人気ブログランキング | 話題のタグを見る

白隠展(後期)

[副 題] 禅画に込めたメッセージ

[見学日] 平成25年2月

[会 場] Bunkamura ザ・ミュージアム


 待望の標記展覧会、年度末が迫り多忙な時期だったが、展示が変わるので何としても見たいと思い、諸般をやりくりして会場に足を運んだ。今回も楽しくユーモラスな白隠ワールドに心癒された。
 今回は展示リストの他に、花園大学の芳澤勝弘教授による解説シートも配布され、見学者への配慮が感じられた。


 前期から展示されている作品群には、今回も大いに楽しませてもらった。
 【すたすた坊主】との対面が叶い大感激、この作品は特にお気に入りとなった。
 【百寿福禄寿】も本展覧会で特に心に残った大好きな作品、若冲にとっての鶏のように、白隠にとって≪寿≫という字はことのほかお気に入りだったのだろう。他の多くの作品にも書かれている。
 【地獄極楽変相図】は眺めているとすべてのモチーフが面白い。多くのキャラクターが描きこまれていていくら見ていても飽きることがない。この裏に展示された【観音十六羅漢】も念入りに鑑賞せずにはいられない作品だった。
 【布袋解開】も大好きな作品、布袋を描いた白隠作品は数多いが、特にこれはお気に入りとなった。
ラフな画風が白隠の魅力だが、【関羽】(静岡県松蔭寺蔵)は入念に描きこまれて彩色もされており、賛や落款も見られる。原宿の本陣の一子に与えられたものとのことで、おそらくオーダーメードで画料も貰っているだろう。
 【七福神合同船】は本展覧会以前にも多分見ていると思う。キャラクターはもちろん、後方の掛軸や開かれた巻物なども心に残った。
三枚続きの作品のうち、中央の【鍾馗】が手にした扇の≪寿≫の字や淡く塗られた背景の墨が印象的だった。
 【龍杖拂子】はその名を初めて聞いたが≪印可状≫、悟りを証明したものとのことだった。
 他にも、【白澤】など、心に残った作品は数多い。

 観音を描いた複数の作品には今回も心惹かれた。白隠の観音は、共に描かれている蓮と共に、自分にとっては好きなモチーフ、白隠自身も好きだったであろうことは、非常に丁寧に描かれていることからもうかがえる。

 後期のみ展示の作品も印象的なものが多く、感想をすべて書ききることは難しい。
【維摩故事】はかなり大胆なタッチだが、眉毛や髭、払子などが強烈なインパクトを残す。
 【朝鮮曲馬】は朝鮮通信使に随行してきた曲馬団のアクロバットを描いたもの、多分白隠自身もその様子を目にしたのだろう。他例の少ない貴重な作品である。【富士大名行列】は前期も見たが、北斎や広重とは全く違った視点で描かれた富士、世界遺産に登録された今あらためて図録を見直して、やはり感じるものがある。いずれも、街道筋でもある白隠の出身地・駿河が感じられる作品だと思った。
 【切匙みそさざい】はシンプルな線ながらも強烈なインパクトを受けた。


≪感想≫
 前期同様、後期も心底楽しませていただいた。自分の知的水準では禅の奥義までは到底極められず、好きな絵師の展覧会として心ゆくまで鑑賞した。
 白隠自身は先に展覧会を見た円空と同様、絵は趣味の延長であり、歴史に記されるような名画を描いているという意識はなかったと思う。小中学生時代に学校や塾の先生から手書きの
を配布されたり(パソコンが出現した現代ではもはやこのようなものを作成する教師も存在しないと思うが)、絵が得意な同級生から即興のイラストを貰ったりしたが、それに近いものだったと感じる。もちろん画才には長けていたので、良い画材を使用している作品はおそらく注文を受けて制作し画料も貰ったのだろうが、まさか21世紀になって自分の作品が狩野派と肩を並べる存在となり、大規模な展覧会が開催されるとは、想像もしていなかっただろう。
 とにかく、自分は白隠は大変好きなので、このような大規模な展覧会で多数の作品を一度に鑑賞でき、本当に嬉しかった。
今回も、いつまでも会場にとどまって見ていたいと心底感じたが、もとよりそれは不可能、涙をのみ好きな作品だけを見直して、後ろ髪をひかれる思いで会場をあとにした。
 購入した図録に楽しく目を通しながら、再び白隠作品に出会う日を心待ちにしている。
by nene_rui-morana | 2013-08-17 23:09 | 旧展覧会・美術展(日本編) | Comments(0)

趣味の史跡巡り、美術展鑑賞などで得た感激・思い出を形にして残すために、本ブログを立ち上げました。心に残る過去の旅行記や美術展見学記なども、逐次アップしていきたいと思います。

by nene_rui-morana