ファインバーグ・コレクションの魅力 ①

[日時] 2013年6月8日(土)   [会場] 江戸東京博物館・1Fホール   [講師] 小林忠氏


 江戸東京博物館の開館20周年記念≪ファインバーグ・コレクション展 江戸絵画の季節≫については、当然ながらチラシを入手した時点で足を運ぶことを決心した。
 ほどなく新聞で小林忠先生が記念講演をされることを知り、ぜひ聴講したいと応募、くじ運の悪い自分には珍しく当選した。
 当日は少し早目に会場に到着して展示を軽く流して見た後、ホールに入場、周囲には和服姿の女性の姿も見られた。
 定刻に講演開始、例によって心に残った内容を列記し、自身の感想を≪MC≫という形で書き加えたいと思います。
  * 当日からかなり日時が経過しており、細部に記憶違いもあると思いますがご了解下さい。内容も順不同です。

●私の友人の狩野博幸は、「講演会を行う時は、お土産を二つ持たせなさい。一つはレジュメ、もう一つは定刻に終了すること。」と申しています。そのアドバイスを受けて本日はレジュメを用意しました。もう一つの方も守りたいと思います。
≪MC≫
 自分は以前、【洛中洛外図屏風】に関する狩野氏の著作を読んだことがある。





●私とファインバーグ夫妻の出会いは昭和59(1984)年夏、昭和天皇も訪問された米国のフリア・ギャラリーの客員研究員をしていた時です。以来、特に親しくしていただいています。
≪MC≫
 偶然ながら、私が小林先生に初めてお目にかかったのもこの昭和59年だが、当時は江戸の歴史や芸術については他の時代ほど関心がなく、はるかな時を経て今日のようになるとは想像もできなかった。

●ロバート・ファインバーグ氏は有機化学の博士号を持ち、父から引き継いだペンキ会社を4倍にまで拡大させました。フランスのボルドーに別荘を所有していますが、ここはもともとは英国将軍の要塞だったところで、往時を物語るものとして伝書鳩の籠などが残されています。
 音楽などの造詣も深く、共に聴いたコンクールでは私の予想が外れ、氏が推測された演奏者が見事優勝しました。
 アイデアを日本企業に盗まれたりもしたのですが大の親日家で、自宅内には日本の仏像や神像・陶器などが飾られています。トイレ内の掛け軸は鈴木其一作です。

●ベッツィー夫人は視覚にハンディのある方の教育に携わっておられます。
 ご夫妻のコレクションのスタートは1972年にメトロポリタン美術館で購入した2ドルのポスター、夫人の妹エミーさんがアドバイスされました。

●日本の美術品の調査は外国の方がやり安い。浮世絵なども外国の方が積極的に見せてくれます。ファインバーグ夫妻もよく自宅に学生を招き、コレクションにさわらせてくれます。
≪MC≫
 1984年以降、ファインバーグ氏のもとを訪れたゼミの学生さんと邸宅で撮影された写真などを見せていただく。若き日のスリムな姿、対して最近の恰幅のよさ、ファインバーグ氏の体型に時の移り変わりが感じられる。写真には他の著名な外国人研究家も写されていた。

●ご夫妻は日本語を解されません。タイトルは時代を超えて絵画共通の認識ですが、ご夫妻は日本語が分からないので署名や印章が判読できない。にもかかわらず、ご夫妻のコレクションは珠玉の逸品揃いで、その鑑識眼には敬服させられます。ご夫妻は誰に教えられるわけではなく、作品の紙や箱・絵の具などで、価値を見極めてこられたのです。

●本日当館を訪れる際、≪江戸絵画の奇跡≫というタイトルの広告を見て、思わず涙が出ました。絵画だけではない、江戸時代そのものが奇跡の時代なのです。有史以来、200余年間戦争がなかった時代は稀です。
 皆さんは渡辺京二氏の『逝きし日の面影』という本を読まれたでしょうか。かなり厚めの文庫本ですが、私は大学の学生たちにお金と時間を使っても読むように薦めてきました。この書籍には奇跡の時代・江戸のことが詳しく書かれています。江戸時代は「子どもの天国」だったことにも触れられています。
≪MC≫
 自分も数年前に何かのきっかけでこの書物の存在を知り、図書館で借りて読み始め、ほどなく通販で取り寄せた。以後は常に座右に置き、事あるごとに目を通している。そこには江戸時代に日本を訪れた外国人の著作を中心に、かつての学校教育で教えられてきたのとは全く違う、泰平の時代がえがかれている。出典紹介も、幕末に来日した外国人に興味を抱いている自分には良き参考となる。


<補足>
 当日の記録の中に、詳細が思い出せない、あるいは内容が正しいか分からないが箇所が、いくつかあります。以下に列挙だけしておきます。

◎「メトロポリタンからバリへ」との記載、本展覧会が日本の巡回の後、これらを廻るということか、あるいは過去にこれらで実施されたということか?

◎ファインバーグ邸には通常、20数点の作品が飾られています。

◎講演中に先生は「もしファインバーク氏から『1点(もしくは2点?)だけコレクションの中から好きなものを差し上げます』と言われたら、私はこれを選びます。」と言われてある作品を示されたが、作品名は記録し忘れてしまった。あわせて、個人的に最も魅せられる画家として、日本では浦上玉堂、外国人では直前まで国立西洋美術館で展覧会が開催されていたラファエロを挙げられた。このご意見に関しても共鳴できる部分がある。今回来日している玉堂作品は新コレクションとのことだった。

◎今回作品が来日している福田古道人(画家、俳人、正岡子規の弟子)に関連して、サンタフェで接した研究者が男性同士のカップルだったエピソードを話され、「アメリカではよくあることです。」と付け加えられた。古道人に関しては本日初めてその名を知った。

◎他にも、著名な日本絵画コレクターであるプライス、クラーク、ギッターの各氏について話された。いずれも小林先生と親しい関係にあり、近年先生のご尽力でそのコレクションの里帰り展覧会が実現し、自分を含めた多くの日本人が感動を与えられている。
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by nene_rui-morana | 2013-10-26 12:57 | 講演会・講座(含 回想) | Comments(0)