竹内栖鳳-京都画壇の画家たち

[副 題] 特別展 没後70年

[見学日] 平成24年月10日20日(土)

[会 場] 山種美術館


 自分が高校生だった頃の日本史の教科書に竹内栖鳳の名は記載されていなかったので、その存在を知ったのは横山大観や橋本雅邦に比べればずっと後のことだった。(もっとも、仮に現在の教科書に載っていたとしても既に日本史は必修科目ではなく、近現代まで触れられることは少ないので、現在は大観クラスの画人の名も知らずに高校を卒業する若者も少なくないだろうが)
 地元の図書館の美術書コーナーで弟子の上村松園らと共にその名を知った後も、特に大きな関心を抱くこともないまま、長期間が経過した。
 表記展覧会も多忙の折、行くべきか行かざるべきか迷ったが、重文【班猫】が出展されることもあり、未知の栖鳳ワールドに触れてみることにした。

 * 本特別展は、<第1章 先人たちに学ぶ>、<第2章 竹内栖鳳の画業>、<第3章 栖鳳をとりまく人々>の三章で構成されていますが、一部展示が混在しているため、順不同に記します。


 地下の会場に入り、いきなり【班猫】が目に飛び込んできた。この作品のモデル?となった猫を旅先で目にし、強烈なインスピレーションを感じて強引に譲り受けたというエピソードが複数のテレビ番組で紹介されている。さすがに現物と対峙した時の興奮は並々ならぬものがあった。群青や緑青・金泥で表現された瞳、黒や黄土を塗り重ねた上に胡粉等によって描かれたつややかで柔らかな毛並、しばしの間、我を忘れて立ちつくした。私はこの作品に<猫の絵>という表現は適当ではない、<猫の肖像画>が相応しいと思った。それほどまでに、こちらを見つめる猫のあの瞳、表情からは、人格さえ感じられた。


 しばし見入った後、足を進める。
 まずは栖鳳の先人ともいうべきお馴染みの江戸時代の絵師の作品を堪能した。与謝蕪村、円山応挙、長沢芦雪、等等、個人的に好きな絵師の作品を見られて嬉しかった。応挙の【雪中双猿図】のユーモラスな猿は特に気に入った。


 そしていよいよ栖鳳の登場、居並ぶ作品の数々、その多彩な画風に驚嘆しながら、夢中で見ていった。
 【池塘浪静】は、薄緑の水面とそこに見え隠れする鯉(一匹は跳ねている)、水草や岩の表現が印象的だった。
 【象図】、【飼われたる猿と兎】、【百騒一睡】、等等、【班猫】と同様に栖鳳が描く動物画は<動物の肖像画>という言葉が相応しいとあらためて感じた。【熊】はラフなタッチで毛を描く一方、表情は実に念入りに表現されていた。
 【雨霽】のたなびく雨後の柳の表現は秀逸、【風かおる】の新緑の柳と燕も心に残った。
 【梅図】の鶯、【みゝづく】、等等、栖鳳描く鳥には抱一とはまた違った愛らしさがある。【憩える車】は水車にとまった鷺を描いたもので、構図をはじめ、垣間見える野の花、ネーミング、すべてが実にいい。【春雪】の、雪の中を船の舳先にとまる烏の姿も印象的だった。


 栖鳳はまた、教育者としての才にも長けていて、多くの優秀な門人を輩出した。本日はそれら後進の作品も展示されていた。
 唯一名を知っている上村松園は最近人気が高まっている女流画家、【新蛍】は、簾・団扇・蛍の取り合わせが絶妙、鮮やかな色彩の中に慎ましさと艶っぽさが感じられた。
 山元春挙の【清流】【冷夢図】は、明るく透明感のある色彩表現に注目した。


 これまで接する機会の少なかった竹内栖鳳とその周辺の画家の作品、今回本格的な特別展が実現してその真髄に触れることができ、大変嬉しかった。
 【班猫】は文句なしに近代画壇を代表する傑作、将来は国宝に指定されるに相応しい名品であると実感した。
 描くテーマはもとより、作品の大きさ、装丁、技法、等等、竹内栖鳳という画家の多才さに驚嘆させられた。今後はより注目されていかるべきだろう。本展覧会がそのきっかけとなることを切望してやまない。
[PR]
by nene_rui-morana | 2012-12-28 21:15 | 旧展覧会・美術展(日本編) | Comments(0)