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「変わり種」忠臣蔵

[見学日]2011年12月15日(木) 

[会 場]平木浮世絵美術館


 平木浮世絵美術館で年の瀬恒例となっている<忠臣蔵展>が開催中であると知ったのは12月に入った頃、多忙な年末で他にも見たい展覧会がたくさんあり、調整が難しかったが、歌川国貞の作品も出展されているのでぜひ見たいと思い、サービス残業を重ねて早退にこぎつけた。
 当日は昼過ぎに仕事をあがり、現地へと向かう。会場が入っているアーバントップららぽーと豊洲に到着後、アジアンダイニングの店で昼食をとってから見学を開始した。
 私が当館を訪れるのは今回が二度目、数年前に見たい企画展が開催されたが体調を崩して実現しなかった。前回来た時は板張りの床で靴音が気になったが、今回はカーペット敷きとなっていた。
 
 展示のスタートは歌川豊国(初代)の作品、【浮繪忠臣藏大序段之圖】から十一段までが、下に解説付きで展示されていた。続く【新版忠臣藏十一段續】は五枚続に全段が描かれていた。歌舞伎はほとんど見ず忠臣蔵に関してはテレビドラマの知識しかない自分のような人間には、教材としては格好の作品だった。

 次に目に入ったのが月岡芳年の作品、【義士肖像】全八枚のうち、一枚のみが五人で他は上下に三人ずつぴったり四十七人が、襟の氏名の他、職名・行年・戒名まで添えて、個性的に描かれている。芳年の作品を見る度に、その几帳面な性格が伝わってくる気がする。

 そしていよいよ、我が国貞の登場、興奮で胸が高まった。
 【忠貞義婦傳】(署名は豊国)は、人情本作者の松亭金水が詞書を寄せている。
 続く【繪兄弟忠臣藏】(初段目~十一段目)は、背景に各段の場面を描き、手前には女性が各段を連想させる小道具と共に描かれている。クイズのように二倍三倍に楽しめる作品、女性の美しさ、着物や帯・アイテムの使い方など、国貞作品の醍醐味が満喫できる逸品である。

 他に、数は少ないが歌川広重や国芳の作品も展示されていた。
 広重の【見立滑稽忠臣藏】(全五枚)は本日特に印象に残った作品だった。忠臣蔵のパロディーで、脇には正統派?の作品を併せて載せた対比解説パネルを展示、マンガチックでとにかく楽しかった。三段目では勘平が伴内と捕手の雀踊りを眺め、由良之助らは家臣たちをとうせんぼ(当時の遊戯<子とろ子とろ>)、五段目ではトレードマークの傘が売られている。六段目では<山鯨>が、十段目では<天川>という屋台でしっぽくにゅうめんが食される。他にも曲乗りや当時の風俗が満載、この絵を見た同時代の人たちは笑い転げたことだろう。あの情緒豊かな風景画を描いた広重がこのような河鍋暁齋ばりの愉快な戯作画も描いていたのは自分にとっては大きなサプライズであり、この日の最大の収穫だった。

 締めは再び国貞、【誠士義士傳】は画中に≪七十九歳豊國筆≫とあるように最晩年の作品、一部は弟子も関与していると思われる。好評だったらしく追加で登場人物を描いた【誠士義士傳之内】が制作され、こちらにも国貞作品ですっかりお馴染みの当時の人気役者が登場する。役者の個性がひときわ輝いて感じられた。

 当館は決して大きな美術館ではないが、コレクションは充実していて本日も非常に見応えがあった。さすがに午前中に仕事をしてから来たため少々疲れ、館内のソファーで少々まどろんだ後、いつものように気に入った作品を中心に何度も見直した。大好きな国貞作品を多数見られ、広重の【見立滑稽忠臣藏】との出会いもあり、自分にとっては非常に収穫のある展覧会だったと思う。
 この後に別の予定を入れてあったので閉館まで留まることはできず、館を出る時は後ろ髪を引かれる思いだった。残念ながら本企画展の図録は制作されていなかったが、国貞作品を収録した図録を2冊購入できて大変嬉しかった。

 この日は展覧会見学以外でも、大変美味しい昼食やイタリアンジェラートを味わい、ウィンドウショッピングをし、つかの間の楽しみを満喫できた。
 夕刻の水辺の景観も強く心に残った。
Commented by desire_san at 2012-02-06 15:00
こんにちは。

平木浮世絵美術館で「忠臣蔵展」というのが開かれていることは初めて知りまし曽田。興味深く読ませていただきました。


私は私も「歌川国芳展」に行ってきました。これを機会に「歌川国芳」の芸術について私なりにレブューを書いてみました。
ぜひ読んでみてください。

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by nene_rui-morana | 2012-01-19 21:21 | 旧展覧会・美術展(日本編) | Comments(1)

趣味の史跡巡り、美術展鑑賞などで得た感激・思い出を形にして残すために、本ブログを立ち上げました。心に残る過去の旅行記や美術展見学記なども、逐次アップしていきたいと思います。

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