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「写真家・宮武東洋展-日系米国人強制収容所の記録を中心に-

[見学日] 2009年6月5日(金)

[会 場] 川崎市市民ミュージアム アトリエ2 

 アトリエ1の展示を見た後、このコーナーに入る。本日当館を訪れた目的のひとつに、この展示を見ることがあった。
 GWに訪れた東京都写真美術館および東京大学総合研究博物館内のポスターにより本展示を知り、ぜひ見ておこうと決心した。

 あらためて説明の必要もなく、本展示は宮武東洋がカリフォルニア州のマンザナ収容所の様子を撮影したものである。場所はシエラネバダ山脈の麓、戦時下という極限状態で冬場には厳寒に襲われる地での生活がいかに過酷なものであったか、想像に難くない。
 写真のほとんどは先日見た映画【宮武東洋が覗いた時代】に紹介されているが、あらためて解説文を読みながらじっくり鑑賞すると、やはり胸を打つものがある。

 厳しい環境下でも、収容された人々は困難と戦い、収容所という空間に独自のコミュニティを形成していった様子が、写真から生き生きと伝わってきた。そこに生きる人々は、バラック周辺に花壇を造り、農作業を行って収穫し、商店・工場・図書館・学校などのインフラを整備し、様々な経済活動・生産活動を行って住民自治を確立した。様々な年中行事、スポーツ大会、貯水池で遊ぶ子供たち、中にはハイスクールの卒業式や看護士の戴帽式の写真もあった。収容所で新たな生命も誕生した。快活に笑う人々の表情に、厳しい環境下でも肌の色を超えた心の交流が存在したことに、深く感動した。

 一方で、若者が入隊に際し家族に別れを告げる写真などは、厳粛な気持ちにさせられる。両親が洋服を着ているせいか、同時代の日本の写真と比べるとさほど古くは感じられない。かつても今日と同じ形の家族が存在し、戦争によって運命を翻弄された現実がひしひしと伝わってきた。収容所内には日本から移住した一世と、若い二世との間に、国策に対して世代間の激しい葛藤があったことも映画と展示で述べられていた。

 今年、写真家・宮武東洋の名を知ったことは、自分にとっては大変意味のあることだった。映画も写真も心に残った。「東洋の説得力に満ちた写真は、珠玉のヒューマン・ドキュメンタリーである」という展示解説は言いえて妙、近い将来彼の功績はより高い評価を受けることだろう。
 当館は東洋の作品を数多く所蔵しているそうなので、再び訪れて鑑賞する日がくるだろう。その日までに、日系人収容所について、よく勉強しておこうと思う。
by nene_rui-morana | 2009-06-15 21:08 | 旧展覧会・美術展(日本編) | Comments(0)

趣味の史跡巡り、美術展鑑賞などで得た感激・思い出を形にして残すために、本ブログを立ち上げました。心に残る過去の旅行記や美術展見学記なども、逐次アップしていきたいと思います。

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