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空海と密教美術展(1)-2

≪第三章 密教胎動-神護寺・高野山・東寺≫
 隣室へ向かうと、正面に展示されているのは壮大な大曼荼羅、【両界曼荼羅図(高尾曼荼羅)】**は退色はしているが往年の華やかな面影を伝えるスケールの大きさな作品、しばし見入った。リフトに乗って上部も近くで見たかった。
 空海筆の【灌頂歴名】**には最澄の名も見られる。メモ書き、手記に近いもので、随所に消しこみなどもあるが、それだけに現実味・人間味が感じられた。少し後に展示されている【大日経開題】**も書き込みや加筆が見られるが、こちらは論文執筆のための資料もしくは草稿といった趣で、学究への並々ならぬ意欲も感じられる。コピーのない時代だから自ら筆写するしかなかったのだが、本特別展だけでもこれだけあるのだから、空海は生涯にどれほどの文書を書いたのだろうか。あらためて、その超人ぶりに脱帽する。
 【細字金光明最勝王経】**は格調高い謹厳な楷書で記されている。名前のとおり極小サイズの字で拡大鏡を使わなければ見えず、よく書けたものだと感嘆した。
 【仁王経五方諸尊図】*は東寺講堂立体曼荼羅を丁寧に細かく描いている。私好みの紙本墨画作品で、細かな表現とユーモラスな表情が印象的だった。
 ずらりと並んだ仏像群には目を見張る。【増長天立像】**や【五大明王う】*のダイナミックなポーズからは強烈な印象を与えられた。モデルに像と同じ衣装をつけさせて制作されたのではと思った。諸仏が乗っている馬や孔雀もじっくり観察した。
 優雅で美しい【如意輪観音菩薩坐像】**には、うっとりと見とれた。目を閉じてくつろいだ雰囲気は神秘的で口紅も施されている。身につけた冠や胸飾り・手にした数珠や蓮の花も精巧で、本日特に心に残る彫像だった。


≪第四章 法灯-受け継がれる空海の息吹≫
 本特別展は最後まで息がぬけない展示が続いていた。
 【両界曼荼羅図(西院曼荼羅)】**は、華やかな色彩が印象的だった。
 【宝簡集】**は【高野山文書】とも呼ばれる貴重な古文書、学生時代に授業で見た覚えがある。
 クライマックスは≪仏像曼荼羅≫、もちろんすべてが国宝、設置されたステージの目線から双眼鏡で眺めた後、像の側に行き、通常は見られない背後を含めてじっくり見入った。東京でこれだけの数を見られた喜びは計り知れない。
 どの像も素晴らしいが、【帝釈天騎象像】はなかなかイケメンでファンになってしまった。六の面・腕・足を持つ【大威徳明王騎牛像】も印象的だった。【隆三世明王立像】はヒンドゥー教のシヴァ神とその妻ウマを踏みつけているが、先のコーナーの【仁王経五方諸尊図】はこの像を描いた部分が展示されていたこともあり、こちらも大変心に残った。


 先述のようにこの日はあまり時間がなかったが、時計を見ながら許された時間ギリギリまで、会場内を何度も廻り心に残った展示を中心に何度も見直した。
 今回も自分の拙い文章力ではその素晴らしさは伝えられないとしか記せない。これだけの文化・芸術を残した日本という国に生まれたことを誇りに思う。
 過去には東寺にも高野山に訪れており、その時に見た作品もあるはずだが、当時は不勉強だったらしく今回ほど強烈な印象を受けた記憶がない。これを機に、旅行の時に入手した資料等に目を通し直してみようと思った。
Commented by desire_san at 2011-09-25 17:47
こんにちは。

私も、東京国立博物館の「空海と密教美術」を見てきましたので、興味深く記事を読ませていただきました。

ご感想、私も共感いたします。

「空海と密教美術」に展示されていた仏像は京都の東寺から来たものですが、私は東寺の仏像が好きで何度も足を運んでいます。展示されていた仏像について、この仏像に対する感想、思いも含めて書いてみました。ぜひ読んでみてください。

どんなことでも結構ですから、ブログにコメントなどをいただけると感謝致します。
by nene_rui-morana | 2011-09-19 14:12 | 旧展覧会・美術展(日本編) | Comments(1)

趣味の史跡巡り、美術展鑑賞などで得た感激・思い出を形にして残すために、本ブログを立ち上げました。心に残る過去の旅行記や美術展見学記なども、逐次アップしていきたいと思います。

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