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知られざるタオの世界 道教の美術-道教の神々と星の信仰-

[見学日] 2009年8月19日(水)   [会 場] 三井記念美術館


 本特別展の情報は新聞記事から知る。道教については仏教ほど知識も接する機会もないが、道教をテーマとした展覧会はあまり事例がないので、興味を持った。
 地元で開催されることだし、せっかくだから行ってみようかと思ったが、体調が思わしくなくてなかなか実現できず、小康を得た 8月19日の午後に何とか調整をつけた。当日は他にも1件展覧会に廻る予定を入れたので、午前中の仕事を終えると急いで昼食をとり、現地へと向かった。

知られざるタオの世界 道教の美術-道教の神々と星の信仰-_f0148563_12173539.jpg 午後1時に地下鉄・三越前駅に到着、最寄出口から地上に出て、会場のある三井本館ビルへと入る。ここに来るのは今回で2度目、直通エレベーターで7階へ上がり、ロッカーに大きな荷物を預け、受付でチケットを購入して見学を開始した。

 * 本稿のカテゴリーは、展示作品に中国伝来のものも多いので、「外国」にしました。


[展示室1]
 最初の展示室には、主に前漢~明時代の美術工芸品が展示されていた。
 【神人車馬図画像鏡】は道教の主要神である西王母と東王公が描かれている。普段は何気なく見過ごしている鏡の模様も本日はじっくり見た。細線の文字までは自分の視力では判読できなかった。【八卦七星文八花鏡】はコースターのような小型の鏡で、名前のとおり「道教」を彷彿とさせる。【正統道蔵】は世界に4セットしか残らない貴重品だという。【黄庭経 王羲之 宋拓 「秘閣続帖巻5」1帖】はさすがに刻印が多数押されていた。隣にも別の拓本が展示されていた。
道教像には仏像との共通点が感じられる。
 

[展示室2]
展示室1に続く小さな一室にガラスケースに入って展示されているのは【道教三尊像(老君)】、本特別展で最も心に残る逸品だった。主尊は老君(老子)で、仏教寺院でよく見かける三尊像を思わせる。基壇の銘文や供養者の姿の浮彫、狛犬に似た怪獣も心に残った。神教や仏教と同様に道教式の供養も行われていたのだなと思った。


[展示室3]
 このコーナーには、台湾の道教神等の大型写真が展示されていた。国内外の旅先で出会った像や建物が懐かしく思い出される。


[展示室4]
 展示室4には最も多くの作品が展示され、見応えのあるコーナーだった。
 【老子出関図】はかの岩佐又兵衛の筆、展覧会で知っている人物の名前を見かけると親近感を覚える。
 【焔口餓鬼図】は明代の作品で、血管の描き方などに当時の解剖学の影響が表れていると思った。【十王図】は地獄の釜なども描かれているが、どこかユーモラスな印象を受けた。
 【三教源流捜神大全】【捜神記大全】は神々の百科事典というべき史料、【中華歴代帝王図】は神々のポートレート集のような史料で伏羲なども描かれていた。
 【唐蘭館絵巻】は長崎歴史博物館からの出品で、マカオ等で見かけた天后堂が描かれていた。 【呪符木簡】はレプリカだが自分には興味深いジャンルの史料、【閻魔天曼荼羅図】(重文)は牛に乗った閻魔その他の神仏が勢ぞろいした作品だった。赤山明神は京都の赤山禅院と関係があるのかもしれない。
 老子、荘子、安部清明、鐘馗、関帝、その他御馴染みの顔ぶれ(?)が揃っている。浦島太郎の物語にも、長生譚や神仙思想が反映されているという。


[展示室5]
このコーナーで最も印象に残ったのは【伊達政宗泰山府君祭都状】、紙本朱書で政宗の署名は黒字で書かれている。政宗書状であると同時に、この類の古文書を見るのは初めてなので、強いインパクトを受けた。
 【天文成象】は渋川春海が実測し木版出版したもの、【五星廿八宿神形図巻】は谷文兆筆で篆書の詞書も印象的だった。やはり歴史の教科書にのっている人物ゆかりの品々にはそれなりに感じるものがある。
 【校正北斗本命誕生経序】は、擬人化した北斗九星星像と符が描かれる。自分好みの史料で、このようなものを見ると道教についてより詳しく調べてみたくなる。


[展示室6]
 展示室6には、キトラ古墳の四神図と天文図の写真が展示されていた。これらにも道教の影響が強く反映されている。


[展示室7]
 本特別展の集大成に相応しく、これぞ道教といえるような展示が室内を埋めつくしている。
 天文図、天之図、天帝図、九曜星図、北斗真形図、等等、名前を見ただけでも道教が連想される作品が続いている。【星曼荼羅図】その他の曼荼羅は、神像と同様に仏教との接点が感じられた。
 このコーナーで心に残ったのは【妙見菩薩立像】(重文)、こちらもどこかの寺院で似たような像を見たような気がした。
 それ以外では、京都の大将軍八神社所蔵の【大将軍立像】【大将軍坐像】、こちらの神社は今回初めて知ったが、次回京都を訪れた際にはぜひ立ち寄りたいと思う。
 展示の最後尾には、日本でも御馴染みの、寿老人・織女と牽牛・五節句などが描かれた作品が展示されていた。


 途中に休憩を兼ねて本展覧会の図録を見たが、何度か展示替えがあり、前期には国宝・重文も何点か出展されていた。
 道教の特別展を見るのは今回が初めてなのだが、意外にもそのような印象は受けなかった。それはひとえに、道教の奥義に関しては未知であっても、日常生活には身近に浸透していて頻繁に接することが多いためだろう。
 曼荼羅にしても道教三尊像にしても仏教寺院や仏教系展覧会で類似の芸術作品を数多く見てきた。幼少時より愛読してきた【西遊記】に登場する多くの神々の姿も見られた。占いに、天文学に、民間信仰に、道教は深く根付いていることを今回再認識した。今後の旧跡訪問や展覧会などで道教に関連する文物に接する機会があったら、注意して見ていきたいと思う。
 受付で次回特別展の前売り券を購入し、またミュージアムショップで絵葉書やクリップ付マグネットも購入して、館をあとにした。
by nene_rui-morana | 2009-08-30 01:03 | 旧展覧会・美術展(東洋編) | Comments(0)

趣味の史跡巡り、美術展鑑賞などで得た感激・思い出を形にして残すために、本ブログを立ち上げました。心に残る過去の旅行記や美術展見学記なども、逐次アップしていきたいと思います。

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