夜明けまえ-知られざる日本写真開拓使-北海道・東北編 後期

[見学日] 平成25年4月28日(日)

[会 場] 東京都写真美術館


 待望の標記展覧会後期、昨年と同じく、GWのフロアレクチャーに合わせて会場に足を運んだ。今回も、既に対面済の作品、初めて見る作品、全て大変見応えがあった。

 『遣欧使節団』の写真はこれまでに何度も見てきたが、池田筑後守の他、なかなかイケメンが揃っていると感じる。幕府も海外に派遣するには、それなりに見栄えのする人物を選んだのだろう。

 田本研造が撮影した写真は、やはり心に残る。【博物館第号館】や【セメント工場】などの建築物、人物の肖像、等等、バラエティーにとみ大変見応えがあった。

 写真が納められた箱の裏書きも、中には後世に書かれたものもあるかもしれないが、自分にとっては心惹かれるものだった。

 本展覧会で何点が展示されている南部藩主・南部利剛の写真、本日は【致堂様 御前様 (第15代南部藩主 南部利剛と正室 明子)】(関政民撮影)を念入りに見た。

 過去の展覧会で雄大なパノラマに魅了され続けてきた私、本日も【札幌市街図】は大変気に入った。
 船のある風景も好きなジャンル、ライムント・フォン・スティルフリートが撮影した【HAKODATI(豊川町から見た函館山)】もとても良いと思った。
 同じ制作者による【(大沼と駒ヶ岳)】【(大沼の船)】は、20年以上前に旅行でこの地を訪れた時のことが懐かしく思い出された(後者は船上の人物と犬が印象的だった)。当時の私は転職後間もなかったが、就任前の理想と現実に配属された部署とのあまりの違いに大いなる疑問を感じ、再度転職を考えて勉強をしていた。挑戦したある団体の一次試験日が同期の友と計画した北海道旅行の出発日とぶつかり、友には事実を隠して試験後に遅れて札幌入りし、大沼を含めて道内を何箇所か巡った。補欠合格したものの、結局は採用はしてもらえなかった。その後も何度か転職を試みたが結果的にはいまだに同じ職場に勤め続けている。共に旅した友は数年後に結婚し、より条件のよい他所に異動した。自分は他課からの反対が多かった最初の職場の事業に関与した十字架をいまだに背負い続けている。同期は数十名、少し運命が違って新人のあの時、あの職場に配属されていなければ、その後今日までの人生はずいぶん良い方向で違っていたたろう、そんな思いが写真を見ながら脳裏をよぎった。

 既述のとおり、北海道にはまだ一度しか行ってことがない。東北地方は何度か旅したが、中部・関西方面に比べれば回数は少ない。それだけに、写真が伝えるこの地の明治期の姿には、ひときわ大きな感銘を受けた。訪れた回数は少ないが、県域が広く各所に違った個性がある山形県は国内でも特に好きな所、明治期の山形の建物の写真などは非常に印象に残った。

 展示後半にも、田本や弟子・武林盛一が撮影した肖像写真が展示されていた。【函館在勤不列顛国領事 レチャルド・イウスデン】や【(リチャード・ユースデン夫人)】など、外国人を写した写真もあった。函館は、横浜や長崎に比べれば自分にはいささか馴染みが薄いが、先のスティルフリートの写真といい、幕末にいち早く外国に向けて開かれたこの街はなかなか国際色豊かで外国人もいたことを実感した。

 「仁禮春子」という名の女性は、洋装と和服それぞれを身に着けた写真が展示されていた。

 前期で大いに魅せられた【千島探検諸島実景】、スライド放映されていた写真は、多分全て見られたと思う

 徳川慶喜に関する写真は、被写体となったもの、慶喜自身が撮影したもの、共に過去の展覧会や関連書で多数見てきた、小川一真が撮影した【徳川慶喜を囲む集合写真】も、どこかで見ているかもしれない。

 記事のアップは前後したが、直前に江戸東京博物館で≪八重の桜≫の特別展を見た。時を経ずして、当会場でも【若松旧城跡(鶴ヶ城堀端)】【白虎隊墳墓】等により、明治初期の会津の姿を見ることが出来た。


≪感想≫
 GWで当館の初期写真(現在当館では「古写真」ではなくこの名称を使われている)展を見るのも今回で五回目となった。今年も予想にたがわず、大変密度の濃い展覧会で、非常に見応えがあった。
 寒がりで車の運転が出来ない自分には、北海道はいささか縁の薄い土地、それだけに貴重な写真の数々から感じたものも大きかった。日本史の授業で習った「屯田兵」や「開拓使」などは特に臨場感があったし、おそらく自身で訪れることは不可能であろう千島列島の写真にはしばし時を忘れて見入った。
 本展覧会で初めて知った写真師は、下岡や上野に比べれば一般的な知名度はまだ低いが、地元では近代に名を残した人物として観光関係のHPなどにも紹介されている。また、前期の稿にも記したが、本展覧会の展示作品の撮影者の中には長命の人が何人も見受けられた。鈴木真一も柴田一奇も80過ぎの長寿を全うしている。
 本展覧会も見学からアップまでに長い時間が経過してしまったが、ようやく記事をまとめるにあたってリストを見直しながら展示の数々を思い出し、興奮に胸が躍っている。展示が伝える明治の町並み、建物、風景、等等、どれも心に迫るものがあった。所蔵する施設がある地の多くを訪れていたが、現地でこれらを見た記憶はない。今回、東京で一堂に会する展覧会が実現し、本当に嬉しく思っている。あわせて今回も、写真裏のロゴやフレームのデザイン、箱書き、納品袋、等等、自分にとっては涙ものの展示の数々に大変感動した。
 今の自分には旅行は叶わぬ夢だが、リストに列挙された所蔵館を見て、ぜひまたこれらがある各地を訪れたくなってしまった。特に通り一遍の観光しかしなかった函館については、近代初めて海外に門戸を開いた町としての顔を現地で体感したい気分になっている。

 今回は土方歳三の写真の絵葉書をいただけた。
 研究報告書は掲載写真の数が少なく、自分としては少々不満があり、買うか買うまいか正直迷った。しかし学芸員の三井氏が「これは研究報告書です。」と話しておられたようにこれは写真集ではないと自分に言い聞かせ、類似他書も多くないので、結果的には購入した。

 今年は横浜美術館のキャパの展覧会とあわせて、心に残る写真の展覧会を見学することができて、とても嬉しい。
 
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by nene_rui-morana | 2013-11-30 21:35 | 旧展覧会・美術展(日本編) | Comments(0)

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