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浮世絵展 歌川派と歌舞伎


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   [副 題] 勇壮なる役者絵の世界   [見学日] 平成27年3月14日(土)

   [会 場] 足立区立郷土文化資料館




 表記展覧会の情報は地元の公立施設内のポスターで知った。用いられていた作品は我が歌川国貞の役者絵、行かずにすむわけはない。

 年度末の多忙な時期だったが、フロアーレクチャーのある日に時間を作った。

 昼過ぎに亀有駅近くの回転寿司で昼食をとった。安くてとても美味しかった。

 その後、マクドマルドでコーヒーを飲み、バスで会場に向かった。

 足立区立郷土文化資料館は、車が運転できない自分にはアクセスが少々不便なのでなかなか足が向かないが、過去に2、3度訪れたことがある。



序章 役者絵の誕生-鳥居派と勝川派-

 鳥居派、勝川派、共に近年興味が深まっている。

 役者だけでなく奏者も描かれている【出語り図 五代目市川団十郎の傀儡師でく六兵衛・三代目市川八百蔵の下河辺行平の娘白菊にて葱売り所作・三代目沢村宗教十郎の十郎】(鳥居清満作)は、以前他所で見ているかもしれない。

 勝川派の作品は小さめだった。











第1章 初代豊国とその系譜 

 タイトルのとおり、この章には我が歌川国貞の師匠・初代歌川豊国の作品が展示されていた。

 【三代目市川八百蔵のあたけの甚平・初代市川男女蔵のもくずの三平】以降は、どこかで見た役者の風貌を描いた作品が続いた。

 【三代目瀬川路考のくずの葉】に描かれた路考は、実際に舞台で口に筆を加えて和歌を書く「口書き」を行ったという。

 【五代目岩井半四郎】には山東京山の賛が入っている。

 【初代市川白猿 中村座にて口上】の作者、歌川国政は、残された作品は多くないが、写楽をしのぐような迫力のある画風が注目されている。続く歌川国満作【役者七小町 新車】はモデルの優男ぶりが伝わってきて、作者の詳細が分からないのが残念だった。

 両作品とも、国貞とは違った写実的な画風が印象的で、見応えがあった。

 


第2章 国貞と国芳-幕末歌舞伎と絵師の趣向-

 いよいよ自分にとって待望のコーナー、興奮に胸を震わせつつ鑑賞していった。

国貞作【初代坂東しうかの近江の小ふじ・二代目尾上菊治郎の八幡屋お三・十二代目市村左衛門の曽我十郎祐成】は、居住地に程近い亀戸天神の太鼓橋にヒントを得て描かれたように思った。

 【隅田川乃蛍狩】は、似た作品を以前に見た記憶がある。

 【時代世話当姿見 四代目市川小団次の有王丸・初代河原崎権十郎の亀王丸】は、役者が乗る畚(もっこ、巨大な籠のようなもの)の表現に注目した。現代のワイヤーアクションのような演出が当時の歌舞伎にもあったらしい。

 【東海道五十三次之内】シリーズは特に好きな国貞作品、本企画展のポスター等に使われていた【赤坂 六代目松本幸四郎の沢井又五郎】はやはり出色の出来、多くの浮世絵に描かれた人気役者の個性を見事に表している。

 歌川国芳作品も大変見応えがあった。

 巨大なお岩さんの顔が強いインパクトを与える【竹沢藤次 独楽の化物】は、必死で画中のコマを探した。

 【源氏雲浮世画合 八代目市川団十郎の不破伴左衛門】は、国貞晩年の【江戸廼花 名勝會】を思わせる。

 【見立て十二支の内丑 四代目中村歌右衛門の粂の平内左衛門・五代目沢村宗十郎の松若丸】も、先述のお気に入り国貞作品【東海道五十三次之内】シリーズと似ており、比較しつつ見入った。



第3章 役者絵百態-広告から戯画、玩具絵まで-

国貞作【星の霜当世風俗(蚊やき)】は以前見たことがある。

 【四代目尾上のこし元おかる・初代中村福助の早野勘平】は、描かれた役者も色彩も美しい。

 【東都名所 猿若町芝居】は、数少ない歌川広重の役者絵である。

 このコーナーの国芳作品は、文句なしに楽しかった。【辻占しま当る面箱】の役者面の表現は、ユーモラスながらも卓越した画風に感嘆した。



第4章 役者絵の明治-描かれた団菊左時代-

 本章で、時代は文明開化へと移っても国貞の精神は、豊原国周、揚州周延らに受け継がれたことを再確認した。

 今回を含めた複数の展覧会で、特に国周は国貞の画風を最も強く受け継いでいると感じ、注目している。



特別コーナー 没後150年 歌川国貞

 特別コーナーはケースに展示、作品の制作年代は1811(文化8)年から1863(文久3)年の半世紀以上に及び、時代の変遷を感じる

 国貞の【二代目関三十郎の碓井貞光】は、鏡の枠で飾られた大首絵、書き添えられたモデル自身の句や鏡枠を飾る手拭い?のデザインもキマっている。本展覧会のフィナーレを飾るに相応しい名品、ただし以前に太田記念美術館あたりで見ているかもしれない。



≪感想≫

 施設規模は大きくなかったが、自分にとっては大変魅力がある素晴らしい展覧会だった。市区町村レベルの施設で国貞の展覧会が開催されるのは大変嬉しく、今後更に実現して、国貞とその作品が国芳のように再評価されることを心より願っている。

 当然ながら、帰りがけに本展覧会の図録を購入した。


by nene_rui-morana | 2016-06-13 17:30 | 2015年 | Comments(0)

趣味の史跡巡り、美術展鑑賞などで得た感激・思い出を形にして残すために、本ブログを立ち上げました。心に残る過去の旅行記や美術展見学記なども、逐次アップしていきたいと思います。

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