和様の書 第1期 ②

第4章 高野切と古筆
 第2会場に移動すると、そこに展示されているのは手本や鑑賞用に珍重された古筆の数々、こちらも大変見応えがあった。≪切≫とは冊子や巻物を鑑賞用に裁断したもので、古今和歌集に関してはタイトルの≪高野切≫や≪本阿弥切≫などの逸品が伝わっている。本章の作品名には【古今和歌集】【万葉集】、筆者は伝承も含めて紀貫之や行成・公任など、日本史や古文の授業で聞いた名が一堂に会していた。
 このコーナーで名を知った源兼行は高名な能筆家で、彼が書写した古今集などは大変珍重されたという。本日は【古今和歌集 巻第五(高野切)】(国宝)などが展示されていた。【和漢朗詠集(関戸本)】は仮名と真名を書き分けた趣向が印象に残った。
 【古今和歌集 巻十二(本阿弥切)】(国宝)は、離れて見ると下絵が鮮明に見てとれた。


第5章 世尊流と和様の展開
 時代が下ると、書の様々な流派が分かれ、それぞれ発展していく。このコーナーのタイトルにもなっている≪世尊寺流≫は行成の流れを組む流派のこと、他の流派についても見聞した記憶がある。
 本章にも【久能寺経】が出展、藤原定信筆で巻は【譬喩品第三】、発願者に待賢門院の名が見られた。
 【和漢朗詠集(安宅切)】は行成筆と伝わるが、私は別人の筆のような気がした。
 【古今和歌集 序(巻子本)】(藤原定実筆、国宝)は、鮮やかで斬新な料紙と、優雅な書とのコラボが、実に素晴らしかった。
 【善無毘金粟王塔下感得図(両部大経感得図のうち)】(藤原定信筆、国宝)は、藤原宗弘により画も大変見応えがあった。
 以前に別の展覧会で見て魅了された【熊野懐紙】に感動の再会、国宝・重文のオンパレード、筆者も後鳥羽上皇や寂連などそうそうたるメンバーが名を連ねている。
 【平治物語絵詞】も、【平家納経】と並んで本日特に感動した再会だった(巻は【六波羅御幸巻】)。
 本阿弥光悦は美術史上特に好きな芸術家の一人、本日はこちらも久々のご対面となる【舟橋蒔絵硯箱】(国宝)と並んで、【四季草花下絵和歌巻】が展示されていた。
 この光悦が自身も含めて定義したのが≪寛永の三筆≫、しかし寛永年間には近衛信伊は既に亡くなっていたということで、本展覧会では≪江戸の三筆≫というタイトルが使われていた。
 松花堂昭乗も含めて三名の書を堪能、第1章にも登場した信伊は本章でも重要メンバー、【柿本人麻呂像】は画賛共に彼、絵もなかなか面白かった。
 【龍虎二大字】(後陽成天皇筆、重文)は、空海など他の書家の作品でも見られた絵画的な表現が印象的だった。
 【東行記】(烏丸光広筆)は江戸への紀行文、スケッチも入り、私好みの作品だった。
 フィナーレは【宝蓮華】、近衛家煕筆で所蔵は陽明文庫、近衛家は歴史と共に文化文藝のジャンルでも日本史に不滅の足跡を残していることを再確認した。


≪感想≫
 私と歴史との馴れ初め?は小学校中学年の時に地元の公民館で接した≪百人一首≫、三歳年上の従兄からも啓発され、俄然興味をそそられた。渋る親に懇願してカルタを買ってもらい、添付されていた解説書を読みながら少しずつ覚えていった。ほどなく紫式部の伝記や子供向けに現代語訳された≪枕草子≫を読み、同時期に放映されていた大河ドラマの主人公に魅せられ、急激に歴史にのめりこんでいった。
 小学校上級生から高校生まで、年齢に応じた歴史関係書や小説・伝記等を読み漁った。高校では史学部に在籍、歴史はもちろん、成績は別として古文も好きだった。大学進学にあたってもずいぶん迷ったが最終的には史学科を選択した。
 現在の自分の関心は19世紀に移っているが、若き日に傾倒し没頭し、その後の人生に多大な影響を与えられた時代のことも忘れられない。本展覧会の内容はまさしく、自身の過去の足跡を再現するものであり、感慨もひとしおだった。かつて夢中になって調べ、あるいは授業で接した文化財や人物の書跡を手に届く位置で見て、当たり前のことながら歴史は存在したことを肌で感じた。
本特別展のキャッチコピーにもなっているが、日本の文字は実に美しい。今回の展示は歴史上の重要人物が関与したものが多く、それだけに紙や装丁も上質で、美しく典雅な数々の料紙にも心底魅せられた。あわせて、今更ながら古文書の勉強をしっかりしてこなかったことを後悔した。
 少し時間はあいたが、今年は先の≪書聖 王羲之≫に続いて、本特別展で至宝の書跡の数々に触れることが出来て、大変嬉しく思っている(一貫性をもたせたいので、先に見て未だ記事が出来ていない展覧会も多いのですが本特別展を先にアップしました。)。台東区立書道博物館も含めて、今年の一連の展覧会では、これまで良く知らなかった書に関する内容についてもいろいろ勉強させていただき、大変有意義な経験となった。
 今後は本展覧会で得た内容を、更に自分の中で高めていきたいと思っている。
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by nene_rui-morana | 2013-10-06 14:22 | 旧展覧会・美術展(日本編) | Comments(0)

趣味の史跡巡り、美術展鑑賞などで得た感激・思い出を形にして残すために、本ブログを立ち上げました。心に残る過去の旅行記や美術展見学記なども、逐次アップしていきたいと思います。


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