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夢と追憶の江戸-高橋誠一郎浮世絵コレクション名品展-

夢と追憶の江戸-高橋誠一郎浮世絵コレクション名品展-_f0148563_1753384.jpg[副 題] 慶應義塾創立150年記念

[見学日] 2009年11月3日(火)

[会 場] 三井記念美術館

 夏に当美術館を訪れた時、次回特別展である本展覧会の情報を得る。浮世絵は好きなのでぜひ見に来ようと思い、帰りがけに前売り券を購入した。
 11月3日文化の日、少し遅い朝食とった後、会場に向かった。ロッカーに大きな荷物を預けて、見学を開始する。


《展示室1》
 最初から、師宣、清長、北斎などの作品に対面できて、大感激、【双六のけんか】は美人画の春信が描いた子供がモデルの作品だった。広重の【近江八景之内 唐崎夜雨】は雨と唐崎神社の松が情趣深く描かれていて、隣の【東海道五拾三次之内 庄野 白雨】と比べつつ見入った。


《展示室2》
 写楽の【市川蝦蔵の竹村定之進】を展示。


《展示室3》は【高橋誠一郎関係資料】を展示、隣に【如庵】が復元されていた。高橋氏は保存協議会の委員長をされていたとのこと、昔犬山を旅行した時に見ており、懐かしく感じた。今回興味をそそられたのは、壁に貼られた寛政年間の暦、江戸時代の暦を見るのは初めてなので強烈なインパクトを受けた。今後この分野の展覧会が開催されるなら、ぜひ足を運びたい。


《展示室4》
 この部屋にも御馴染みの絵師の作品が多数展示されていて大感激、最も見応えのあるコーナーだった。
 春信筆【春駒】は子供と母親が大名行列ごっこをしている様子を描いたもの、歌川豊春筆【浮絵十二段管弦の図】は透視図法を用いて屋敷の巨大さ・庭園の美しさを表現した私好みの作品、最近は大勢の人物を多彩に描き分けている作品に惹かれている。勝川春章の作品は画風と共に壷型の落款も印象的だった。
 勝川春好筆【四世岩井半四郎の為朝妻龍女と二世市川門之助の北条三郎宗時と三世坂田半五郎の川名屋太四郎】は三人の人物がバランス良く配置され、鮮やかな衣装も見事、おそらくモデルを立たせてデッサンをとったのではないかと思った。勝川春英筆【金時の辻宝引】は河鍋暁斎の画風を思わせた。
 歌麿筆【朝顔の門難波屋おきた打沈む図】は本特別展で最も心に残った逸品、モデルの[難波屋おきた]は歌麿作品により江戸時代の代表的美人として不滅の存在となっているが、この作品ではおきたの名前が判じ絵で、年齢(ぢゅうはち=18歳)が文章の判じもので、コマ絵にかかれている。実は私が浮世絵にひとかたならぬ関心を抱くようになったのは、10数年前に松本を旅行した際に現地の美術館で歌麿作品を通じて判じ絵を知ったからなので、この作品から得た感銘も極めて大きかった。文章の判じものの現物は今回が初見だと思う。多くの展覧会に足を運び歌麿作品はあらかた見たと思っていたが、まだまだ未知の作品があると分かり、あらためてその多彩な画風、偉大な業績に感嘆した。
 

《展示室5》
 このコーナーで最も心に残った作品は【難波屋店先】、作者は最近別の浮世絵展でその名を知った栄松斉長喜である。描かれている場所とモデルについては改めて説明の必要もないが、本作品には複数の人物が描かれている。おそらく紫の着物が難波屋の制服?でそれを着ている3人が店員?、他は客だろう。人々の表情や衣装、そばに描かれた犬、「奉納 浅草観世音」「願主 蔦屋重三郎」という記載、その他全般、実に素晴らしい私好みの逸品だった。家がもっと広ければ、複製画でも飾りたい。
 歌川豊広筆【梅咲く園】は凧揚げを描いた三枚続の作品、国芳の【名所六枚屏風】はそれぞれが役者の似顔絵にもなっている。


《展示室6》
 北斎作品数点を展示、おそらくすべて過去の展覧会で見ていると思う。【諸国名橋奇覧 東海道岡崎矢はきのはし】は、開いて干された傘に版元がかかれている。


《展示室7》
 展示室前半には【東海道五拾三次】その他の広重のを展示、何点かは見覚えがある。【関 本陣早立】は、提灯や幕の紋、壁の張り紙の文字などが印象的だった。自身が現地を旅した時のことも思い出された。【名所江戸百景 王子装束ゑの木大晦日の狐火】は唯一言い伝えをモチーフにした作品とのこと。
 少し時代が下がった月岡芳年の作品には「画工 月岡米次郎 浅草須賀町二番地」という作者の住所氏名!の他、届出日や版元の住所氏名まで書かれていて、明治という新時代が感じられる。
 小林清親の作品はあの独特の光線画、光への意識と共に、生地本所やそこに程近い浅草など下町に対する思い入れも感じられた。


 本日もひと通り廻った後、心に残った作品を中心に何度も見直した。さほど広くない会場は、このような時にありがたい。
 最近は海外の浮世絵コレクションが頻繁にお里帰りしていて、刷り色も鮮やかな保存の良い作品に多数接していたので、正直日本国内のコレクションから感銘を受けられるのか疑問も感じていた。しかしその予想は見事に裏切られ、素晴らしい作品に多数出会えて感激した。
 本特別展は三期に分かれ、自分は後期のみ鑑賞したのだが、会場内で図録を見ると前期・中期も素晴らしい作品が多数出品されていて、少々残念に思った。心に残った作品はチェックしてきたので、後日見られることに希望を託したい。

 本日の昼食は、少しリッチに、併設のミュージアムレストランで季節の御膳をいただいた。
by nene_rui-morana | 2009-11-15 19:31 | 旧展覧会・美術展(日本編) | Comments(0)

趣味の史跡巡り、美術展鑑賞などで得た感激・思い出を形にして残すために、本ブログを立ち上げました。心に残る過去の旅行記や美術展見学記なども、逐次アップしていきたいと思います。

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