夜明けまえ-知られざる日本写真開拓使-北海道・東北編 ②

≪ひろがり≫
●横山松三郎はコロディオン湿板方式を3タイプに応用・商品化しました。【弟 松蔵】はスライド、【中島待乳】はポジです。【日本の風景】はステレオヴューワー用アンブロタイプです。横山は北海道出身ですが、東京の写真もたくさん撮影しています。

●田本は第一世代、弟子の武林盛一は第二世代の写真家です。

●武林が撮影した【屯田兵観兵式】は、人物のブレを修整して完成させています。当時の写真は修整が必須で、展示作品の中には台紙にパレットのデザインがされているものもあります。一定時間静止していなければならないので、スタジオで撮影された写真の中には首押さえが時々見られます。

●江崎礼二は写真乾板を利用して早撮りを可能にし、瞬間を撮影することに成功しました。赤ん坊や子どもの写真は画期的です。【影山正博】はアンブロタイプです。江崎は後に東京市議会議員や凌雲閣の館長などをつとめ、「東京百美人」も企画しました。

●本展覧会では新潟の写真も出展しています。【籠手田知事令嬢】は稀少な写真油絵です。裏面にもご注目下さい。

●磐梯山が噴火した時は、多くの写真家が現地に行って写真を撮りました。三陸沖津波の時も、東京の方から多くの人が赴きました。


≪特別展示≫
 本展覧会はオリジナルの展示をコンセプトとしていますが、ラストを飾るこの【開拓当時の富岡町】だけは、唯一デシタルです。企画の段階で所蔵されている「富岡町歴史民俗博物館」に足を運び、当然オリジナルを貸していただく方向で調整していました。しかしご存知のとおり、東日本大震災後の福島第一原発の事故により富岡町は警戒・避難区域に指定され、町民の皆様は避難生活をされています。博物館のコレクションは相馬に避難していますが、展示できる状況ではありません。学芸員の方は仮設住宅関係業務に従事され、これまで培ってきたスキルが全く職務に生かせていません。これが「復興」の現実です。


≪感想≫
 黎明期の写真に興味を持ち始めてから20年近い歳月が流れ、この間それなりの数の写真集に目を通し、いろいろな展覧会に足を運んだ。これらを通じて心に残る写真に多数接し、詳細は分からないながらも初期写真の名前程度は覚えた。
 本展覧会も幕末から明治までの貴重な写真を多数見ることができた。フロアレクチャーも、自分一人では気づかなかったであろう見所を多数紹介していただき、新たに学んだこともあり、非常に意義のある内容だった。
 2年後には本シリーズの総集編が予定されているとのことで、今から待ち遠しい。それ以外でも類似の展覧会が開催されるようなら、ぜひ足を運びたい。
 なお、特別展示に関して三井氏が力をこめて述べられた被災地の現状は、やはり心に迫るものがあった。警戒区域には他にも貴重な初期写真が残っていると思うが、それらが展示される日がいつになるかは分からない、これが現実なのである。避難されている方々の日常生活が以前と同じに復活するまで、避難区域に残る文化財を公開する展覧会が実現するまで、真の復興とはいえないだろう。その日の一日も早い訪れを心より願っている。
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by nene_rui-morana | 2013-11-21 20:41 | 展示解説・フロアーレクチャー | Comments(0)

趣味の史跡巡り、美術展鑑賞などで得た感激・思い出を形にして残すために、本ブログを立ち上げました。心に残る過去の旅行記や美術展見学記なども、逐次アップしていきたいと思います。


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