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原三溪と美術-蒐集家三溪の旧蔵品

[副 題] 横浜開港150周年記念特別展

[見学日] 2009年11月23日(月)

[会 場] 三溪記念館

 内苑を見学した後、特別展を見るために記念館に入る。本日の来園の大きな目的は本特別展の鑑賞、サイトで得た情報では自分が好きな芸術家の作品が複数出展されていて、期待で胸が高鳴る。

 *本稿はジャンル別に記載された展示リストを元に執筆したため、会場での展示と順番が異なります。


● 中国・中世絵画
 中国では元の時代、日本では鎌倉から室町時代にかけてのコレクション。
 蔡山筆【羅漢図】は重要文化財、同じく重文の【四季山水図】は雪舟筆といわれ、三溪が亡くなる直前まで傍らに飾っていたという。
 源実朝の【日課観音】や、北条高時の【南山和尚】などの珍品も見られた。
 【白描楊柳観音図稿本】は京都の高山寺に伝わったもので、あの【鳥獣人物戯画】と同じ作者ではないかとも言われている。素描類が好きな私は、このような黒線のみのシンプルな作品にも惹かれる。
 

● 仏教絵画
 今回の展示は平安~鎌倉時代の作品。
 圧巻は何といっても国宝【孔雀明王像】、東京国立博物館所蔵で、多分過去に見たことがある。明王は孔雀にまたがり、光背も孔雀の羽根で飾られている。手には蓮の花や玉、そしてやはり孔雀の羽根を持っている。来世の理想を具現化したような作品だった。
 【地獄草紙】も学生時代に研究室の日本美術全集で見た記憶がある。地獄の鬼たちにどこかユーモラスな面も感じる。


● 書跡
 豊臣秀吉筆【聖護院宛消息】が本日見られた意義は、極めて大きい。


● 工芸品・茶碗
 陶器類は、李朝や桃山時代の茶碗を展示。
 重文の【木製多宝塔】は小ぶりながら天井板や扉に四天王像等が描かれており、細かい仕事の見事な完成に息をのんだ。


● 近世絵画
 自分にとっては最も魅力的なジャンル、近世を代表する巨匠の作品が目白押しで大感激した。
 狩野永徳筆【松に叭叭鳥図 柳に白鷺図屏風】は本特別展で特に心に残る作品だった。松と柳、叭叭鳥図の黒と白い鷺、静止する水面と躍動する波、水辺の草まで描き分けられていて、両屏風のコントラストから強烈なインパクトを受けた。羽づくろいをする鳥の姿に心が和んだ。
 円山応挙筆【中寿老左右鴛鴦鴨】はタイトルのとおりの作品で、最近の美術展で好きになったテーマが凝縮されていた。
 渡辺崋山といえば【鷹見泉石像】があまりにも有名だが、本日の【十友双雀図】には、雀と共に琳派を思わせる華やかなタッチで牡丹や芍薬など十種の花が描かれていて、多才ぶりがうかがえた。時代を見る眼がありすぎたために悲劇的な生涯をおくることになったが、間違いなく歴史にも芸術にもその名を残した。
 俵屋宗達筆【鴨】の眼は、【風神雷神図屏風】を思わせるものがある。
 そして本日の訪問を決心させられた逸品、酒井抱一筆【秋草鶉図】、四季花鳥は抱一の魅力が最大限に発揮されるテーマ、今回も予想にたがわず繊細で格調高い作風にしばし見入った。
月が青いのは銀が退色したのかもしれないが、これはこれで味わいがある。現在は重要美術品だが、将来は重要文化財・国宝に指定されても遜色ない近世の至宝といえるだろう。
 他に、宮本武蔵や三溪自身の作品も展示されていた。


● 近代絵画
 三溪が支援した橋本雅邦と前田青邨の作品を展示。


 展示室には他に、原三溪の年譜や原商店に関する展示もあり、こちらも近代横浜の歴史を見ていく上では非常に重要な内容で、興味深く見た。明治日本の基幹産業である生糸の貿易で巨大な富を得た三溪は、その資産を三溪園の整備および一般への開放、新鋭芸術家の後援、美術品の蒐集等に惜しみなく費やして、近代日本の文化に多大に貢献した。また、関東大震災で多大な被害を受けた横浜の町の復興にも尽力した。開港150年目を迎えた今、原三溪も益田孝や岩崎弥太郎らと同じように注目されてしかるべきだと感じる。
 なお、画像と音声で紹介するコーナーもあったが、こちらは後日に回すことにした。


 本日の展示もとても素晴らしく、心に残る作品が何点もあった。今回の特別展の一部作品は前期もしくは後期のみの展示だが、自分としては後期の方に好みの作品が多かったので本日の来館は正解だった。見終えた時、これだけの美術品を蒐集し後世に残してくれたことに関して、三溪翁に心より感謝した。
 今回の展示作品は40点余りで、現在も三溪園が所蔵しているのは半分にも満たなかったが、かつてのコレクションは数千点に及び、海外からも高く評価されていたという。現在は全国の博物館に散らばっているコレクションがお里帰りしたところを見られたことに、自分自身は大きな喜びを感じた。後日また同じ機会に恵まれることを切望してやまない。

 帰りがけにミュージアムショップで記念にハンカチを購入した。
 本日は園内の紅葉は見ごろまでもう少しというところだったが、記念館内の呈茶処から眺める紅葉は素晴らしく、鳥とのハーモニーも絶妙だった。残念ながら塀があって外部からは写真撮影できなかった。
by nene_rui-morana | 2009-11-30 14:56 | 旧展覧会・美術展(日本編) | Comments(0)

趣味の史跡巡り、美術展鑑賞などで得た感激・思い出を形にして残すために、本ブログを立ち上げました。心に残る過去の旅行記や美術展見学記なども、逐次アップしていきたいと思います。

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