すまわちペリーが来航する前年に誕生、祖父・川村修就(ながたか)は新潟奉行や長崎奉行を歴任した有能な幕吏で能書家でもあった。時は泰平の眠りが覚まされた時代、開港地の要職にあった修就は激務に追われたであろうことが容易に想像できる。序章には、由緒ある旗本・川村家に伝来する品々が展示されていた。
 【紺糸素懸威腹巻】は300両もしたという。
 【川村龍水肖像】は清雄が描いた祖父の肖像画、龍水こと修就は90歳まで長生きした。
 【日新録書抜 二】は修就の日記、清雄誕生を記した頁が開かれていた。





第1章 徳川派遣留学生
 清雄はなかなか美男子だったらしく、明治初期の美男美女の士族番付【花競見立相撲】では東前頭にランクされている。
 幼い頃から画才を発揮していた清雄は、維新後の明治4(1871)年、徳川派遣留学生としてアメリカへ渡る。アメリカでは画家・チャールズ・ランマン邸に寄宿した。この時、岩倉使節団に随行してきた津田梅子に麻疹をうつされたと回想している。
 留学の目的は法律や政治を学ぶことだったが、画才を認められ洋画へ転向する(このあたり、黒田清輝やカンディンスキーと似ている)。その後はパリやヴェネツィアで油彩画を修行した。
 【家族宛川村清雄書簡】(1871年10月6日)には、鉄道馬車やガス灯のスケッチも描かれていた。パリ留学時代のスケッチなども注目した。ヴェネツィアでは賞も獲得したという。
 留学延期願いが却下される際に渡された【川村清雄宛マンティン・リーコ書簡】(1881年)には、「日本趣味を失わないでほしい。」と書かれている。


第2章 氷川の画室
 タイトルを見れば即座に勝海舟が頭に浮かぶ。
 明治14(1881)年、清雄は11年に渡る留学にピリオドを打って帰国し、大蔵省印刷局の技師となるが、局内の軋轢でほどなく退職、収入のなくなった彼に救いの手をさしのべたのが勝海舟だった。勝は自邸内にアトリエを建てて制作の後押しをし、夫妻で我が子同様に清雄を慈しんだ。勝の庇護のもと、勝雄は次々と代表作を描いていく。【勝家の庭にて】には勝一家と共に清雄の姿が見られる。
 ≪歴代将軍像≫の中には、【徳川慶喜像】なと見覚えのある作品が複数あった。
 最もよく知られている清雄の作品、本展覧会の目玉の一つでもある【江戸城明渡の帰途(勝海舟江戸開城図)】も、本章に展示されていた。所蔵は当館、自分は葛飾北斎のミニ展覧会で墨田区役所を訪れた際に、庁舎内で複製画を見たことがある。
 【形見の直垂(虫干)】も清雄の代表作の一つ、勝の死後に深謝と鎮魂の思いをこめて描かれたものだが、残念ながら私が訪問した日にはオリジナルの展示は終了しコピーしか見られなかった。


第3章 江戸の心を描く油絵師
 最も展示作品の多い本章、清雄が描いた作品の他、書簡その他の関連資料も多数出展されていた。
 【家禄奉還願】旧時代の残り香がある近代の貴重な史料、格別な印象を受けた。
 父・川村帰元の号葬儀の写真なども展示されていた。大正元(1912)年、父が61歳で亡くなり、間もなく妻ふくも37歳で死去した。
 清雄は【「新婦人」表紙(正月飾り)】なども手掛けている。
 ウェネツィアの川村の下宿地を示したパネルは、自身がこの地を訪れた時の記憶を重ねながら見た。


終章 ≪建国≫そして≪振天府≫
 最終章には、本特別展の最大の目玉、【建国】が展示されていた。オルセー美術館からの記念すべきお里帰りとなる。天の都がテーマ、金地に剣・鏡・勾玉・梅、中央には鶏冠が鮮やかな雄鶏、やはりこの作品が本日最も心に残った。
 他に【振天府】の下絵や図案なども展示されていた。
 展示の締めくくりは、【草花図】、最後の年賀状、看護記録、など清雄最晩年の史料、葬儀の様子を伝える写真も展示されていた。葬儀の返礼に配られた袱紗は、最後の年賀状に描かれたイラストがデザインされている。


≪感想≫
 見学後一年以上が経過してしまった本特別展、当然ながら記憶も曖昧になっており、本稿もいつもに増して各所に間違いがあると思う。
 川村清雄の絵画はいい作品だとは思うが、正直個人的には、少し後の世代の横山大観や竹内栖鳳ほどは感銘を受けなかった。
 むしろ自分は、幕末から明治維新、大正、昭和と、四代に渡る激動の時代の生き抜いた旧幕臣としての生涯に、大いに関心をそそられた。勝海舟など近代史上特筆すべき人物との華麗な人脈やそれらを物語る史料から、近代を肌で感じる思いがした。清雄の絵画ももちろん、時代の息吹を伝える貴重な史料でもある。後に大河ドラマから、清雄は新島八重と共通の人々に接したことを知り、さらに幕末・明治という時代がリアルに感じられ、本特別展も自分にとっては有意義なものだったと思っている。
 
 帰りがけに、一点だけだが、【建国】の絵葉書を購入した。
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by nene_rui-morana | 2013-12-22 21:31 | 旧展覧会・美術展(日本編) | Comments(0)

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