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伊藤若冲-アナザーワールド-(前期)①

[見学日] 2010年6月4日(金)

[会 場] 千葉市美術館


 今や(決して語弊ではなく)伊藤若冲の作品は、自分にとってはなくてはならないものとなっている。
 昨年某博物館で遠方で開催された本展覧会のポスターを見た時、ちょっと出向くのは無理な場所だったので、残念でならなかった。それだけに、3月に京都の承天閣美術館で首都圏の博物館で開催されることを知った時の感激はひとしおだった。
 展示替えがあるので前後期見たいと思い、まずは前期中の開館延長されている金曜日に足を運んだ。
 自分にとって当館を訪れるのは、2001年の[浮世絵 美の極致]以来2度目、その後リニューアルされたので当時の記憶はあまりないが雰囲気がずいぶん変わったような気がした。エレベーターで8階まで上がり、ロッカーに荷物を預けてチケットを購入し、見学を開始した。
 会場入り口で出迎えてくれたのは、【寿老人・孔雀・菊図】、シンプルだが心残る作品で、特に後ろ向きの寿老人と背負った荷物が印象的だった。
 展示リストをチェックし、前期のみ展示の作品は特に念入りに見ていった。 


《第一章 若冲前史》
 最初のコーナーはそのタイトルのとおり、若冲に影響を与えたと思われる先人の作品が展示されていた。ほとんどが未知の画家だが、禅画や花鳥画など過去の展覧会で見た記憶のある画風の作品も多かった。描かれているのも、山水画、達磨、十八羅漢など、御馴染みの面々?だった。
 【墨花争奇】(大岡春ト筆)は、描かれた鳥が抱一作品のように愛らしい。同じ作者の【欄間図式】と、大岡春ト作【画巧潜覧】は、【北斎漫画】を思わせる画風で、どこか懐かしさを覚えた。
 【花鳥図屏風】(佚山筆)は、まさに若冲作品を見ているようだった。
 【蛇玉図】(葛蛇玉筆)の賛は木版、今回初めて見た。自身を売り込む名刺代わりだったのではと解説にあった。
 このコーナーには、鶴亭という画家の作品が何点も展示されていた。墨画が中心で一部に淡い色彩がほどこされていた。【四君子・松・蘇鉄図屏風】は黒が強烈なオーラを放っていた。【松竹梅図】【墨菊図】も印象的で、俄然気にかかる画家の一人となった。


《第二章 初期作-模索の時代》
 いよいよ若冲作品の登場、興奮で胸が高まる。若冲といえば【動植綵絵】のような極彩色の豪華絢爛な作品が連想されるが、今回は水墨画などモノクロ基調の作品が多く、若冲の未知の側面に触れた。
 【花鳥蔬菜図押絵貼屏風】【花鳥図押絵図屏風】は濃い墨の表現が印象的、【鶏図押絵図屏風】の雄鶏はまるで衣装を着ているようだった。
 【樹下雄鶏図】の鶏には極彩色作品とは違った魅力がある。
 【粽図】は、絵と共に草書の賛が印象的だった。
 若冲の真骨頂は、山水画や動物画、花鳥画にあると自分は思っているが、【売茶翁像】は人物表現は繊細かつ写実的、肖像画家としても卓越した才能を持っていたことがうかがえた。このテーマや【寒山拾得図】は、今回複数点が展示されていた。

 今回の展示で知った若冲のモノクロ作品の魅力、本当に心底魅せられた。今思い出しても興奮で胸が高まる。若冲の墨絵は、今後の自分の中に強固な地位を築くだろう。
 一方で、「墨絵や彩色画、どちらか一つを選べ」との究極の選択を迫られたら、苦しみつつもやはり彩色画を撰ぶ。それだけに、【雪梅雄鶏図】が目に入った時は本当に感動した。鶏頭の赤、羽の茶、足の金が印象的、あの足の表現には感嘆させられる。【月夜白梅図】は金を円く押したオシベの表現が個性的だった。

 展示室のラストで、【石灯籠図屏風】と感動の対面、初めてこの作品を見た時、点描画というユニークな図法とそれによる完璧な表現に言葉が出なかった。今回は石灯篭のみならず、脇の木や柵などにもじっくりと見入った。
 
by nene_rui-morana | 2010-06-18 21:31 | 旧展覧会・美術展(日本編) | Comments(0)

趣味の史跡巡り、美術展鑑賞などで得た感激・思い出を形にして残すために、本ブログを立ち上げました。心に残る過去の旅行記や美術展見学記なども、逐次アップしていきたいと思います。

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