趣味の史跡巡り、美術展鑑賞などで得た感激・思い出を形にして残すために、本ブログを立ち上げました。心に残る過去の旅行記や美術展見学記なども、逐次アップしていきたいと思います。
by nene_rui-morana
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書聖 王羲之 (後期)

[副 題] 日中国交正常化40周年特別展

[見学日] 2013年3月1日(金)

[会 場] 東京国立博物館・平成館


 標記展覧会は前後期に分かれるが、展示替えはそれほど多くないので、多忙の折、後期も足を運ぶべきか否か迷った。しかし、前期の印象がとても良かったのでもう一度見ておきたい気持ちもあり、再度会場に赴いた。
 *見学からかなり時間が経過してしまったので細部に記憶違いがあるかもしれません。


序章 王羲之の資料
第1章王羲之の書の実像
 【乙瑛碑】(当館蔵)は書道の授業で隷書を教わった時の記憶を思い返しながら、破磔(右のはらい)に注目した。
 【祥除帖(快雪堂帖)】(台東区立書道博物館蔵)は多彩な書体が印象的だった。
 【十七帖-王穉登本-】(台東区立書道博物館蔵)には活字と和訳の解説パネルが添えられていたが、内容は簡潔明瞭、詩を読んでいるようだった。古代の中国語は自分には分からないが、王羲之には文章家としての才能もあったと思う。【十七帖-王文治本-】(当館蔵)も格調高い名品、多彩な奥書にも魅せられた。第2章の【蘭亭図巻-万暦本-】(当館蔵)でも同様の感想を持った。
 【真賞斎帖-火前本-】(華夏編、台東区立書道博物館蔵)は過去に書道のテキストで目にしたかもしれない。
 【欽定重刻淳化閣帖】(乾隆帝編、台東区立書道博物館蔵)は石に楷書の訳文が刻まれているところが、ロゼッタストーンを思わせた。三希堂は乾隆帝の書斎の名で、本日はこの名の由来となった【快雪時晴帖(快雪堂帖)】や、【三希堂帖】数点(いずれも台東区立書道博物館蔵)も出展されていた。乾隆帝は第2章の【神龍本蘭亭序-本坊刻本-】の題跋を書くなど、芸術への造詣も深かった。展覧会で乾隆帝に関する展示を見るたびに、中国史上最高の、ひいては世界市場稀有の名君であったと実感する。
 【行穣帖】(プリンストン大学付属美術館蔵)は本展覧会の目玉の一つ、王羲之の書は≪足下行穣...≫2行15文字だが、複数の奥書も見事、数多い印も多様、時代を超えたコラボに心酔させられた。格調高い名品である。
 【孔侍中帖】(国宝、前田育英会蔵)、【妹至帖】、【王羲之尺牘 大報帖】は、小品ながら心に残る展示だった。


第2章 さまざまな蘭亭序
 前期に続き、【蘭亭図巻-万暦本-】(当館蔵)と感動の再会、加筆修正の跡が見られる。全く別の文化財だが、完璧をあえて避けて一部を壊したり崩した≪トレビの泉≫や≪日光東照宮≫と共通するものを自分は感じた。1417年に刊行され、1592年に重刻された。関連資料も満載で、絵や詩を楽しく鑑賞した。
 ミニチュア版の【蘭亭図巻-万暦小本-】(五島美術館蔵)を見て、自分もレプリカが欲しくなってしまった。
【蘭亭図巻-乾隆本-】(当館蔵)は17mに及ぶ大作、巻頭に新文章が追加されている。
 【褚模蘭亭序】(当館蔵)はタイトルのとおり、かの褚水良の手によるもの、第3章には彼の書も展示されていた。褚水良はかの則天武后を批判して流罪になった。彼の書が評判になっていることを聞きつけた武后はこれに対抗するため、臣下の僧に命じて同じ文面の王羲之の書の集字を作られたというエピソードを高校の書道の先生にうかがった記憶がある。この層を含めて、名筆の集字に人生をささげた人はたくさんいたのだろう。
 台東区立書道博物館の中村不折の書もあった。
 【游丞相旧蔵蘭亭序-御府領字従山本-】(香港中文大学文物館蔵、北山堂寄贈)は多少アレンジしてあった。
 前期で大感激した池大雅の【蘭亭曲水・龍山勝会図屏風】は残念ながら展示されていなかったが、やはり大好きな与謝蕪村の【蘭亭曲水図屏風】(当館蔵)に対面できて大喜び、こちらも大変見応えがあった。天龍寺217世・翠巌承堅が序の全文を担当している。


第3章 羲之書法の受容と展開
 第3章は王羲之以降の時代の書を展示、多くの書家が王羲之に私淑した。
 【真草千字文】(国宝)は本展覧会の目玉の一つ、作者の智永は王羲之の7世子孫で、【蘭亭序】を所有していた。智永の死後は弟子の弁才の手に渡ったが、王羲之に心酔する唐の太宗は家臣・粛翼に命じてこれを騙し取り、後に自身の陵墓に副葬させた。確かに酷い話で太宗を擁護する気持ちはないが、ナポレオンも蔣介石もボルゲーゼ枢機卿も似たようなことをしている。古今東西を問わず国家や君主は、しばしば国民に不条理を強制する。戦争や私財没収はその典型例、自身も親が体調を崩していた時に会社が税務署の立ち入りが入って追徴課税され、学費を払ってもらえなくなった経験がある。
 【九成宮醴泉銘海内第一本】(欧陽筆、三井記念美術館蔵)は日本の書道の手本に広く用いられてきたという。
 【草書孝経巻】(伝賀知章筆、宮内庁三の丸尚蔵館蔵)は流麗な字体に魅了された。
 【行書王史二氏墓誌銘稿巻】(黄庭堅筆、当館蔵)は草稿、書き込みや修正が見られる≪率意の書≫、清書とは一風違った人間らしさが感じられた。
 【行書祝寿詩軸】(劉墉筆、当館蔵)手書きの吉祥文がとても可愛かった。
 今回の多くの進士の書を見て、官僚は書家でもあることを再確認した。
 ラスト近くの【篆書般若心経十二屏】(呉昌碩筆、当館蔵)まで、気合いを入れて鑑賞した。


≪感想≫
 多忙の折、前後期足を運ぶのは容易ではなかったが、大変充実した内容でやはり見てよかったと思う。
 会場内で≪蘭亭詠聯≫という一節を見かけたが、まさにそのとおり、蘭亭序は長きに渡り面々と受け継がれ、後世に多大な影響とインスピレーションを与え続けてきたことを再確認した。今回はまた、至宝の数々の鑑賞とあわせて、書に関する様々な内容を知ることができて、大変勉強になった。
 幸運にも本稿執筆時までネットにはプレスリリース用のサイトが開設されており、当日の興奮と感動を呼び覚ますと共に、展示内容の再確認もできた。あらためて見て、展示作品は実に美しく格調高いと実感した。
 いつもと同様、本展覧会で得た感動を知識を今後につなげていければと思う。
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by nene_rui-morana | 2013-09-30 20:57 | 旧展覧会・美術展(東洋編) | Comments(0)
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