![]() by nene_rui-morana カテゴリ
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今年の1月、NHKでBBC製作の「奇跡の映像-よみがえる100年前の世界-」が放映された。長丁場の企画だったので当然ながら録画をしたのだが、持ち前のおっちょこちょいが災いして最後の2話を逃してしまう。以後ひたすら再放送を祈っていたが、天に通じたらしく7月に実現した。前回見逃した2話をようやく見られたこの機会に、感想を記しておきたいと思う。
フランスの富豪アルベール・カーンは、今世紀初頭、その時の世界の様子をありのままに伝える壮大なプロジェクト「地球映像資料館」を思いつき、1908年より世界各国にカメラマンを派遣して延べ50カ国にも及ぶ国々を写真や映像に記録させた。100時間に及ぶ映像と7万枚を超える写真は、当時の日常生活や儀式・歴史上の出来事を今日に伝える大変貴重な歴史的史料となっている。 古写真やフィルムなど、近代に登場した史料にたまらない魅力を覚える自分にとって、カーンのコレクションは文字通り至宝であり、今回の番組でそれを見られた喜びは計り知れない。オートクロームという技術によるカラー写真からは、鮮やかな色彩が100年前の人々の息遣いや肌のぬくもりさえ伝わってくるような気がして、決して誇張ではなく感動と興奮で胸が一杯になった。民族衣装を着た人物など、事前に知らされなければ誰も100年前の実録とは分からないだろう。現代の、どこかの町でのお祭りの風景と思うかもしれない。レトロな町並みと行き交うクラシックカー、映画や絵画の中で見た100年前の世界がそこに展開されている。 全9話の感想すべてをここに記すのは不可能であり、コレクションのすばらしさを自分の拙い文章で表すこともできない。百聞は一見にしかずで、実際に御覧になれば真価が充分に伝わってくる。 特に心に残った内容をあげれば、カーンが欧米だけでなくアジアにも目を向け、時にはカメラマンと共に自身も現地に赴いていたことがある。これはもちろん、実業家として必要性があったことにもよるが、コレクションが伝える100年前のアジア世界は、アジア人である自分に特に強烈な印象を与える。纏足の女性が歩く姿、新中国成立時に取り壊される以前の北京の城門、イギリス統治下のインドのマハラジャ、100年前のベトナムやカンボジア、モンゴル、トルコ、等等。 カーンは日本の政財界の名士とも交流があり、自身が日本を訪れたこともある。当時の駐仏大使の孫の姿を映像に残したりもしている。特に感動したのは、大隈重信の映像で、条約問題で爆弾を投げつけられ足を負傷した事実が明確に見てとれた。それ以外でも、路面電車が走る東京の風景や無邪気に笑う子供の姿など、祖父母が生まれた時代の日本の様子が明確に伝えられている。 カーンの趣旨は、国際理解のためには世界中の日常生活をあるがままに伝える必要があるというものであり、当時の西洋人には野蛮とみなされていた東洋の宗教的儀式なども独自の文化として尊重し記録している。この姿勢が人類の歴史上に果たした役割と意義は極めて大きい。カーンコレクションは、その後の第一次世界大戦で激変する以前の世界の顔を忠実に伝えている。カーンの記録により、かつてアラブ人とユダヤ人が同じ土地で平和に共生していた時代が存在したことが分かるし、アメリカへ向かう大型客船の三等船室では新天地を求めて乗り込んだ多くの移民の姿を伝えている。また、その積み重ねが、当時の歴史的事件のいくつかを記録に残すことにもつながった。 一方でカーンのカメラマンは、西部戦線にまで出向いて記録を残しているが、カーンの記録だけが伝える第一次大戦の実像もあるそうで、まさに20世紀初頭の歴史を伝える極めて貴重な資料といえるだろう。 カーンの業績は、100年後の21世紀を生きる我々に、多くの課題を投げかける。巷間では、今日の体制では後世の子孫が今の時代を研究しようとする時に必要不可欠な史料を残せないのではないかという危機感がささやかれている。我々はもう一度、カーンの業績を見直して、後世の人類と世界の平和のために何をしなければならないのか、考えなければならないと痛感した。 繰り返しになってしまうが、カーンがこれらの映像・写真を残したことは、世界の歴史にとっては非常に重要なことであり、その意義は計り知れない。世界屈指の大富豪の中に彼のような価値観を持つ人物がいたのは人類にとって非常に幸運なことであり、一個人としてもひたすら感謝している。最後の将軍・徳川慶喜も多くの写真を残したが、彼より一世代若いカーンは国際化の中、より向上した当時最先端の技術で全世界を記録した。 カーンはその後の世界恐慌で財産のほとんどを失い、亡くなった時はほとんど無一文だったという。ユダヤ人であったカーンがホロコーストが激化する以前に他界していたこと、バリを占領したナチスが彼のコレクションの真価を理解しえなかったことは、幸いだったと感じる。 今回、9話すべてを録画したが、ソフトが市販されれば購入したいと思う。加えて、カーン・コレクション全部を見たいので、すべてがDVD化され全世界に向けて販売される日が来ることを熱望してやまない。間違いなく、日本の図書館や研究機関にも置く価値のある資料である。 私はまだパリを訪れたことはないが、将来行く機会があれば、ぜひカーン博物館まで足を伸ばしたいと思う。 こんにちは、初めまして、横浜市にありますあーすぷらざと申します。
この度、アルベール・カーンの写真展を開催する運びとなりました。 写真展以外にも、講演・映画上映等の関連イベントもご用意しております。 お近くにいらっしゃる機会がございましたらお立ち寄りいただければ幸いです。 関連HP:http://www.k-i-a.or.jp/plaza/project_exhibits/exhibits_kahn.html どうぞよろしくお願いいたします。
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