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役者見立東海道五十三駅・後期

[見学日] 平成24年6月13日(水)

[会 場] 川崎・砂子の里資料館


 待望の表記展覧会、会場に向かう道中も期待で胸が弾んだ。後期も多彩な国貞ワールドに酔いしれながら、空想の東海道旅行を楽しんだ。


 【荒井駅 小女郎】(三代目岩井粂三郎)は珊瑚の駒絵が心に残った。

 【白須賀 猫塚】(故・尾上菊五郎=尾上梅寿)は猫の扮装に注目、江戸歌舞伎にもこのような趣向があったことを今回初めて知った。

 【二川吉田間 いむれ 忠兵衛】(故・三代目坂東三津五郎)は、頭に巻いた手拭と役者の表情が粋、山と水を描いた背景も実にいい。

 【御油 其二 山本勘助母】(二代目市川九蔵)のような白髪の役者絵を、私は今回初めて見た。

 【赤坂 沢井助平】(故・坂東三津右衛門)は、大きく口と目を開いて見栄を切る表情が強烈なインパクトを与える。

 【宮 景清】(八代目市川団十郎)は≪出世景清≫を描いたものだろう。大学時代に他学科専門で履修した近世文学史の講義でこの作品を知り、ストーリーが自分好みだったので図書館で関連書を探して読んだ記憶が懐かしく思い出された。実はこの講義は、内容に全く興味がなかったわけではないが、コマが空いていたので認められる単位をとっておこうと思ったのが最大の履修理由だった。同学科の仲間もおらずテストの手応えも悪かったので間違いなく落とされると思いきや、予想以上にいい成績をいただけた。浮世絵を通じて多少なりとも江戸時代の歌舞伎に興味を持つようになった現在なら、講義内容にもまた違った印象を受けただろう。

 【四日市 額の小さん】(故・六代目岩井半四郎)は、おどけた表情が楽しかった。

 【庄野 中野藤兵衛】(四代目坂東彦三郎)は、雨の背景やロゴマークの入った彦三郎の衣装が印象的だった。

 【有松 伴左衛門】(五代目市川海老蔵)は左肩を見せて上向きのポーズ、編み笠も実にいい。

 【草津大津間 鳥井川 金棒引】(二代目中山文五郎)は隈取りメイクとふざけた表情が見ていて楽しい。正統派の二枚目だけでなく道化的な喜劇役者も、江戸庶民に愛されたのだろう。

 【大津 又平】(故・中村梅玉=三代目中村歌右衛門)と【大津 又平女房おとく】(故・五代目岩井半四郎)は≪吃又平≫を描いたもの、実は自分がライブ?で歌舞伎を見たのは中学生時代に参加した歌舞伎教室でのこの演目が唯一である。タイトルも内容も忘れてしまっていたが、又平が手洗鉢に描いた絵が裏側までぬけるシーンと、おとくの鼓で舞うシーンは覚えている。駒絵には手洗鉢や鼓・硯箱が描かれ、おとくは鼓を持っていたので、記憶が甦り、とても懐かしく思った。

 【京 石川五右衛門】(故・四代目中村歌右衛門)はさすがにキマっている。後方の橋や山々の表現も素晴らしい。

 役者絵は国貞作品の醍醐味を堪能できるジャンルの一つ、文字通り、生きている役者がそこにいるようで、150年前にタイムスリップしたような錯覚さえ覚える。ポーズ、表情、衣装、すべてキマっている。 岩井半四郎、坂東しうか、八代目市川団十郎、等等、特に個性的な風貌の役者は何人か覚えた。八代目団十郎を描いた作品を見ているうちに、彼が現代に甦り自分がもう少し若かったら、案外ファンになっていたかもしれないと思った。
 
 お気に入りの国貞作品を手元に置いて、見たいときに見るのが私の夢、しかし実現の可能性はゼロに等しい。ならば、彼の作品が展示されている展覧会に可能な限り足を運ぶしかない。今回も、しばし時を忘れて陶酔境にひたった。広重の五十三次とぜひ見比べたい、本展覧会の図録がないのが、かえすがえすも残念でならない。係員の方ともいろいろな作品を指し示しながら国貞の魅力を熱く語り合った。本当に、できればいつまでもそこに留まって見ていたいのだが、次の予定があり、館を出る時は名残惜しくてならなかった。
 しかし嬉しいニュースも得られた。来年あたり、都内某美術館で国貞作品が大々的に出品される展覧会が計画されているとのこと、しっかり情報にアンテナを張り、見逃さないようにしなければと思っている。
by nene_rui-morana | 2012-08-03 20:33 | 旧展覧会・美術展(日本編) | Comments(0)

趣味の史跡巡り、美術展鑑賞などで得た感激・思い出を形にして残すために、本ブログを立ち上げました。心に残る過去の旅行記や美術展見学記なども、逐次アップしていきたいと思います。

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