2011年 07月 03日
ボストン美術館浮世絵名品展 錦絵の黄金時代 ③ + α
フィナーレを飾る作品群も、大変見応えがあった。このコーナーの作者の著名度は北斎や歌麿ほどではないが、いい作品がたくさんある。近年足を運んだ別の浮世絵展で注目した絵師の作品もあり、個人的には興味をそそられるコーナーだった。
一押しは【中洲の四季庵の酒宴】、隅田川の展覧会で知り興味を覚えた中洲・四季庵の華やかな宴会の様子を見事に描いている。背景の深川の大名屋敷や蔵・永代橋の描写も印象深い。作者・窪俊満の展示は本日はこの一作のみだが、非常に心に残った。今後の自分にとって注目株となることは間違いない。
旗本出身の鳥文斎栄之は隅田川の船遊びをテーマに多くの作品を描いたが、本日もスケールの大きいパノラマ作品から楽しそうな様子が伝わってきた。【川一丸船遊び】のタイトルにもなっている≪川一≫は当時の代表的屋形船とのこと、今日ではさしずめ≪はとバス≫あたりに相当するのだろうか。
北尾重政も以前から注目していた絵師、【祝儀の品】【十能之内】のモチーフは私好みで心に残った。
清長の【彩色美津朝】では西村屋与八の店先の《商い初め》の文字に注目した。
本日は我が歌川国貞の作品は展示されていなかったが、彼の師匠である初代・歌川豊国の作品が見られて、とても嬉しかった。【六玉川 調布の玉川】【見立鏡山】は華やかな衣装がとても美しく、愛してやまない国貞作品のルーツを目の当たりにする思いがした。
周知のようにボストン美術館の日本美術コレクションが国外最大級、浮世絵は特に充実している。今回、日本でもなかなか見られない貴重な作品に触れる機会が得られて、喜びもひとしおだった。良好な保存が伝える鮮やかな色彩に、摺られた時代を肌で感じる思いがした。自国以上のコレクションが他国にあるということは少々恥ずかしい気もするが、外国で日本の文化が高く評価され今日に伝えられているのは大変嬉しいことでもあり、そのような文化を育んできた母国を誇りに思う。
いつの日か必ずボストン美術館を訪問する、この夢を日々の生活の励みとしていきたい。
本日はあわせて、当館の所蔵作品展≪岡本秋暉とその師友≫が開催されていた。岡本秋暉は江戸時代後期に活躍した画家で、渡辺崋山や椿椿山と交流があった。本日は彼らの他に、崋山の師・谷文晁や、文晁系の鈴木鵞湖の作品が展示されていて、鑑賞時間は短かったが江戸南蘋派の世界を堪能した。秋暉が描く華やかな孔雀や花々に、明治の帝室技芸員と相通じるものを感じた。その名のとおり喜寿の書画家が寄せ書きした【喜寿寄書】は特に寄せ書きが印象的だった。
今後、これらの絵師の作品と再会する日も、楽しみにしている。
売店では、現在の刷り士によるお馴染みの浮世絵が販売されていた。いつか貯金ができたら、これらの作品の一枚でも部屋に飾ることを、ささやかな目標としたい。
本日は記念の絵葉書等を購入した。
by nene_rui-morana
| 2011-07-03 21:23
| 旧展覧会・美術展(日本編)
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