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役者に首ったけ!芝居絵を楽しむツボ ①

[見学日] 2011年3月27日(日)

[会 場] たばこと塩の博物館

 新聞広告で知った表記展覧会、写真が我が国貞の役者絵とあっては何としても行かねばならない。本当はもう少し早く行くつもりだったが、地震で諸般の予定が狂い、年度末の日曜日に何とか時間を作った。
 入口で入館料を支払ってパンフレットをいただき、ロッカーに荷物を預けてエレベーターで上がり、見学を開始した。
 例によって今回も、最初に一通り廻った後、心に残った作品を中心に解説文も含めてじっくりと見直した。
 *国貞作品には[豊国]署名のものもありましたが、師と区別するため、すべて[国貞]として記します。

 国貞筆【新板江戸名所八景一覧】には私が魅了された中村座も描かれている。北斎の【東都勝景一覧】はその中村座の舞台後方から見た芝居の光景を描くという趣向が面白かった。

 本展覧会では国貞の作品が予想以上にたくさんあり大感激、彼の師匠である初代・歌川豊国や他の歌川派の役者絵にも興味深く見入った。国貞は師匠の画風を継承しつつも、より綿密かつ丁寧に描きこんでいると感じた。
【嘉永五年春狂言見立】はこの年(1852年)の役者の年俸が併記されている。いわゆる[千両役者]は、澤村長十郎・市川海老蔵・市川団十郎らだった。
 【当戯場三階餅番之図】は本日特に心に残った作品、興行が成功した時にふるまう[餅番]を描いたもので、後方の船には下駄や傘など歌舞伎の舞台でよく用いられる小道具を組み合わせて作られている趣向が面白い。餅の仕出しをした浅草の和菓子屋[万年大和]もさり気なく書き加えてるところなど、いかにも国貞らしく心憎い。人物の個性や、祝いビラその他細かいアイテムの描き方も、絶品である。
 【有卦入冨寄 火性の祝ひ】【七ふ字有卦入船】も小道具から衣装まで綿密に描きこまれた、国貞らしい作品だった。
 【桜清水清玄】【菅原伝授手習鑑】も、華やかな色彩、役者の個性と、国貞の真髄が満喫できる嬉しい作品だった。
 【天保九年市村座顔見世見立】は顔見世番付の絵部分だけを模したもの、多くの役者が多彩に描かれている。
 歌川国麿と共作の【新板わり出しすご六】は今見ても楽しい作品だが、重要な後援者だったであろう魚河岸のファンを思って男の着物に[魚かし]と書かれている点などにも注目させられる。
 国貞の多彩な作品群を見ていると、彼は今日のマルチ芸術家の先駆的存在であったと感じられる。今日流に言えば、豪華な一点ものから、ポスター、挿絵、チラシ、パンフレット、さらには着せ替え人形や景品まで、間違いなくアートスタジオの総括プロデューサーである。

 歌舞伎を描いた浮世絵には最近とみに関心が高まっており、今回は大好きな国貞作品を含めてこのジャンルの逸品が多数見られて嬉しかった。
 【此狂言ハ来春相わかり申候】(豊国筆)はそのタイトルの通り配役未定で、寺島の尾上梅幸、木場の市川三升、踊りの師匠おせんとして岩井半四郎が描かれている。
 【楽屋三階之図】(歌川芳幾筆)は多くの役者を多彩に描いたまさしく私にとっては理想の作品、他にも複数の楽屋絵があり大感激した。
by nene_rui-morana | 2011-04-27 20:53 | 旧展覧会・美術展(日本編) | Comments(0)

趣味の史跡巡り、美術展鑑賞などで得た感激・思い出を形にして残すために、本ブログを立ち上げました。心に残る過去の旅行記や美術展見学記なども、逐次アップしていきたいと思います。

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